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CRM | マーケティング施策を支えるCDP基盤入門

「このセグメントに対して打つべき施策は何か」を議論することが当たり前になってきました。

わたしが勤める会社はEC型のWebサービスを運営しています。その中でわたしはマーケティンググループのエンジニアとして、マーケティング施策のプロダクトを開発しています。

現状のターゲティング方式ではボリュームゾーンを広く捉えすぎていてマーケティングコストを無駄に投資してしまうという課題がありました。結果として一定の効果はあるものの施策がネガティブに働くこともあり、ユーザー体験を損なう声も聞こえてきました。

売上をあげることも大事なのですが、それ以上に一人一人のユーザーを大切にしたかったのです。

この課題を解決するためには現状のユーザーセグメントを見直して、よりパーソナライズされた施策を実施する必要がありました。


どういうセグメントにするか、その定義は?

セグメントの見直しにあたって、西口一希『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社 2019)をベースに具体化していきました。

この本には以下の一文があります。

売上や利益がどの顧客層に由来しているのかを把握せず、新規顧客の獲得に投資してしまう事態や、あるいは既存顧客にばかり目を奪われてブランドを将来的に先細りさせてしまう事態を回避します。

引用:西口一希『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社 2019)  P20-21

これはわたしたちが課題感としてもっている内容に通じるところがありました。基本はここに書かれていることをベースに実践していくことにしました。

具体的には、以下図の「9セグマップ」をベースにしました。

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引用:西口一希『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社 2019)  

こちらの「9セグマップ」をベースにしてセグメントを定義していきます。

セグメントの定義

9セグマップをベースに以下のように定義しました。非認知層は除外しているため実際は8セグメントになります。
*厳密には非認知層も追っていますがそれについては別のnoteにて…

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詰まるところ各セグメントに対して打つ施策の目的は、より右上のマスにもっていくことにあります(下図)

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それぞれのセグメントに対して打った施策がどれくらい好意的に反応したかを定量的に計測しながらPDCAを回していくイメージになります。


セグメントの変数

セグメントを分類するために必要な変数は、①会員・非会員、②最終アクセス日時、③購入回数となります。

整理すると以下のようになります。

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ユーザーごとに定量化したデータを持つことで、デジタルにセグメント分けができ、かつシステムと連動して自動化することで様々な施策を効率的に打つことが可能になります。

そのためにはまず、土台となるユーザーマスターが求められました。ユーザーマスターに求められる要求は以下でした。

● ユーザーがどのセグメントにいるかがわかる…ターゲティング
● ユーザーがいつどこのセグメントにいたかタイムラインを追える…計測
● なるべくシンプルに、こだわりすぎない…まずはTryしてみる

実は3つめが意外に大事だったりしますw


ユーザーマスター構築

CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の導入を検討しました。

CDPとは
CDP は、適切な人に、適切なタイミングで、適切なエンゲージメントを提供し、マーケティングから販売、サービスに至るまで、顧客との接点をすべてパーソナライズするための鍵です。

引用:顧客データ プラットフォームとは | Microsoft Dynamics 365

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上図中央の「データ統合・連携」は、Treasure DataやSalesforceなどの外部ベンダーを利用する手段もありましたが、本当に意味があるのか検証するためにまずはシンプルかつ低コストでスタートすることを目指し内製化を選択しました。


データ管理

BigQueryで管理しています。

具体的には、GCPプロジェクトをサービスごとに払い出しそれぞれのサービスにデータレイク・データウェアハウス・データマート用のデータセットに分けて管理しています。

理由は人間が直感的に理解しやすいからです。こういったデータ基盤はデータが散らかりがちになるので、大枠で分けることで可読性を高められる考えたからです。

以下、イメージになります。

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ユーザーマスター定義

ユーザーマスタテーブルは以下のように定義しました。

無題の図形描画

未会員・会員に限らず「ビジターID」は一意に振られ、未会員はユーザーIDがNULLになるように設計しています。ビジターIDの発行はブラウザならCookieに、ネイティブアプリならUUIDを内部で生成するなどの方法があります。

