編集力が導く幸運

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

この度、幸運にも、編集スパルタ塾10期を無事修了することができた。
期間は、2022年4月〜2023年3月までの一年間。
合計22回のセッション(ほぼ月2回ペース)。
その内、課題提出が求められるセッションが10回ある。

この10回の課題提出と発表、その回のゲストや菅付先生からのフィードバックが、本プログラムの醍醐味(ハイライト)である。

受講のきっかけ

2022年3月のある日の事。小春日和の代官山で、ある若手社会起業家の方とランチを食べていた時のこと。なぜか、話題が、普段があまり関心のない、芸能ニュースから文藝春秋の話になる。

Aさん:「先日、文藝春秋の元編集長の新谷さんに会ったんです」。
私:「へえ、あの有名な方ですね。どうして??」。
Aさん:「私が、この1年編集スパルタ塾というのを受けていて(9期受講)。ゲストでいらっしゃっていて。直接お手紙書いたら、会ってくださったんです」。
私:(ネットで調べながら・・)「へえ、凄いね。なんか怖そうな雰囲気な方だけど・・・」
Aさん:「それが全然違って。お話すると、とても気さくでユーモラスな方で。それに凄くお洒落な方で。履いている靴下、これかっこいいでしょう!って自慢してくるんです」」。
私:「それはイメージと違いますね。直接、この人に手紙を書くAさんも凄いと思うけど」。
Aさん:(瞳を輝かせながら)「他にも、凄いゲストの方々いて、面白かったですよ」
私:(はじめて編集スパルタ塾をネット検索する)「尾形真理子さん(注1)もゲストで来るんだ!彼女のルミネ広告、新宿南口でよく拝見するけど、素晴らしいよね」

その後、会話は別の方向に行った。
けれど、世の中には、不思議な予感のようなものがあるのかもしれない。
その夜、なぜか“ソワソワ”した僕は、編集スパルタ塾の内容を検索した上で、Aさんにチャットする。
「編集スパルタ塾、次の期、受けてみようと思うんだ!」

新谷さんゲストの回

それは、昨年6月24日、3回目のゲストセッションでの事だった。
正直、それまで2回の課題提出は、惨憺たるものだった・・・
過去に培った「自己肯定感」を粉々に打ち砕かれる感じだった。

これまで生きてきたビジネスの世界と、勝手(ルール)が違いすぎる。
企画書のアウトプットイメージが示されない。
何が正解なのか、どこまで書けば良いかわからない。
何が評価基準なのかわからない。
自由(フリー)過ぎる!!

さらにプレッシャーに拍車をかけたのが、選ばれて発表する同じ10期の受講生の方々のレベルの高さだった・・・
「どうして、そんな発想ができるの!?」
「どこから、そんなアイデアが湧いてくるの!?」
「どうして、その切り口が。それって反則(Too Creative)なんじゃない!?」

バキバキに折れた心で臨んだ、3回目の課題提出。
その時、自分を支えたのは、過去の自信でも、プライドでもなく、ただ、リサーチの一環で読んだ、ゲスト新谷氏の自叙伝の面白さだった(注2)

その中で、氏が大学時代、米国サンタフェでオルテガベストを購入した際のエピソードが描かれているのだが、それは、氏が、現在、社会に見せているとは別の側面だった。Aさんに見せた、とても人間的で、無邪気な側面(オーセンティシティ)だった。

それに触発されて企画を書いたら、はじめて、ゲストへの発表者の一人に選ばれた。
その発表の時の「嬉しさ」を、どう表現していいか、わからない。
仕事柄、今でも毎月、何回もプレゼンの機会があり、人生では何度も大きなプレゼンや登壇の機会に恵まれて来たけど、正直、こんなに嬉しく、緊張した事はない。
恐らく支離滅裂だっただろう。
それでも、新谷氏は、真剣に聴いてくださり、そして、恐ろしく的を得たフィードバックをくださった。発表は、完敗だった。でも、嬉しかった。歓喜だった。なぜなら、その時、自分の人生の何かが変わった感覚を持てたから。

私が感じた本プログラム本質的価値

その後、新谷氏が、全員の発表を聴いた上で、最後にメッセージをくださった。
それは、「日本の未来に対する強烈な憂いと危機感」という、過去、芸能界を騒がせた元文藝春秋の編集長という肩書きとはやや異なる、大きな話だった。
その語る内容、行間、眼差しを、生で、身近で、ライブで視て感じたのは、「こんな凄い人(ひと)が、今の日本にもいたのか・・・」という感慨だった。

本物の人が持つ、表面的な印象や「キャラ設定」と「芯」は違う。
その印象を上手にコントロールして、自分の「真の目的」を達成しようとする。
世界や未来のために、自分の強みや武器を活かして、強い倫理感と、勇気を伴う信念を持って、表現(アウトプット)していく。

『自分の生き方の編集ができている』。

その後ゲストで来られた、日本を代表するクリエイターの方々からも、同じ感慨、感覚を、感じた。何回か懇親会で秘話を教えてくださった菅付先生からも感じた。
表面的な肩書きやプロフィールからは見えない、強くしなやかな、「人としての軸や芯」、それに基づく、「様々な経験や出会いを力に変える力」。

そういう方々=“真の編集者”に、出逢えること。
これからも人生で起きる偶然を幸運に変える力=『人生の編集力』を身につけること。

それが、今回、私が感じた、編集スパルタ塾の実際の価値(セレンディピティ)であった。

執筆者:編集スパルタ塾10期生 佐藤将(Sho Sato)

注1)実際に10期では尾形真理子氏のご登壇はなかった(が、それでも、受講の後悔はない)。
注2)新谷学氏の著作、獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論(光文社)掲載。

執筆者:編集スパルタ塾10期生

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