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Le illumine 創造性あふれる富山発スリーピースバンドの最新シングル「108本の独り言」:sprayer Interview

2021年6月に結成され、富山県新川地区を拠点に活動するスリーピースバンド、Le illumine。ギターロックを核にしながらもロックバンドという型にとらわれない城山(Vo,Gt)の作編曲は、エレクトロなシーケンスを交えながら各楽曲に異なるムードをまとわせ、コンセプチュアルでキャッチーな個性を放っている。

5月4日にリリースされた最新シングル「108本の独り言」では、流麗なメロディやコーラスワークのみならずラップ風のアプローチも披露するなど、その創造性は止まるところを知らない。メンバー3人に話を聞いた。

ダンスミュージックとロックのルーツが融合

[L→R] 空羽(Dr)| 城山(Vo,Gt) | 加助(Ba)

-バンド結成の経緯を教えてください。

城山(Vo,Gt):中三ぐらいから、いつか音楽に携わる仕事をしたいと思っていました。その後、社会人として働いていた時にコロナ禍が訪れて、外出自粛で暇していた時に「そういえば俺、音楽やりたいんやった」と思い出しまして。じゃあまず何をしようかと考えた時に、一番最初に手を付けられるのはミュージシャンとしてバンドをやることかなと。そこからDAWでデモを作って、2020年4月に『OURSOUNDS』というバンドメンバー募集サイトに公開したのが始まりでした。それから紆余曲折があってメンバーが出入りして、バンドとして固まったのが2021年6月です。

城山(Vo,Gt)

-それ以前にバンド経験や作曲経験は?

城山:高校生の時、ダンスミュージックのプロデューサーになりたいと思った時期がありまして。PCと作曲ソフトを親に頼んで買ってもらって、一曲は形にしたんですけど、そのあとはほぼ何もやってませんでした。音楽経験はそれだけですね。ギターを始めたのもこのバンドを組んでからです。

-加助さんと空羽さんが加入したのはどういった経緯で?

加助(Ba):城山の募集に対して最初に声を上げたのが元メンバーの橋本龍太朗(Gt、2023年8月に脱退)だったんですけど、彼が僕の中学校で1学年上の先輩だったんですよ。中学生当時は面識なかったけど、社会人になってから共通の友達の紹介で知り合って。その時、イルミンのベーシストが抜けそうとのことだったので、初心者に毛が生えた程度ですけどベースをやっていた僕に声がかかり、加入することになりました。

加助(Ba)

空羽(Dr):僕は2022年11月に正式加入したので、後入りという形です。高校時代からやっていた別のバンドでイルミンと対バンした時から、すごい良いバンドやなと思ってて。それから時を経て、「サポートからでも良いのでやってみませんか?」と声をかけられました。加入前から……というか、今もある意味、一ファンとして好きなバンドなので、メンバーになれて光栄ですね。

空羽(Dr)

-皆さんのリスナーとしての音楽遍歴は?

城山:中三の時にラジオでサカナクションを知ってから、いわゆる邦ロックバンドにハマりまして。その他にはFear,and Loathing in Las Vegas、ONE OK ROCKとかを聴いてましたね。高校時代には先ほども話した通りダンスミュージックにのめり込んで。Martin Garrix、Skrillex、Galantisが好きでした。最近だとThe 1975、Bring Me The Horizonが好きで、作曲面でも大きな影響を受けています。

加助:僕は学生時代はRADWIMPS。社会人になってからMy Hair is Badや凛として時雨にハマって、ライブやフェスにもかなり足を運んでいましたね。 バンドを始めたあたりで、きのこ帝国や羊文学などのシューゲイザーを好きになり、最近では城山に教えてもらったThe 1975を主に聴いてます。

空羽:中学まで音楽にはまったく興味がなかったんですけど、今も一番尊敬しているバンドである[Alexandros]の「ワタリドリ」に出会った時、体に衝撃が走りましたね。すぐにお年玉でファンクラブに入ってライブに行ったんですけど、当時メンバーだった庄村聡泰(Dr)さんが一音叩いた瞬間、「ドラムやべえ!」ってなって(笑)。それからは、[Alexandros]の影響元であるUKロック、Oasisなんかもかじりつつ。

