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舟は船頭に


自分のサイトにオリジナルのキャラクターが欲しくなって、いざ、と挑んだことがありました。何度も何度も書き直しながら、時間をかけて一生懸命描いた。でもやっぱりなんていうか、圧倒的な下手さ加減なわけです。これではちょっと、ということで絵の仕事をしている友人に依頼することに。そしたらもうびっくり。プロは本当に凄いですね。なんでこんなに上手く描けるんだろうって、それはもう宇宙人を見るような驚きです。



”舟は船頭に任せよ” そんな言葉があります。何事もその道の専門家に任せると上手くいく。苦手なことを苦労してやるのも、それはそれで別にいいんですけど、やっぱり専門家には到底及ばないわけで。専門家はこちらが難しそうに見えることでも、いとも簡単に出来てしまう。しかも驚くほど上手に。

実はこれ、運動も同じなんです。カラダは身体を動かす専門家です。だから運動はカラダに任せるに限る。カラダはどんな動きだっていとも簡単にできてしまう。たとえあなたが運動が苦手だと思っていたとしても、そんなこととは関係なくカラダは運動が得意なんです。



本当なんですよ。唐突ですが、皆さんは生まれてから何年ほど経ちましたか。10年、20年、もう少し経ってますか。でもいい大人だってせいぜい数十年、長くたって百年です。ところが、カラダは私たちと同い年ではありません。私たちが、顔やら、体格やら、性格やら、その他もろもろ両親に似ているのは、両親からDNAを受け継いでいるからです。そこには、両親が経験してきたカラダの情報が蓄積されている。そして両親は祖父母から受け継いでいて、さらに祖父母は・・・。

そうやって時計の針を巻き戻してみる。すると、カラダは生命の誕生まで繋がっていきます。獲物を追っかけては、逃げる。逃げては追っかける。登って降りて、跳んで跳ねて潜っていく。そんな様々な体験を経て、ようやくここまでたどり着いた。悠久の時を駆け抜けてきたカラダが、全ての経験を蓄えて、今ここにあるわけです。



カラダはすべてを知っています。どうやって動けばいいかわかっている。ではなぜ、私たちは上手に動けないのか。それは、私たちがカラダの邪魔をしてしまうからです。カラダは運動が得意なのに、私たちはわざわざ余計な指示を出してしまう。何十億年の経験が蓄積されたカラダに、ぽっと出の私たちが ”ああ動け、こう動け” と、でしゃばってしまう。でもね、カラダはとても優しいんです。どんなに変な指示でも素直に従ってくれます。その結果、へんてこで、ぎこちなく、とんちんかんな動きとなるわけです。

私たちはついつい、カラダをコントロールしようとしてしまう。でもカラダにしてみたら、それはストレスなんです。「こっちに任せてくれれば、上手くできるのに」って。だからこちらが指示を出すのをやめると、カラダは水を得た魚のように、思う存分その能力を発揮してくれる。全てをまるっと、上手いこと進めてくれます。なんたって、生命誕生からの叡智が備わっているわけですから。



私たちが舟の上でジタバタすると、船頭さんは舟を操るのが難しくなる。それと同じように、私たちがあれこれ指示を出すと、カラダさんも身体を操るのが難しくなる。だから私たちは、ただゴロンとしている。身体を動かすことはカラダさんに任せて、ゆったりくつろぐ。すると船頭さんが軽やかに舟を操り川の難所をクリアしてくように、カラダさんもどんな動きでも軽やかにこなしてくれます。



耳をすまませば、聞こえてくるんですよ。カラダの声が。

「ね、上手くいったでしょ」って。


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