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【Doctor Tのスポーツ医学】イギリスで学んだスポーツ医学③スポーツ大会の管理

 こんにちは、Doctor Tです。イギリスで学んだスポーツ医学第3弾、スポーツイベント医学をご紹介します。

 スポーツイベントの医学と聞いてイメージが湧きますか?

 医学というと、ケガをした人、病気になった人を医療機関で診るという事以外なかなか想像しにくいかもしれません。それ以外にこんなにやることがあるのです!というのを今回は紹介したいと思います。

 スポーツイベント医学では、傷病者のケアだけではなく、そのイベント自体を安全に催行するための準備も考えます。

イベントは事故の「予防」と「準備」が肝!

 ここでは、私がUCL在学中に勉強したハーフマラソン大会について医師の役割の一部を説明します。医療チームとしての仕事は大会前から始まり、この準備が大会成功の可否を決めると言っても過言ではないかもしれません。事故が起きてから焦って対応するのではなく、「予防」と「準備」が重要です。

①医療資源の配置「準備」

 コースのレイアウトや気候、これまでの実績でどのくらいの人がコースのどの地点で救護を必要としたかを調査します。限られた医療資源(人もの)を満遍なく配置するのではなく、より効果的に配置する必要があります。

大会当日の気温やコースの難易度、周囲の救急受け入れ可能な病院の場所とコースの関係などを調べて必要なひと、物を適切な位置に配置する。
参加者の数やレベルもリスクを評価する要素になります。
それによって起きやすいケガ・病気やアクシデントを予想して準備するからです。

 ここで強調したいのがデータの重要性です。競技によっては国際的に大会運営のガイドラインがあるのでそれも参考にします。初回は他の似たような大会を参考にするしかありませんが、その大会での記録はその次の大会開催の準備でとても参考になるのです。

②参加者への医学的アドバイスを発信「予防」

 以下のようなことを発信して参加者個人が自分の体調に応じた走りをすることで事故が予防できます。アドバイスの内容の例を挙げます。

運動前の体調管理 
 マラソン大会の参加を決める前に、自分の健康状態を医師に確認してもらい、自分の力に応じた走りをすることをお勧めします。特に心筋梗塞など心臓の病気を持っている人、糖尿病の人など心臓発作を起こすリスクが高い人はかかりつけ医に相談しましょう。

 その情報があれば、主催者側としてもハイリスクの方を識別できるようなシステムを持ち、もしもの時の対応に役立ちます。

大会までのコンディションを整える(練習) 
 現代人は運動不足の人が多く、日常生活を送っていていきなりハーフマラソンを走って大丈夫だという人はほとんどいません。計画的に練習し、大会に臨みましょう。こちらのウェブサイトにどのようにトレーニングしたら良いかが書いてあります。英語ですが、翻訳ソフトを使って読むことをお勧めします。

 また、当日体調が悪い時は勇気を出して欠場することも大切です。無理をして走った結果、救護室にやってくるランナーをたくさん見てきました。

③スタッフの体調管理や万一の事件にも備える「準備」

 このほかにも、救急車が必要になった時の搬送ルートを考える、スタッフの健康・安全も守るシステムを作る、テロや地震などの事件が起きた時の対応を考えておくなど、負傷した参加者のケア以外の仕事がたくさんあります。

 より安全で楽しい大会になるように主催者、参加者共にしっかり準備をしていきましょう!

まとめ

  1. スポーツ大会成功の鍵は「予防」と「準備」

  2. 事故は起きない方が良い→予防

  3. 事故が起きた時に素早く対応→準備

  4. 医療の対象は参加者以外にスタッフや観客も含まれることがある。

  5. 安全な大会の達成には主催者だけではなく参加者の協力も不可欠です!

追記
 このようにイベントをサポートするのは簡単なことではありません。しかし、日本の現状では、こういった医師がボランティアに近い形で活動しています。また、会場での医療に対して法的保護がない現状もあります。これらの改善は巡り巡って参加者の安全につながるのでぜひ改善していくと良いなと思います。



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