ピアノのバッハ25:21世紀的バッハ演奏
ピアノで弾くバッハには、一般的に二つのアプローチがあります.
器楽的なアプローチと声楽的なアプローチのことです。
バッハをピアノで演奏するにあたって、いかにしてピアノの音を出すべきか?
ピアノの性質の違いを他の鍵盤楽器と比較してみると、自ずと問題は明らかになります。
ピアノという楽器は、鍵盤に触れた指を離しても音はすぐには消えないで、音は漸減しながら残響として、いつまでも音は鳴り続けます。
オルガンという楽器は、鍵盤に触れた指を抑えたままだと音は永遠に途切れることはありませんが、指を少しでも離すと、途端に音は消えてしまいます。
チェンバロという楽器では、鍵盤に連動しているジャックが弦を爪弾いた音は、鍵盤に触れた指が鍵盤に触れたままであろうが離れていようが、すぐに消えてなくなってしまいます。
楽器の発声の原理の違いから、チェンバロのために書かれた楽譜をピアノで演奏することはある意味、暴挙ともいえるほどに「バッハらしさ」を再現するためには、数多くの問題を孕んでいるわけです。
器楽的アプローチ:語るバッハ
器楽的なアプローチでは、バロック音楽らしい不均等の美学を前面に打ち出す演奏が志向されます。
チェンバロは長い音を作るのが苦手なので、長い音価の音符には細かい音符を装飾音として付け加えます。
また、音を強調する音を伸ばしたり縮めたりするために、歌うフレーズを模倣しても、人の声で歌う自然さはチェンバロでは失われてしまい、楽器は歌っているというよりも、語っているという比喩がふさわしくなります。
バロック音楽は語るのです。
語るピアノのバッハの特徴は次のようなもの。
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