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【奈良クラブ通信】“代弁者”鈴木大誠が生駒山ダービーで得た手ごたえと「次」への想い

GAME REVIEW

 ホーム開催のJ3リーグ第14節FC岐阜戦、天皇杯1回戦・京産大戦を2連勝で終えた奈良クラブは6月2日、敵地・花園ラグビー場でFC大阪と「生駒山ダービー」に挑んだ。奈良クラブは前半、FC大阪の強度の高いプレスの前にボールを前に運べず、なかなかペースをつかむことが出来ない展開に。一方のFC大阪もゴール前まではボールを持ち込むが、DFリーダーの鈴木大誠やGK岡田慎司を中心に集中力の高いディフェンスを前にゴールを割らせない。奈良は前半20分に嫁阪翔太が左CKを頭で合わせて一度はネットを揺らしたものの、ノーゴール判定に。後半はお互いにチャンスを作りながらも決めきれず、スコアレスドローに終わった。

PICK UP PLAYER 鈴木大誠

「久しぶりのクリーンシート(試合の最後まで失点をしないこと)?確かにそうですね。全く意識してなかったです」

 リーグ戦では第5節の八戸戦以来、実に10試合ぶりとなるクリーンシートを達成した守備陣をけん引した鈴木大誠は、充実感と悔しさの混ざった表情で「生駒山ダービー」を振り返った。

「内容どうこうではなく、ダービーに臨むにあたって、勝たないといけなかった。今日は結果が欲しかったんで、そこに関しては足りない」

と、悔しさの理由を明かしたが、それでも一時は試合終了間際の失点が相次ぎ、勝ち点を失っていただけに、ディフェンス面での手ごたえは徐々に感じつつある。特に本人が口にしたのがセットプレーでの守備についてだ。

「選手間の繋がりというか、それぞれが自分にどういう役割が与えられるかというのが明確になって、連携がスムーズになってきた。それぞれに与えられた役割を実行できた上で、それにプラスしてイレギュラーが起きた時に誰かが反応できるオーガナイズが、練習を重ねる中で出来るようになってきた」

 シーズン当初からセットプレー時の役割自体は与えられていたものの、それぞれがうまく機能させきれず、ここまで総失点数21のうち7つのゴールをセットプレーから奪われていた。

「実は去年からセットプレーが強いとは思っていなくて、今年ここまでセットプレーで勝ち点を落とす試合が増えたので、改めてクローズアップして取り組まないといけないとなったのが結果的にはいい方向に転がっているなと思います」

 チーム全体の共通認識として「セットプレーの質改善」に取り組んできたことが、ここにきてクリーンシート達成へと繋がった。DFリーダーの手ごたえに呼応するように、指揮官も試合後会見で、「選手たちにはいつも我々の質を持ってすればセットプレーがよりよいものになると伝えているが、今日の試合でもセットプレーの堅さはみせることが出来た」と満足気に振り返った。

 守備面に明るい兆しが見え始めた一方で「生駒山ダービー」での引き分けには一切満足していない。その悔しさの奥底には、奈良県出身者として、また何よりサポーターの熱い思いを背負う代弁者としてのスタンスが見え隠れする。

「どれだけ僕が頑張ってもダービーへの想いは長い年月をかけてきたサポーターの方々には勝てない。もちろん僕も奈良県出身者なので(大阪のクラブとの)試合への想いは他の選手よりもあるとは思いますけど、自分より長い歴史や深い思いがある人があのスタンドの中には何人もいると思うので。もし自分のモチベーションが足りないなと思ったらスタンドを見て奮い立たせようとは思っていました」

 この日も多数のサポーターが生駒山を超えて、アウェイ花園に駆け付けた。だからこそ勝てなかった悔しさが何よりもあふれ出た。そんな鈴木に、ホームでのダービー戦でのリベンジについて問うと、単なる試合の勝ち負けを超えたライバルに対する矜持を滲ませた。

「(開幕直前に行われた)プレシーズンマッチでも散々な負け方をしているのもある。リーグの順位的にも大阪と渡り合える位置ではないので、まずはリーグの中で上位と渡り合えるような位置につけた上で、ホームでのダービーを迎えないといけないと思っている。そうじゃないと自分たちが目指しているものには届かないし、プレシーズンや今日の借りを返すとは言えない」

このファン・サポーターに寄り添うような共感性の高さが、彼が奈良クラブサポーターから愛される由縁なのだろう。

「今日を受けて次勝とうではなく、次のホームのダービー戦をどういう立ち位置で迎えるかというのを大事にしたいと思います」

と、締めくくった鈴木。ホームでの「生駒山ダービー」は10月13日。その時に高みで争える位置につけることが、その先のJ2昇格争いにもつながっていく。悔しさもサポーターの想いもモチベーションに変えて、DFリーダーのの奮闘は続いていく。

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画像提供:株式会社 奈良クラブ

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