【本田圭佑の強さ】「成長の先に成功がある」スポーツメンタルコーチ鈴木颯人が紐解く海外アスリートの強さの秘密

現代の日本サッカー界で新しいアスリート像を確立し、スポーツ界だけではなくビジネス界でもその名を聞くことが多くなったプロサッカー選手の本田圭佑選手

アスリートとしては日本代表で長年チームを引っ張り、日本人及びアジア人としてW杯最年長得点者や、アジア人初となるW杯3大会連続アシストも達成しました。2013年には世界最高峰リーグの一つであるセリエAのACミランに移籍しエースナンバーを付けプレー。これらの実績は当時では日本人初の快挙でした。

またビジネスマンの顔としては2012年からサッカースクール「SOLTILO FAMILIA」を始め、現在は投資業を中心に様々なビジネスを展開しグループ会社を7社に広げており、現役アスリートでビジネスマンでもありながらも監督や指導者の側面を持つ選手です。

今回はアスリートとしてだけではなく様々な世界で大活躍している本田選手の強さの秘訣についてスポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんと紐解いて行きます。

対談者プロフィール

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・鈴木颯人 ~スポーツメンタルコーチ~ 
1983年、イギリス生まれの東京育ち。一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会代表理事。サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球、BMXレーシングなど、競技・プロアマ・有名無名を問わず、多くのアスリートのモチベーションを引き出すコーチングを行っている。

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・畠山大樹 ~BMXレーシング元日本代表~
1992年、神奈川県寒川町出身。株式会社Winspired代表取締役社長。学生時代にBMXレーシングにて日本代表経験あり。BMXレーシングとマウンテンバイク4Xの競技経験を活かし、現在はアクションスポーツ業界の発展のため、アスリートマネジメントを始め、翻訳・通訳、スポーツライター、BMXスクール運営を多岐にわたり行っている。実妹がBMXプロレーサーの畠山紗英。

スポーツメンタルコーチが思う本田選手の印象

畠山) 最初の質問ですが、僕は本田選手が自身のことを「才能があるわけでもなければプレーが上手い選手ではない。」と分析されていて、その意識があるからこそ「努力をずっと大事にしてサッカーに取り組んできていた。」と仰っていて意外だなと感じたのですが、鈴木さんは本田選手にどういう印象を持っていますか?

鈴木) 世間一般的に見られている本田選手と、アスリート同士から見えている本田選手、またビジネスの世界での本田選手はおそらくそれぞれ異なった見られ方をしていると思います。
その中で色んな面を踏まえてトータル的に本田選手を見ると「前例があることはやらない」という選手なのかなと感じます。

畠山) ビジネスをやりながら現役でプレーする人はそうそういないですし、まさに前例があることはやらない人だと僕も思います。

鈴木) 本田選手は前回取り上げた長谷部選手とはまた違ったキャプテン心を兼ね備えた選手ですよ。時事ネタを挟みますが、一歩間違えれば新庄剛志さんみたいな「ビックボス」になるような方だと思います。本田選手の性格が「俺について来い」って感じですから。

畠山) 確かにそういう雰囲気は感じますし、ビックボスに向いてると思います。

鈴木) でも最近の日本人はああいうビックボスがいてくれた方が楽だと思うんですよ。自分で考えて行動することも大事なんですが、全員がそれをするようになると組織はまとまりにくくなります。

ですから彼らのような強烈なキャプテン心を持っている人がいた方が日本にとっては有益だと思います。そういう意味では本田選手の存在は日本にとってサッカー界としてもビジネス界としても大きな財産ですよね。

あ、私が本田選手とNOW VOICEで一緒にお仕事しているから贔屓目に言っているわけではないですよ(笑)

畠山) 分かりました(笑) 本田選手も自分のことはどんどん発信されますから、どんな活動をされているか比較的分かりやすいですし、他のアスリートにとって参考にしやすい選手でもあるので先陣切って色んな人に影響を与えていって欲しいです。

夢を叶えるために自分を追い込む

畠山) 特に本田選手の発信や考え方の中でも「努力」とか「継続が大事」っていうことが、既に分かっている事ではありますけど改めて大切な考え方だなと感じます。

鈴木)  本当にその通りだと思いますよ。

畠山) 特に努力や継続ができるのはアスリートが持つ強みだと思いますし、一般の方と比較した時にスポーツだけに限らずいろんな分野でも成功のベクトルとか自分を追い込める能力は並外れた精神力だと思います。その中でも特に本田選手はその能力が長けていますよね。

