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美術館でお気に入りをたくさんつくる

むかーし昔、美大の友達に美術館に行くと覚えておきたいことが多すぎて疲れちゃうんだよね、と話したらこう言われた。「全部見ようとしないで、1つでいいからお気に入りをみつけるの。そしてそれを覚えて、なんで好きなのか考えたらいい」

なるほど。1つでいいのか。1つくらいなら思いをそのまま持って帰れる。

それからは美術館に足を運ぶたびに1つでいいからお気に入りをさがして覚える。そうすると2つ3つお気に入りがあるときも出てくる。それを10回繰り返すと20ほど自分のお気に入りが出来る。なんで好きなのか考えると、自分の方向性や好みがはっきり分かってくるので美術館にも行きやすくなる。いいことばかりだ。

今回は美術館に茶碗を見に行ったわけだが、すでにお気に入りのものがいくつかでていたりするので、2度目まして、3度目ましてのものもある。それをいつ、どこでなんの美術展でどんなテーマだったかを記憶のなかを探って思い出す。すると何年も前のことが意外とはっきり覚えているのだ。あれは東京の国立博物館でみたな、展示方法が良かったな。これはこの美術館でみたな、でも前回の方が照明の当て方がよかったな、だとか。そして何度も出会うとあー、この花入れのここのラインが好きとか色がいいんだよねとかもあるし、改めてその美しさを発見することもある。

体系的で専門的な知識はないから専門家にはなれないし美を作り出す職人にもアーティストにもデザイナーにもなれないけど、そうやって自分のお気に入りのものにいろんなところで出会えるのは人生のよろこびのひとつだ。

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