【奈良クラブ通信】激闘の手ごたえ、顎の怪我、父の足跡、南米の友… 伝統のカシマで都並優太が得たもの
PICK UP PLAYER 都並優太
「天皇杯というのはこういうものだという感じですね」
奈良クラブの最年長で、何度もJ1クラブとの対戦を経験してきた都並優太は、12日の天皇杯二回戦・鹿島戦後に苦笑しながら振り返った。関西大時代にはガンバ大阪やセレッソ大阪、長野在籍時には名古屋、FC東京などと対戦してきたベテランの言葉は様々な示唆に富んでいる。
11人を入れ替えて格上のJ1クラブに臨んだ試合では、普段のボールを保持するスタイルではなく守備ブロックをしっかり敷いて、相手の攻撃を受ける戦い方を選んだ。
「相手の方が上だという現状を認識して、その上で合理的な戦い方を踏んだ。そういう意味ではいい場面もあったし前半1-1で終えたのは良かった。後半の早い時間の失点がなければジャイアントキリングの可能性もあったと思う」
試合中には鹿島・関川郁万と競り合った際に顎の下を負傷。顔にテーピングをぐるぐる巻いた状態でミックスゾーンに現れた都並は、満足感と後悔が入り混じった顔で狙いを説明した。その奥には、0-6で敗れたルヴァンカップ・広島戦の反省もあった。
「(広島戦と)同じ轍は踏めないと思って、違った準備の仕方をしたし、メンタリティ的にもああいう展開(最後に守備が崩れ大量失点)にならないように意識した。足りなかった部分もあるけど、最低限チーム一丸となって戦えたとは思います」
J1との対戦経験が豊富な都並の中でも、鹿島は特別なクラブの一つ。Jリーグ黎明期から、自身が幼少期を過ごした東京ヴェルディのライバルクラブであり、父の元日本代表・敏史さんが何度も激闘を繰り広げた相手である。
「僕の父親も試合をしたことがある、この伝統のあるスタジアムでプレーできるというのはめちゃくちゃ感慨深かった」
と語った上で、J1で2位につける強豪・鹿島の印象と自分たちの立ち位置を冷静に振り返った。
「経験値の高い選手もいるし、能力の高い選手もいる中で、すごいアグレッシブなチーム。こっちの動きに対して色んな引き出しをもっているし、そこをついてくるスピードやパワー、抜け目のなさも伝統のある鹿島っぽい色を感じました。ただエリア内では失点シーン以外はしっかり守れたという印象もあるので、これをリーグ戦に繋げれるかは自分達次第かなと思います」
昨季はリーグ戦26試合に出場したが、今季はここまで5試合の出場に留まりそのすべてが途中出場となっている。自身のおかれる現状にはもどかしい気持ちもあるはずだが、副キャプテンとしてチーム全体の事を考えながら、続けた。
「チームの戦力アップには今日のようなメンバーがスタメンに割って入るようなパフォーマンスを見せないといけない。個人個人が格上相手のプレッシャーのかかるゲームで何ができたか、それぞれ反省材料があると思うんで。それをいかに活かせるか。もう一度日々のトレーニングから見つめなおしていきたいです」
とはいえベテランになっても、その「お祭り男」ぶりに変わりはない。試合中プレーが切れたシーンでは、鹿島のブラジル人MFギリェルメ パレジと談笑。
「彼の息子が僕を見た時にアルゼンチン人みたいだと言っていたというような話をしました。ポルトガル語だったんで、正確かわからないですけど結構やりあってたんでそこは謝りつつで。南米の同じ匂いを感じました」
と、笑顔で振り返った。サッカーの名門一家に生まれ、本人も根っからのサッカー好き。J1との対戦で、久々の90分フル出場はやはり充実感があったようだ。普段はあまり語らないキャリアに関する発言も飛び出した。
「歴史あるチームの鹿島さんと、こういう伝統のある天皇杯という大会で戦えたことがすごい嬉しいですし、本当にサッカーを続けていて良かったなと。個人的なキャリアで言うと、ここまで頑張って続けてきたからこそ、このピッチに立てた。継続してできることを続けて、長く現役ができたらいいなと思います」
役割は変わっても、ピッチの内外で「南米仕込みのお祭り男」がクラブに与える影響は大きい。伝統ある鹿島との一戦を転機に、ここからいかにスタメン争いに加わってくるのか。リーグ後半戦に向け、都並優太から目が離せない。
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