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盗塁阻止率と肩の強さは必ずしも比例しない!?大事なのは捕手より投手・・・

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2019年度のセパ両リーグにおける盗塁阻止率をまとめたのが以上の図だ。ジャイアンツの小林誠司選手や、甲斐キャノンで話題となったホークスの甲斐拓也選手は肩が強い捕手として有名だろう。また、元選手会長でヤクルトで長年プレーした古田敦也捕手は年間盗塁阻止率.644と、歴代最高記録を保持している。

プロ野球において、キャッチャーを評価する指標の一つが”盗塁阻止率”。盗塁阻止率が高い捕手は肩が強いと評価する人も多いだろう。しかし、この盗塁阻止率の高さと肩の強さは必ずしも比例しないのだ。今回は盗塁阻止における捕手の役割を掘り下げていく。

盗塁阻止の内訳。実は捕手の貢献は少ない?

まず初めに、盗塁阻止までに発生する投手と捕手の動きを確認しよう。

①クイックタイム(投手のモーション開始からボールのリリースまで)

②投手のボールの速さ(リリースから捕手の捕球まで)

③捕手の捕ってからの速さ(捕球からリリースまで)

④捕手のボールの速さ(リリースから二塁手の捕球まで)

⑤二塁のタッチの速さ(二塁手の捕球からタッチまで)

この①〜⑤までにかかる時間が早ければ盗塁阻止率が高いということになる。ここで整理しておきたいのは、①〜⑤の中で投手が担う役割と、捕手の担う役割である。①、②は投手の役割であることは間違いない。続いて、③~⑤は主に捕手の役割だろう(③は投手、⑤は二塁手の役割も左右するが)

これだけでも、盗塁阻止の中で影響する捕手以外の力量が多いことは一目瞭然だ。さらに、この①〜⑤の動作の、盗塁阻止における影響度の強弱を日本の野球データ分析会社であるDELTAが発表している。

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以上の分析データでは、盗塁阻止率のおいて最も影響度が高いのは投手のクイックタイムであることが判明している。捕手の肩の強さが影響する④は全体の中で低く、二塁手の捕球&タッチ速度よりも低いことがわかる。

クイックの時間は1.30秒が最低限の理想であり、1.3秒よりも早いほど盗塁阻止率が高くなるということもわかっている。

また、②と③の、「球速」と「捕球から送球までの時間」は盗塁阻止にそこまで影響しないということも興味深いデータだ。

以上のデータを照らし合わせると、盗塁阻止率をあげるためには、「投手の早いクイック」と「二塁手が捕球&タッチしやすいように送球できる捕手のコントロール」が最も大事ということである。

まとめ

もちろん肩の強さが高ければ、多少クイックの時間が遅くても取り返すことができるため、盗塁阻止率は高くなることは間違いない。ただ、盗塁阻止率が高いだけで捕手を評価するのは安易かもしれない。

実際、千葉ロッテでプレーし、第一回WBCで日本代表としてマスクをかぶった里崎智也選手も、盗塁阻止について以下のように語っている。

どんなに肩が強かろうが、スローイングがうまかろうが、キャッチャーだけの力で「阻止率」を上げることは実質不可能である以上、それだけを取って、キャッチャーのよし悪しを評価することは、僕からすればナンセンスと言うほかない。