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あの人は 自分の育った境遇の 意味を 探していた その体験を 活かせと 何者かに 言われている気がして 幼い頃に 母親を亡くし 父親に 育てられてきた 複雑な 環境の中 あの人は 早くから お金を稼ぐことが 求められた 知恵も 経験も ない中で できることは 限られる あの人は 悟った 生きていくには 手に 職をつけることが 必要なのだと この辛さは まだ自分の人生が 始まっていない だけなんだと 自分に 言い聞かせ続けた 自分の 居場所は どこに ある
海外経験の長い あの人は 日本との 生活水準の差に 不公平さを感じ 課題意識を持った その差を埋め 人々を救うのが 自分の役割だと 思った しかし コロナ禍になり その課題意識は 揺さぶられる 進んでいるはずの日本が 苦しみ 後ろにいるはずの 海外の人たちの方が はるかに笑顔で 過ごしていることを 私が 本当に救うべき人は 誰なのだろう 問いが 頭に残った ふりかえれば あの人の歩みは ドラマのようだ 順調に進んでいると 落とし穴があり その度に 人の縁に