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新規事業担当者は率先して、自分自身の人格を高めよう。

新規事業を進めるにおいて、よく「原体験」を元に事業を作り出すのが良いといわれる。確かに過去の自分の経験において感じた強い「不」があり、それを解決したい。と思って新規事業を作り上げていくことは合理的であり、効率的だ。

ただ、そのような強い原体験がない人も多い。もちろん誰にでも、これまで幾度となく「不」を感じてきただろうが、大きすぎる「不」は、そもそも解決できないと思い込んでいるため認識されないこともあるし(例えば、20年前の自分に戻りたいとか、不老不死になりたいとか。)、「不」が小さすぎてビジネスとして成立しないことも多々ある。そういうこと考慮しながら思考をめぐらすと、「ビジネスにつながるような強い原体験はない。」という結論に至る。

こういう場合は、自分の「心(志)を磨く」とか「人格を高める」という視点で事業創出に向き合うのが良い。これは日本人のなじみがある言葉でいうと「三方良し(=売り手良し、買い手良し、世間良し」という近江商人の心得)」の精神だ。つまり買い手、世間を念頭に置きながら「売り手」の視座を高めることに他ならない。昨今、パーパス経営が注目を浴びているが、商売としての、そして人間としての原理原則に立ち返る動きが進んでいると感じる。これは確実に良い方向だ。

過去、日本の大経営者は、「心(志)」や「人格」に重きを置きながら経営をされてきたように思う。京セラの稲盛和夫さんや、パナソニックの松下幸之助さんなどが有名どころだろう。時折、このような大経営者の本を読ませていただくが、人間としての「志」が非常に崇高であると感じる。

一方で、経営者によっては、ことあるごとに「それは儲かるのか?」「いつまでに投資回収できるのか?」「リスクは無いのか?」といった質問を連発されることがあるように思う。これは、もちろん非常に重要なことだ。経営者は会社を存続させていくという非常に大きな使命がある。それを実現するためにはきれいごとだけでは済まされない。

しかし、これら利益を追求する大元となる「志」「人格」「心」がなければ、会社全体としての倫理が失われ始める。

現在は、欧米型経営に代表する科学的経営が重宝されている。科学は重要だがあくまで手段であって目的ではない。MBAでは競争戦略を学ぶかと思うが、そのなかの商品戦略などで「差別化」という概念も実はおかしいかもしれない。「ニッチ戦略」という話も違和感を感じるのではないだろうか。これらは、考え方が基本的に自社視点(独りよがり視点)になりがちなのだ。つまり「競合が参入していないこの領域に我々のビジネスを展開してはどうだろうか?」という議論がなされるようになり、顧客目線ではなくなってくる。

素直に、「今、世間の人は●●で困っている。わが社であれば、これらの人たちに対して満足いくサービスや製品を提供できるのではないか?」という発想でビジネスを進めれば、おのずと差別化ができるようになる。

ビジネスとは世の中の「不」を解消するために存在する。この不を見つけるためには高い志や優れた人格が必要になってくると感じる。なぜなら、高い志や優れた人格は、より高いレベルの理想を描くことができ、倫理的にも間違いがない。そしてその理想と現実のギャップにビジネスが生じるからだ。

リスキリングやキャリアップなど、自分自身の市場価値を高めることに精力的な人も多いかと思うが、一方で、さらに高いレベルを目指すのであれば志や人格を磨き続けることが必須となるように感じる。


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