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ミッション・ビジョン・バリューを軽視しない。

自社のミッション・ビジョン・バリュー(以下MVV)を言えるか?と問われると正直、かなり困る人が大半だろう。困るからと言って暗記すればよいというものでもない。

MVVとは少し外れるが、製造業では安全第一が掲げられ、安全に関するスローガンを暗記させる会社もあると聞く。ちなみに暗記していないと怒られるらしいのだが、これでは完全に「お勉強」の域に入ってしまっている。

「何のために安全を維持すべきなのか?」「他社と比較しても、当社は、なぜこれほどまでに安全を強く意識するのか。」という本質的な視点が抜けているのだ。「社員に暗記させましょう!」と言っている幹部が、なんのお咎めもなく認められそれなりに出世しているならば、その会社自体を疑ったほうが良いかもしれない。

MVVに関しても、本来、その会社の存在意義を明示しているものであるため社員としては強く共感しているのが正しい姿といえる。ところが、多くの会社のMVVは、「まあ、そんなん当たり前すぎてなんの共感も生まれない。」というものになっている。だから、誰も覚えていないのだ。

では、なぜそもそもMVVが必要なのか。これはステークホルダー動かすためであり経営者や社員全体が自社に誇りをもつためである。このように記すと「それって精神論ですよね?」と感じる方も少なからず存在するかと思う。

実は、私も過去、精神論嫌いでロジック至上主義に傾いていたことがある。なんか、精神論は泥臭くクールな感じがしないし、理路整然と物事を運ぶのはかっこいいように感じたからだ。ロジカルシンキングに関する本が多く出版されており人気ぶりがうかがえるし、経営層もロジック至上主義の人は多いように思う。

しかし実際に物事を運ぶには精神的合意とロジックが両立することが必要となる。精神的合意がないにも関わらずロジックで説き伏せられると、恨みや憤りが残るのは多くの方が経験上理解されているかと思う。少し前に「論破」が流行ったが、あれは実社会では最悪の行為といえるだろう(論破した人間は気持ちがよいだろうが、されたほうは場合によっては一生恨み続けるだろう。絶対にやってはいけないことなのだ。)。

逆に精神的に合意しているがロジックが不完全だと不安が残る。「あいつの言うことは素晴らしいし、ものすごく共感する。でも本当に実現するのだろうか?」となってしまうのだ。通常の友達のお付き合いなら問題ないのだが、ビジネスになってくるとやはりロジックが必要となる(会社員だと避けて通れないはずだ。)。

さて、またMVVに戻りたい(MVVすべてについて記載すると長くなるのでM(ミッションだけ)に焦点を当てたい。)。ではそもそも良いミッションとは何なのだろうか?田所氏の「起業大全」によると以下のように記載されている。非常にポイントをついている内容だと私は感じる。

1.「当たり前の大義」を並べない。
2.聞いた人や口に出した人が、エネルギーを生み出すことができるか
3.自社の強みに合っているか
4.10年後も使えるか
5.顧客は誰か明確にできているか

続いて有名な各社のMVVを以下に記載した(情報元はコチラ)。

ファーストリテイリング
・服を変え、常識を変え、世界を変えていく

ヤフー
・情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。

キリングループ
・自然と人をみつめるモノづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します

メルカリ
・新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを造る

ソフトバンクグループ
・情報革命で人々を幸せに

こう見てみると5つの要素をすべて満たしているミッションは非常に少ないように思える。そして伝統的な大企業になるほど角が取れ、丸くなっているようにも見える。
ただ私が最も重要だと思うのは「当たり前の大義」を並べず、聞いた人や口に出した人がエネルギーを生み出すことができるか、という点である。

ちなみに私は、ファーストリテイリングのMVVが一番心に刺さる。MVVは従業員にとっても重要だが、特に新規事業担当者にとってはかなり重要である。というのも、新しい事業を作るうえでどうしても方向性が欲しい。儲かる!という点を重視しすぎるとレッドオーシャンに入り込み、魂のない消耗戦になってしまうからだ(これほどつらいものはない。魂もないのに高品質低価格競争に陥るのだから。)。

とはいえ、自社のMVVは「当たり前の大義」となっているケースが非常に多いのではないだろうか。私も実は同じ悩みを抱えている。この場合は、自社のMVVの範疇でより具体化したMVVを自ら設定するしかない。(幸い、自社のMVVが当たり前すぎるので、多少個性的な独自のMVVを設定しても、自社の範疇から外れることは極めてまれなのだ。)

独りで新規事業を行っている時点ではMVVを言語化する必要はない。しかしチーム化するフェーズでは必ず設定すべきだろう。とにかく、エネルギーが湧き上がるフレーズにすること。そして新規事業を進めながらMVVに磨きをかけていくことが重要だと肝に銘じたい。

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