ポイントはこだわりすぎないことです。

たくさん項目がありますが、実際は目的に応じて必要な項目だけを初期構築で用意すればいいと思います。不要な変数を用意したり、使うかもしれないと用意したりしても、大抵使わないまま終わるので、強い意志で必要な項目だけに絞るのがコツですね。


セグメントマスタ

セグメントそのものを管理するテーブルです。マスターデータ的な位置付けなのでテーブルに分離しました。

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ユーザーマスター構築

ユーザーマスターを日次で登録しています。理想はリアルタイムでしたが、開発工数が大きくなることもありまずはバッチ更新を選択しました。


セキュリティ

個人情報が含まれるため、データ閲覧制限をかけたほうがいいと思います。BigQuery の列レベルのセキュリティでアクセス制限をかけることが可能です。アクセス制限がかかっている項目をSELECTするとクエリがエラーになりデータ取得を制限できます。


施策活用

施策を打つ時にはユーザーマスターを元にすればデジタルにセグメントできます。CDPの概念的には以下図の「データ活用」の部分になります。

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例えば、非アクティブなユーザーをアクティブにさせるには、サイトに訪れてもらうような施策を検討します。上図でいうメール・プッシュ通知を配信することでサイトに訪れてもらえるよう促すことができます。ネガティブな反応もあり得るので、同時にオプトアウトや退会もモニタリングするといいかと思います。

また、割引やクーポンは正しく配布し使用されれば、初回購入や2回目の購入への動機づけに効果を発揮することがあります。「正しく」と書いたのは、無駄に配りすぎると収益減を引き起こしかねません。

クーポンがなくても買う人に配ったら無駄コストになりますし、クーポンあっても買わない人に配っても意味がありません。クーポンがあったら買うユーザーに絞って配るのが理想的です。

この問題はとても難しく、統計的な方法やAI活用して予測と検証を繰り返しながらもっともROIが高い変数を見つけていくことが求められそうです。

詳しく知りたい方は、効果検証入門〜正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎がおすすめかもしれません。


CDP導入・活用例

CDPの導入や活用事例をいくつかピックアップしました。

SmartNews

ユーザーが無意識にどのようなコンテンツ接触をSmartNewsでしていたのか、それを可視化をすることで顧客の行動をより深く理解することができる。

引用:「無意識データ」でカスタマージャーニーを立体化する — SmartNews Adの挑戦

アスクル

例えば、商品ページには写真が何点あればコンバージョンしやすいのか、商品写真は何枚まで見られたのか、そのうちどれが拡大表示されたのか。また購入商品は検索やレコメンドなど、どの経路でかごに入れたのかといったデータも分析可能

引用:日用品ECサイト「LOHACO」の購買データがメーカーのマーケティングに与える価値とは?|アスクル株式会社

ユナイテッドアローズ

データの一元管理と統合が容易になることによって、アプリもしくはWebでログインしている会員について、Webやアプリでどのように情報収集を行っているか、その利用の状況、リアル店舗に行って購入しているのか、Eコマースにしてもオンラインストアから購入しているのか、もしくはアプリからの購入なのかを知ることができます。お客様の趣味嗜好を知り、より理解を深めることが一気通貫で可能になりました。

引用:お客様を知り、継続したお付き合いをしていくために ユナイテッドアローズの統合データマーケティング事例


まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は適切な人に、適切なタイミングで、適切なエンゲージメントを提供しするために、ユーザーセグメントを定義することで実現していく一例を紹介いたしました。

マーケティングから販売、サービスに至るまで、顧客との接点をすべてパーソナライズするための鍵になるCDP基盤はマーケティングの強力な武器になると思われます。

究極の1to1マーケティングを目指しマーケティンググループは日々活動を続けています。


最後に、Amazon.com CEO ジェフベゾスはこのように述べています。

If I have 3 million customers on the Web, I should have 3 million stores on the Web.ウェブ に 3 百万人の顧客がいるなら,3 百万の ウェブストアを用意すべきだ
- ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos) - 


CDP構築にあたって活用させていただいた本


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とくきち(tokukichi)
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