-Le illumineの楽曲は、ギターロックやインディーロックを軸にしつつ、エレクトロでポップな側面を押し出しているのが特徴的です。城山さんの仰る通り、The 1975を彷彿とさせたり。

城山:確かに最近はThe 1975を参照したりしますね。でも、自分自身でも影響元がわからないメロディやノリが生まれることもあって。さっき話した以外の音楽からも、「この曲のこの一音を参考にしたい」とか、細かくインスパイアされることもありますし。自分の中に落とし込んだ色んな音楽すべてをギュッと絞り出したものを作りたいなと思ってます。

-バンドサウンドに自然に同期音、打ち込みを馴染ませる現在の音楽性にはどのように辿り着いたのでしょう? 初音源『Ver.1.5.8』の3曲は比較的ギターロック色の強い楽曲でしたが。

城山:元々いまやってるような音楽をやりたかったけど、DTMの知識や技術が足りないからバンドサウンドに逃げていたというか、困ったらギターソロを入れる、みたいな完結のさせ方をしてて。経験を積んでるうちに、できることが増えたので、表現の幅が広がったということなのかなと。変わったというよりは広がったというイメージです。

-最初からロックバンドという形態に縛られない音楽性を志していて、そこに技術が追いついてきたということですね。

城山:そうですね。あと、バンドとして意識してるのが、似たような曲をできるだけやらないこと。一曲一曲に対するコンセプトをしっかり持たせることは大切にしています。

-バンド初経験のメンバーが制作しているにしてはサウンド構築が巧みで、もしかして裏にプロデューサーが付いているのかな? なんて邪推をしてしまっていました。

城山:嬉しいです(笑)。プロデューサーが付いてるんじゃないかと言われるくらい作り込みたいと思いながらいつも制作しているので。


コンポーザーに寄り添った楽曲制作

-楽曲の制作はどのような流れで行っていますか?

城山:デモの段階で、リリースしたものと違いがわからないぐらいまで編曲も作り込んでメンバーに共有してます。ただ、たとえばリードギターを丸々抜いた状態でデモを送って「ここにギター乗っけてみて」と言ってみたり、ベースの動きやドラムのフィルについては「もっとカッコいいのあると思うんやけど、なんか思いつかん?」と相談してますね。各パート、80%まで作ったものをメンバーと100%にしていくみたいな。同期音に関しても、たとえば加助から「『濡れた街』のラストサビ前にどうしても音を入れてほしい」みたいなアイデアが伝えられることもあって。

加助:効果音系はやたら文句言います(笑)。

-リズム隊の2人が第三者委員会的な感じで。

城山:僕も「いらなくね?」とか言っときながら、やってみて「良いわこれ」となったり。

-バンド外のサウンドが主張するぶん、各パートのアレンジには普通のギターロックバンドと異なるアプローチが必要になるかと思います。城山さんの楽曲を活かすために気をつけてることはありますか?

空羽:「今回はシンプル志向で」「今回はちょっと激しめに遊ぼう」とかっていう城山が設定したコンセプトを最初に聞いた上でアレンジしていくので、大前提としてそこから逸脱しないことを念頭に置いてます。ドラマーだからこうしたい、どうしてもこう叩きたいっていう確固たる主張も時には大事だけど、最終的にはコンポーザーに寄り添った考え方を意識してますね。

加助:べースのアレンジについてはなるべく城山の意思を汲み取るようにしていて、自分が口を出すのはどっちかというと歌録りの部分ですね。最近は良くなってきたけど、城山はまだ自分の歌の強みや良さ、カッコいい歌い方を客観的に理解できてないというか。プリプロやレコーディングの時に「なんか籠ってないな」と思ったら意見を言う役割を僕が担ってます。別に特別な知識があるわけではないですけど、リスナーとして色々聞いてきたぶん、素人臭さとかは判断できる気がしていて。

