鉄オタ 国境を越える ③所要時間5分の国際列車
国際列車なのに所要時間はわずか5分ー
そんな列車が走っていると聞き、10月半ばシンガポールへと飛んだ。
鉄路でシンガポールからマレーシアへ
シンガポールは1965年にマレーシアから分離独立した、面積が東京23区とほぼ同じという小さな国だ。件の国際列車はこのシンガポールのウッドランズ(Woodlands)から、マレーシアのジョホール・バル(Johor Bahru)との間を走っている。今回、実際に乗ってみた。
MRT(Mass Rapid Transit /地下鉄)のウッドランズ駅から2階建てバスに乗ってウッドランズ・チェックポイントへと向かう。ちなみにこの”911T”系統のバスは10分に1本程度とかなりの本数が出ているようだ。
2階席に座ると、標識ほどの高さから周囲を見渡すことができる。信号機が頭上すれすれを過ぎていく様は新鮮だ。
しばらく進むと、団地のようなものが並んでいる。これはHDB(Housing Development Board)と呼ばれる集合住宅で、シンガポール国民の実に8割以上がこうした集合住宅に住んでいる。選挙区の単位もHDBを基準にして定められているという。
ウッドランズ・チェックポイントへ
ウッドランズ駅からバスに揺られること約15分。チェックポイントへ到着。切符は事前にマレー鉄道のHPで予約していたので、ダウンロードしたEチケットを準備する。価格は5シンガポールドル(マレーシア側だと16リンギット)。事前予約せずとも、1階の事務所で紙の切符を購入することもできる。
(ただ通勤客の多い朝夜や休日は混んでいる可能性もあるので、どうしても鉄道に乗りたいという場合は事前に購入していた方が確実)
階段を上がって改札を目指す。通路を歩いていくと、向かって左側に「WOODLANDS TRAIN CHECKPOINT」との表記がある扉と、右側に「WOODLANDS CHECKPOINT」と記されている。
鉄道で国境を超える人はこの左側の扉の前に並んで改札を待つ。改札が開始されるのは列車出発40分前から。通路の下でディーゼル機関車がエンジンの音を響かせながら停車しているのがわかる。
シンガポール国内でマレーシアに入国
いよいよ改札が始まった。ネット予約の切符は紙に印刷せずとも大丈夫。係員がパスポートを専用のアプリみたいなもので読み取って改札はOK。
次はエスカレーターで下の階へ降りてシンガポールの出国手続きをする。
チャンギ空港は笑顔で出迎えてくれたが、こちらはいかにも審査官という感じであまり愛想がよくない。
まあそんなことはどうでもよくて、シンガポールを出国。日本同様、スタンプを押されないのであまり出国という感じがしない。(事前に登録したメールアドレスに出入国しましたよということが送られてくるのみ)
続いてホーム横の通路を銀色の客車を眺めながらマレーシアの入国審査へ。今度は笑顔で出迎えてくれる。
ただ、マレーシアから先の行程がややこしすぎて説明に手間取る。
今日入国して、えっと帰るのは次の日曜で、あ、その間にタイにも。えっと2日行きます。あ、どこで国境を越えるかって?ランタウパンジャンです。
こんな感じで複雑な行程を拙い英語でなんとか伝える。
それでも頷きながら優しく対応してくれた審査官に感謝しつつ、マレーシアの入国審査を無事通過。
灰色のディーゼル機関車にけん引された銀色の客車が止まっている。シンガポール側のホームは大型バスでも余裕を持って走れるくらいに広い。車内は特急列車のようにリクライニング可能な2+2の4列座席。グループ客が数組と乗客はそれほど多くはない。
淀川のようなジョホール水道
午後5時半、列車が動き出す。マレーシアはジョホール・バルまで約5分の旅の始まりだ。陽は少し傾き出してはいるが、まだ十分に明るい。高さ3m近くもありそうな鉄柵と監視小屋を過ぎると、いよいよジョホール水道を渡る。
マレーシアの高層ビル群が間近に見える。進行方向左手は道路と並走しており、トラックや乗用車が渋滞している横を列車はゆっくりと進んでいく。右手に並走しているのはシンガポールへの配水管だそうだ。橋の中ほどに鉄柵が設けられている箇所があったが、これが両国間の国境線だ。
阪急の淀川鉄橋を渡ったような気分で、国境を越えてマレーシアに着く。シンガポール側ではマレーシアの入国手続きは済ませているので、そのまま改札を抜けてジョホール・バルの町へと繰り出す。けたたましいクラクションに、大量の原付バイク、少し橋を越えただけでシンガポールとは異なる雰囲気を感じる。
短い時間ではあったものの、初めて列車で国境を越えるという体験をすることができた。
マレーシアへ旅行したいという方、シンガポールからの日帰り旅行も可能なので、ぜひ一度乗車してみることをおすすめしたい。
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