鈴木) 普通は彼ほど追い込めないですよ。単純にしんどいことですし、できれば自分のことを追い込みたくないって思うのが普通です。

畠山) 必要がなければ自分を追い込まずに楽したくなりますから、常に追い込める本田選手は普通じゃないですね。

鈴木) だからこそ本田選手の凄さが目立つということもありますが、やっぱり自分を追い込み続ける能力があるのは凄いと思います。しかも加えて自分にプレッシャーをどんどん与えていますからなかなか真似できる事ではないですよ。

畠山) プレッシャーの掛け方についても、彼の「ビックマウス」が度々話題になりますがそうやって他人を巻き込んでそのプレッシャーを更に大きくして自分にかけていくことが本当に凄いと思います。

鈴木) こういうことって言い過ぎると撤回できなくなるのでとても精神的にも厳しい状態になりやすいです。その中でも言ったことをしっかりやり遂げるアスリートたちは自分の中に「撤回」の二文字はないんでしょう。常に自分たちを高めていく方法を理解しているからこそこういう言動ができているんだろうなと思います。

畠山) 特に今の本田選手はアスリートだけではなくビジネスマンである「本田圭佑」という人物やこういう生き方もあるということを知ってもらうために発信や活動をされているんだなと感じます。

鈴木) そのうち政治家でもやるんじゃないかなって私は思っていますよ(笑)

畠山) 確かに政治家向いてそうです(笑)

鈴木) 彼は日本を良くしていきたいという気概があるので、ここまで来たらやってほしいという思いがあります。

畠山) 一方で本田選手はずっと海外でプレーしてきて、その中で世界最高峰リーグのセリエAではACミランで10番付けるまでに世界のトップレベルに登り詰めた経験がある選手ですが、幼少の時からその夢は持っていて卒業文集にも「セリエAで活躍する僕」っていう言葉を文中に綴っていたりと、前回の堀米選手と同様ですがその年齢から明確な夢があってそれを実現させる力って本当に凄いと思います。

鈴木) どうしてACミランで10番つけるところまでに自分を追い込んで達成できたのかはもはや不思議です。本当凄いことですよ。

畠山) 本田選手は我々が想像できないことを人生の夢として描いているんだと思います。そうでもないとセリエAでプレーすることもそうですがその規模の夢を達成することってなかなかできないと思います。「サッカーは人生のウォーミングアップ」という発言されているくらいなので相当大きな夢を持っているんでしょう。

自分自身を正しく理解する能力

鈴木) 本田選手のその軌跡の中できっと中田英寿さんのことも好きで彼から影響を受けていることもあると思います。以前対談もされていましたし。

畠山) 確かにロールモデルとしては本田選手と中田さんは新旧な感じがします。

鈴木) はい。そういう意味では中田さんを成功事例として参考にして活動していることもあるんじゃないかなと思います。中田さんもスポーツ以外にも多方面に活動されているとても凄い方ですし。
その中で本田選手と中田さんを見ていて思う点ですが、2人ともとても自分の「色」を持っているなと感じます。

畠山) 自分を表す軸になるような何にも交わらない色ということですね。

鈴木) はい。自分のことをよく分かっているのでその色が出せるんです。

畠山)トップアスリートに共通する点だと思いますが、自己理解がしっかりできている人ほど自分に何が必要なのかをよく分かっていますし、自分がより良くなるための学ぶ力も持ち合わせていると思います。
特に本田選手は「成功よりも成長を意識している。」ということも話されているので成長するために色んなことを学んで吸収される姿勢は尋常じゃないものがあると思います。

鈴木)  本田選手は何か一つを極めるのではなく色んなことをやられていますよね。彼はサッカープレイヤーですが、教育者にもなりたいし、投資家や指導者でもありたいという本当に色んなことに興味があって色んなことをしたい人なんですよ。

畠山) これだけ色んなことを手広く挑戦して更に形にできている理由として、アスリート一本でやっていた頃に他の選手以上に自分が劣っている部分をしっかり理解できていたからこそ相当な努力をされていて、その努力が今でも活かされていると感じます。