-EDMを聴いて自身でも作ってきた城山さんと、リスナーとして歌モノの楽曲に触れてきた加助さんが同じバンドにいるからこそのコンビネーションですね! サウンドはもちろん、歌詞もLe illumineの大きな魅力だと思っていて。楽曲のテーマを的確に表現しつつ、あまり語りすぎない言葉によって、聴くごとに違う景色を浮かばせています。歌詞を書く上で大切にしてること、心掛けていることはありますか。

城山:何個かあって、まずは韻を踏むこと。あとは自分が歌っていて恥ずかしくない言葉を選ぶこと。あとは、難しい単語を使わずに難しいことを言いたいっていう。

-ああ、それはすごく感じました。

城山:みんなのボキャブラリーの中にある言葉に対して、こんな言葉が付随してくるか!? みたいなことを狙ったりしながら、頑張って書いてます。

-わかるようでわからない、単語は拾えるけど全体としてはどういう意味なんだろうと考えたくなる、という奥深さがあります。

城山:でも、どちらかというと歌詞よりも音楽を優先したいので、音が濁らないように、言葉がメロディに乗った時にハマっていることを意識して、歌を音として聴けることを意識しています。


アイデア満載の最新シングル「108本の独り言」

-5月4日にリリースされた最新シングル「108本の独り言」は、「伝えたいことも伝えられなくなってしまった二人の物語」がモチーフとなっています。

城山:この曲に関しては、まとまったストーリーが決まっています。20代後半~30代前半のカップルがいて、その女性が周囲の結婚や自身の加齢に伴って「私はいつ彼氏からプロポーズしてもらえるんだろう」と感じている気持ちを歌詞に落とし込んでいこうと思って書き始めました。女性側からも、男性側からも、付き合いが長い故に伝えたいことを伝えられずにいる。その複雑な感情をテーマにしたいなと思って。MVを作ろうと構想した段階で、「結婚してください」という花言葉を持つ108本のバラのイメージが浮かんで、曲名を決めました。

-なるほど。ビジュアルのアイデアが先にあって、そこから曲名を決めたんですね。

城山:メンバーからも歌詞だけだとそこまで伝わらないと言われたので、楽曲だけで物語は完成しつつ、MVと曲名でヒントを与えるような形で。

-サウンド面では様々なギミックがてんこ盛りです。Bメロではガッツリ打ち込みのサウンドを聞かせたり、ラップ風のアプローチが見られたり。

城山:制作の初期段階では、全体的にリバーブのかかったウェットなニュアンスで、シンコペーションを多用して独特なノリを作り出しながら、大人な雰囲気を醸そうということを意識して作り始めました。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビとちょっとずつ組み立てているうちに、「ここで打ち込みのビートを入れたら面白そうだな」「ここでラップしてみよう」と自然に出てくるアイデアを繋げていきましたね。

-そのアレンジが巧みですよね。バンドで打ち込みのみのパートを取り入れたり、ラップを披露したりすると、どうしても「やってる感」が出てしまいがちだと思うんです。それをスッと聴かせていて。

城山:自然に聴けるようにアレンジがガラッと切り替わるタイミングで導入のサウンドを入れたりしてますね。ただアイデアを貼り付けただけのものにはしたくないので。

-MVはこれまでの楽曲でもタッグを組んでいるいしかわたつるさんが監督を務めています。アートディレクションはバンド自身が担当したとのことですが、どういったコミュニケーションを図って楽曲のイメージを映像に落とし込んだのでしょう?

加助:MVの構想は僕らが決め込んで準備しています。108本のバラと花瓶、クマのぬいぐるみ、椅子やビー玉といった小道具とかは大体僕らが用意したもので。

城山:それらを現場に持って行って、撮影やライティングのことはいしかわさんにほぼお任せしつつ、相談しながら制作しています。

加助:MV内でスクリーンに映し出される映像は、楽曲の物語に登場する彼女が彼氏との思い出巡りをしている情景なんですけど、その場所も全部僕たちが「ここで撮りたい」と提案してます。

-地元・富山の各所で撮影されていますが、富山での活動にはこだわりがあるのでしょうか?

