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恩師の最終講義とS町の過疎問題 ~過疎問題はもはや他人事ではなくなった~

このnoteは学生時代にお世話になった先生の最終講義を聞きに行ったときに、昨年Facebookに投稿した記事を改めて書き直したものです。

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私は先生の研究室に所属し、卒論や修論の面倒を見てもらったわけではないが、先生に連れられて奥州市の胆沢や西和賀町、久慈市山形村のバッタリー村に行き、体験したことは今でもいい思い出だ。

先生は農村計画や地域づくり・地域おこしを専門とし、私の地元、S町でも地域づくりの支援を行っていたが、私の中ではなぜか地域づくりや地域おこしは山奥の山村等、もっと過疎の地域で行われるものであり、自分の地元は県庁所在地から近いこともあってあまり縁がない物のように感じていた。

だが、S町内の小学校の再編計画により今年度末には母校の小学校が無くなってしまうことを3年ほど前に知ったことで、他人事のように感じていた地域づくり・地域おこしの必要性を強く感じるようになった。S町は県庁所在地のM市に近く、町の中心部に人口が集中する一方で、町の西側・東側の地域では確実に人口減少が進み、小学校や中学校の児童・生徒数は私が子供のころよりずっと減ってしまっている。中学校では人数が少なすぎて無くなってしまった部活もあるらしい。もし子供の居場所である小学校が地域から無くなってしまったら、子育て世代はその地域で暮らしにくくなることは容易に想像できる。わざわざそのような地域に移住してくる人なんてなかなかいないだろう。町の西部・東部の過疎化はますます進んでいく。S町はオガール等、町の中心部の発展ばかりに力を注ぎ、町の西側・東側の農村部は町の発展から取り残されている。

町の中心にある「オガール」
役場、図書館、産直、保育園、病院や飲食店等のテナントがこのエリアに集約されている。
公民連携の成功モデルとして県内外から多く視察の人々が訪れる。
町はオガールがもてはやされることばかりに気を取られて、本当に向き合うべき問題から目を背けているのではないだろうか?


この町で育ち、暮らす住民としてどうにかこの問題に取り組みたい。この町の特徴である田んぼや畑や果樹園が広がる地域で子供たちが自然に触れながらのびのびと育つことができるのがS町の魅力なのではないだろうか?いずれ廃校になる小学校を、地域の自然や伝統を活かし町内外の子供たちが遊ぶ拠点となるように活用できないだろうか?

小学校が統合されたらスクールバスで通学することになるらしいが、歩いて登下校することは、改めて思い返すと私にとっては地域の自然との繋がりであり、友達と過ごす大事な時間だった。男子と一緒になって畔のカエルやザリガニを取ったり、ヘビの脱け殻を見つけて持ち帰ったこともあった。スクールバス通学になれば、日々のそのような体験は無くなってしまうだろう。

小学校の統合だけでなく、このまま西部・東部の過疎化が進めば耕作放棄地や空き家が増え、人里と山との境界が無くなっていきこれまで以上にクマの出没が激しくなるだろうし、シカやイノシシによる農業被害も増えていくだろう。S町は農業が盛んな町であり、米の生産やブドウや洋梨、リンゴ等の生産、そしてそれを利用して生産された日本酒、ワインも有名である。過疎化が進めば町の特色であるこれらの農産物や加工品の生産は廃れていく。町の中心部の発展だけではM市のベッドタウンとしての価値しか無くなってしまうのではないだろうか?

町には、いかにも「映える」地域である中心部の発展だけに力を入れるのではなくもっと西部・東部の住民の声を町づくりに反映してもらいたい。そうしないとS町は本当につまらない町になってしまう。

このようなことを考えさせられた恩師の最終講義であった。

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