僕は本田選手を見ていると、アスリートとしての努力はもちろんスポーツで結果を出すためにする事ではありますが、大きな視野で見るとやっぱりスポーツ以外の側面でも凄い活かされるものだなと改めて感じます。

鈴木) その通りだと思います。

畠山) 最近はアスリート引退後の生活とか活動に不安を持つ選手も多くいますが、自分たちがアスリートとして取り組んできたことや培った考え方をスポーツの分野以外でも活かすことができると知って欲しいですし、まさにその成功事例として本田選手がいるということも大きな意味があると思います。

上手な時間の使い方を意識する

鈴木) そう言えば最近はサッカー選手の中では本田選手をモデルケースにした活動の仕方は増えていますね。

畠山) 本田選手と中田さんが先導されてやられていますし、やっぱりサッカーという同じスポーツの境遇からイメージがつきやすく取り組みやすいのでしょうか?

鈴木) それももちろん大きな理由ではありますが、サッカー選手って他のアスリートよりも比較的に時間が作りやすいんですよ。プロ野球選手で同じような取り組みをしている人いないですから。

畠山) そうなんですね。どうしてサッカー選手は時間が作れるのでしょうか?練習時間の関係でしょうか?

鈴木) はい。もちろんケアの時間が必要だからということもありますが、練習時間が全体的に短いです。私がコーチングしているサッカー選手も午前練だけで終わります。試合の次の日は大体オフになりますし。ただその分試合の数が多いということもありますが、試合時間も2時間以上になることは滅多にないです。

畠山) ただ試合や練習時間が短いとはいえその限られたプレー時間の中での身体的な負担は凄いですし、しっかり休まないといけないという環境の中で休む時間を作ることで同時に他のことができる時間が作れるということになるんですね。

鈴木) それでもその限られた時間を他のことに使うかどうかは選手次第なので、そういう意味では本田選手は時間の使い方がとても上手なんですよ。
ビジネス面でいうと既に彼のグループ企業だけで7社あります。資金的な面もあるかもしれませんが、時間と人の使い方が上手くないとここまで展開するのは難しいと思います。

畠山) スクール事業も全国で70箇所以上展開しているという話ですから、本当に上手くマネジメントしないとここまで拡大するのは難しいですよね。

鈴木) それでいて彼はまだ35歳ですから本当に時間の使い方が上手すぎますよ。

畠山) まだ現役でアスリートをしながらこれだけやれていることが凄いです。

鈴木)  彼の親族の方も経営に携わっていらっしゃるようなので、おそらく全部自分でやっている訳ではなさそうですがそれでも凄いことです。

畠山) 今までの話から本田選手の性格上ある程度自分がハンドリングできないと嫌なタイプだと思うので、各事業や経営についての知識はかなり付けていると思います。
それを元々サッカーしかやってこなかったところから、競技をしながら空いた時間でゼロから知識をつけることは相当時間を必要としたでしょうし、その中でビジネスをここまで大きくしてきたというのは本当に時間と人の使い方が上手いんだなと感じます。

鈴木) あと想像力もとても豊かな人なんだと思います。自分がやりたいことを想像してそのビジョンをしっかり相手に伝えるには相手にも想像される必要があるので、自身の想像力が必要ですしその能力が長けているからここまでビジネスを大きくできているんだと思います。

畠山) その能力があるから本田選手と一緒にビジネスしたいとか働きたいと思ってこれだけたくさんの人が付いて来ているんですよね。人を惹きつける力も長けているんだと感じます。

本田選手が親族から受けた影響

鈴木) ちなみに彼の叔父がかなり変わった人みたいですよ。こういう人の存在って大きいと思います。

畠山) 家族とか親族の存在は確かに大きいと思います。幼少期は一番親の影響を受けますし、ある程度人間の性格は幼少期に作られると思うのでその時期に親からどういう影響を受けるかでその後の人格形成にも影響しますよね。本田選手が小学校の卒業文集であそこまで明確な夢を語れたのはご家族の影響もあると思います。

鈴木) 叔父の大三郎さんは「人生に引退はない」って言うような人ですから本田選手も影響を受けていると思います。

畠山) 本田選手が大切にしている「努力」について、大三郎さんも話していて「努力をしていない人間には、運も何も語れない。そして待ちに待った出番がくれば、そこで全力を出し、やってのける。それが本田家の血筋」って言っているくらいなので本田選手も考え方の面はかなり影響を受けているはずですね。凄いのは本田選手だけではなかったんですか(笑)