加助:富山で有名なバンドって少なくて。富山で売れたっていうのはやっぱり言いたいので、「富山県のバンドです」ということはしきりに発信してますね。

城山:正直、富山のシーンを盛り上げようという熱い気持ちがあるわけではないんですけど、僕らの活動が上手くいって知名度が上がれば地元を盛り上げることになると思うので。結果としてそうなれば良いかなとは思っています。


唯一無二のバンドでありたい

-ここまでの話を聞いていると、バンドとしてビジュアルにも強い意識を持っていることが伝わります。Xでの投稿では楽曲のコンセプトビジュアルのようなものも公開していて、K-POPグループさながらのこだわりだなと思いました。そういった視覚面のディレクションはどなたがなさっているんですか?

加助:ビジュアル面は主に僕ですね。SNS更新も担当しています。

-SNSの使い方も上手な印象です。とりわけTikTokの動画は丁寧に仕上げられていて、楽曲『いや、』の動画が10万再生を超えるなど反響を得ていますが、TikTokでの発信について気を付けていることはありますか?

加助:何が良いものかっていうのは正直わからなくて……。

城山:ライブ映像だったりMVの切れ端だったり、使えるものをとにかく駆使してます。少しでも指を止めてもらえる、音楽に耳を傾けてくれるように、カッコいい動画を意識して。ただ、最近はそれを当たり前にやっているバンドがあまりにも多いので、今後はどうしようかと加助と話してます。もう楽器持たないほうがいいんじゃないかとか(笑)。

-TikTokでバズってヒットする、ということに抵抗のあるバンドマンやリスナーも少なくないとは思いますが、Le illumineとしてどう考えてますか?

城山:うーん。あまり抵抗はないですね。TikTokでバズったとしても、その先に別の場所でちゃんと評価されれば、抵抗がある人も受け入れてくれると思うので。今はとにかく、僕たちはやっている良い音楽を知ってもらいたいという気持ちが強いです。

加助:ランダムに誰にでも再生されるようなコンテンツなんで、そこは上手く使って。

-直近ではどのような活動を計画していますか?

加助:新曲は制作中です。あとはとにかくネットを駆使して、動画を作成して、自分たちの音源を広めたい。県外に出てひたすらライブをやるっていうよりは、目を引くような映像を作って出していきたいですね。

-では最後に一人ずつ、Le illumineとして目指すバンド像について教えてください。

空羽:僕自身、イルミンかっけえ!と思っていたので、俺らかっけーぞってことを世に広めていけたら最高かなと思います。僕と同じ気持ちになってほしい(笑)。ミュージシャンになりたいと高校生の頃から思ってたので、その夢をこのバンドで叶えたいですね。

加助:僕も城山も、二番煎じがとにかく嫌いなので。オリジナリティを追求して、「こいつら何?」と思われるような唯一無二の存在を目指したいです。

城山:まず大前提として、バンドをとにかく大きくしていきたいという思いはあって。具体的に言うとアリーナツアーをするようなバンド。それぐらい上を見てやっていきたい。そのためには、加助の言う通り唯一無二じゃないといけないですね。あとは、バンド名の由来通り(Le=フランス語の「The」、illumine=照らす、明るくする)、僕たちの曲を聴いてくれた人の気持ちを少しでも明るくしたい。

-ちなみに、具体的に立ちたいステージやイベントがありますか?

加助:まずはフロアが埋まって、全員が手を上げている景色を見たいです。

空羽:富山だとオーバード・ホールは色んなアーティストさんが来る場所なので、そこを満杯にしてみたいですね。


Text:サイトウマサヒロ(@masasa1to
Edit:sprayer note編集部


Profile:Le illumine

2021年6月に結成し、富山県新川地区を中心に、県内外でのライブや富山のラジオ番組への出演等、活動中。 独特な雰囲気と世界観を持ち、一曲一曲がコンセプチュアルでハイクオリティなサウンドデザインでかつ、非常にキャッチーに仕上がっている。

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▼YouTube
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