総理。今週末、山登りにいきましょう!

ただし、ちょっとだけハードな山ですよ。

ぜひ、オリンピック担当相や、コロナ担当大臣なんかも連れてきてください。あ、ついでに、電力会社のトップも誘ってくれると嬉しいな。

いえ、別に登山じゃなくてもいいんですけどね。
ヨットでも、スカイダイビングでも、スキューバダイビングでも、クロスカントリーラリーでも、山スキーでもオッケー。

要は、しくじると、命に関わるやつ。
そういうやつに、チャレンジしましょう!

だって皆さん、そういうの、やったことないでしょ?

やったことがあるなら、日頃あんな発言や振る舞いをするわけがないですから。

ラグビーやサッカーじゃダメなのかって? 

もちろんダメですよ。野球やテニスもダメですね。あれは、どんなにひどい失敗しても、遭難死はしないですから。基本、命には関わらない。

そんなスポーツじゃ、わからないんです。大事なことが。

だから、連れて行きたいんです。

装備ですか?

出来るだけ事故は起きないように準備するんで、テキトーでいいです。事故は起きないはずですから。ガイドのわたしを信じてください。

でもね、だからと言って、カッパも持たずに来たら、バカか、って言われますよ。

お前、リスクマネジメントの意味、全くわかってないねってね。

登山を楽しむ人は、それがどんなに気軽な山でも、万が一のことを考えるんですよ。
どんなに天気が良さそうでも、万が一雨が降ったらどうしようかって考えて、カッパは忘れない。

少しハードな行程で、何かあったら夜になりそうなら、ヘッ電(懐中電灯)やツェルト(簡易テント)を持っていく。
夏だって、最低限の防寒着は忘れない。場合によっては、緊急食もね。

事故が起きないように細心の計画を立てたとしても、もしもに備えて、行動計画書を地元の警察に届けていく。

なぜかって?

万が一にしか事故は起きなくても、それは、いつか必ず起きるから。そのために、一見、不必要な装備も持っていく。

それが、リスクマネジメント。

もちろん、事故が起きない努力は最大限しますよ。でもその上で事故が起きた時の準備をするのが、命に関わるスポーツをする人の鉄則。

それをしなければ、ただの命知らずのバカ。

ヨットだってスカイダイビングだって同じこと。
基本、事故は起きないように努力するけど、それよりも遥かに大事な振る舞いとして、事故が起きた時にどうするかを、あらかじめ考えて準備する。
ライフジャケットだって、海に落ちなきゃ、ただ嵩高いだけの、邪魔なベストにすぎないわけですから。でも、みんな着てる。万が一に備えて。

総理は、こうした危険を伴うスポーツや遊びの専門誌、読んだことがありますか?

事故が起きないためのハウツー記事は当たり前。でもそれ以上に、事故が起きた時にどうするか、そのためにどういう装備をして、どういう対策をするか、事細かに解説している。しつこいほどにね。

当然、起きうる事故のパターンや可能性も、これでもかっていうくらい検証している。ここが大事。

うまくいくように努めるけど、うまくいかない可能性をつぶさに予測して、起きた時にどうするかを、一つ一つ考えておく。

じゃなきゃ、万が一の時に死んじゃいますからね。

でね。

コロナ対策や、オリンピック開催、はたまた原発の再稼働だって同じこと。

これも、人の命に関わる話ですよね?
うまくいかなかったら、人が死ぬ。しかも、たくさんの人が。

ならばうまくいくように努力するのは当然です。でも、それを100%にするのは、論理的にも現実的にも不可能。

だからこそ、大事なのは、うまくいかない場合のシミュレーション。考えうる限り、そのバリエーションをテーブルに乗せ、しっかりと検討し、最善の対策を打っておくこと。

それができて初めて「大丈夫かもしれない」となる。

それもしないで、「事故が起きないように最大限の努力をしている」と言っても、それはリスクマネジメントでもなんでもなくて、ただの蛮勇。ただのバカ。いつか、死にます。

ま、総理がどうしてもやりたいって言うんだったら、やってもいいですよ。

でも、死にそうになってから「想定外」って言っても手遅れですからね。想定することをサボっていたあなたたちが悪い。

しかも、そんなことに国民を巻き込まないで欲しいんです。

コロナ対策もオリンピックも原発も、うまくいく努力だけじゃなくって、うまくいかない可能性をしっかり検討して、対策を考えて欲しい。

そして、それをみんなにしっかり知らせる。それができていれば、それこそが「信頼」につながるわけで。

5月28日の夜の記者会見で、総理は言いましたよね。

「安全安心な大会を目指して取り組みを行いたい。そのために万全の努力をする」

違うんです。そんなのは言わずもがな。
今、必要なのは、

「安全安心な大会を目指して取り組みを行いたい。発生が予測される事故にも、充分対応できる対策をする」

なんです。

そこが大事。
それがリスクマネジメント。

また総理は、同じ会見で、

「オリンピック開催に、不安や懸念があることは存じている」

とも言いました。
でもこれも、少し勘違い。

不安や懸念は、「オリンピック開催」にではなく、それを進めている「あなたたち」に対してなんですから。

多分、あなたたちは誰一人として、命に関わるスポーツをしたことがないのでしょう。

それをしたことがあるなら、大人でも子供でもプロでもアマチュアでも、全ての人は、身に染みているはずですから。

どんなに注意をしていても、どんなに対策をしていても、いつか事故は起きる。その時のための準備こそ、命を守ると。

さ、総理。

今週末、山に行きましょう。
天気予報はバッチリ晴れマーク。

でもね、せめてカッパくらいは準備してきてくださいね。



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