鈴木) そういうことなんですよ。家族の影響って大きいんです。
一方で大三郎さんは本田選手はメンタルは弱く臆病だったとも話しています。

逆境を乗り越えると精神が強くなる

畠山) 前回のダルビッシュ選手もそうですが、メンタルが強いと言われるアスリートほど昔からずっとメンタルが強かった訳ではなく、メンタル的な挫折とか弱さを経験している選手が多いイメージがあります。

鈴木) 心理学用語で「レジリエンス」っていう言葉があって精神的回復能力というものなんですが、逆境を乗り越えた経験のある人ほど精神的に強くなって心が折れにくくなるんです。

畠山) 逆境を乗り越えるということですか。

鈴木) はい。本田選手は幼少期に両親の離婚を経験したり、怪我の面でも半月板を損傷してアスリート人生をも危ぶまれた時期もあったり、ユースに上がるときも上がれなかったという辛い思いをたくさんしています。そんな辛い経験を乗り越えて成功できたということが本田選手の強みですし、考え方も「上手くいかない」ではなくて「上手くいくまでやればいい」という感じなんだと思います。

畠山) 確かに本田選手はそういうイメージあります。そういう意味では現状辛い思いとか葛藤しているアスリートの方ってたくさんいると思うんですけど、その現状を乗り越えられればメンタル的にも強くなるきっかけになるということですよね。

鈴木) はい。間違いないです。

畠山) 今起きている状況というものがネガティブな側面だけではないと理解できると活動の励みになると思いますし、実際にそれを乗り越えた選手がいるというのが他のアスリートにも良い影響を与えると思います。

鈴木) だからこそ本田選手はみんなに応援される選手なんだと思います。共感できるところもあれば、自分も本田選手のように困難を乗り越えて夢を叶えたいという思いもあるでしょうし、実際にACミランで10番をつけるなんて本当に夢みたいに凄いことですから。

畠山) 本当にその通りですよね。

鈴木) ただ誰しもが彼と同じ夢の描き方をする必要は無いと思います。基本的に人の真似をして成功することは難しいことですし、私も本田選手のやり方をそのまま真似して失敗している人は今まで何人も見ています。普段から饒舌じゃないのに突然ビックマウスになるなんて辞めましょうね(笑)

畠山) そこまで真似る人がいるんですね(笑) 大事なことは本田選手の成功事例を参考にしながらも自分たちに合った方法を見つけて確立し、夢を叶えるために努力するということですね。

鈴木) そういうことです。

畠山) その努力の中で何度も困難に直面することがあるかと思いますが一つ一つ乗り越え成長することで夢を叶えることや成功に近づいていくと思いますし、その困難をたくさん乗り越えて来た結果を形にした例の一つが今回の本田選手なんだと思います。

鈴木) はい。とてもアスリートにとって貴重な成功事例を作った選手の1人なので、参考にしてもらえたらと思います。

畠山) 本田選手のようにスポーツだけではなく多方面に活躍できるアスリートがもっと増えることを願って僕も活動して行きたいと思います。鈴木さん本日もお時間ありがとうございました。

鈴木) ありがとうございました。

最後に

今回はアスリートとして世界で活躍しながらビジネスマンなどとしても多方面で活動されている本田圭佑選手についてスポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんとメンタル面を主に深掘って考察してきた。

彼の活動の中で大切にしている考え方で特に重要視されていた点が、「成長を意識すること」「努力」についてだ。本田選手が自分を困難の中でも追い込み続けられる理由は自分自身の弱さや信念にしていることを含め自分をしっかり正しく理解していて、夢に向かって常に成功より先に成長に対してフォーカスしていること。なぜならその成長の中で成功が手に入ると考えているからだ。

昨今、アスリートのセカンドキャリアやデュアルキャリアが話題となっているが、是非本田選手の活動を参考にアスリートの皆様がスポーツ以外の分野についても自身が培ってきた経験や努力できる能力を発揮し、自分流を確立し新たな分野での挑戦と成功を掴むことができることを心から祈っている。

Text and Interview by 畠山 大樹

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・鈴木颯人
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