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2023年読んでよかった本


ジャンルごとにまとめました。☆☆☆☆が私にとって一番でした。


1.事典

日本図書館情報学会編『 図書館情報学事典 』丸善出版 , 2023.7
・ 執筆者に懐かしいお名前を見つけ頬がほころぶ。 図書館をテーマとする文学・映像作品の新項目は読みものとして愉しくて。色とりどりの缶入りクッキーを味わうように、昼休憩時少しずつ読み進めた。

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=304955


2.歴史(中国)

宮崎市定責任編集『中国のめざめ』中央公論新社, 2000.12
・東洋史を世界史の普遍的な展開のなかでとらえた研究は、日本の立ち位置を考えるうえで得がたい。辛亥革時代と、日本の同時代背景を対比した年表が秀逸。

3.児童書


junaida著『街どろぼう』福音館書店, 2021.7
・「みんなの中にいてもさびしい」描写がいい。
  人に求めない者が最後に得たもの。


4.図書の販売


佐藤友則, 島田潤一郎著『本屋で待つ』夏葉社, 2022.12
・複合化時代、スペシャリスト書店員が持つスキルは顧客をつかむ強みとなり、次世代を育てる。その姿にうなる。


5.死生観


シェリー・ケーガン著 ; 柴田裕之訳『「死」とは何か : イェール大学で23年連続の人気講義』文響社, 2018.10 【たまに早起き読書会:課題本】
・第6講 死が教える「人生の価値」の測り方を、エリクソン7つの心理社会的段階と紐づけて考える機会となった。
 ・ピーター・ボクスオール編『世界の小説大百科 : 死ぬまでに読むべき1001冊の本』柊風舎, 2013.10 【派生して読みたい本】


6.哲学

中井久夫 [著]『家族の深淵』みすず書房, 1995.9 【100分de名著「中井久夫スペシャル」派生本として】

7.科学技術・脳

毛内拡著『面白くて眠れなくなる脳科学』 PHPエディターズ・グループ , 2022.8
・論文を読み、著者の思考を辿りたくなって手に取った。

原著論文:毛内拡著”脳のシナプスを介さない相互作用によるアナログな調節機構”
日本物理学会誌 76 (8), 492-497, 2021-08-05


 ・ツボ
  ◇知性の謎を解き明かす鍵は,ニューロン以外の要素にあるのでは。
  ◇知性は「答えがないことに答えを出そうとする営み」。例えば,創造やいわゆる“人間らしさ”。
  ◇知性などの脳の高次機能を理解するためには,これらのシナプスを介さないアナログ的な伝達を理解する必要がある。
  ◇アナログ的な伝達要素=グリア細胞のロジスティクス。脳内物質の補給や物流の支援と管理を担う。ここの流れが私にとって新鮮な驚きだった。

8.自由律俳句

紹介いただき、初めて自由律俳句にふれた。
五感の表現がみずみずしい。触れると手のひらからこぼれそうなひらめき。なんとも形容しがたい抒情がくせになりそう。
句集1冊リュックに入れて、ふとした瞬間に味わう。
岡田幸生句集『無伴奏』そうぶん社出版. 1996 より抜粋

無伴奏にして満開の桜だ 
吊橋の星のなかをいく
通過電車ばかりで別れられない
生返事の口紅つけている

9-1.小説(ミステリー)


エリカ・ルース・ノイバウアー著 ; 山田順子訳『メナハウス・ホテルの殺人』東京創元社 2023.2
・ミステリーの要素を余すところなく備えた作品。登場人物が全員、影のある過去を持つ。エジプト考古学が旅情を誘う。

9-2.小説(その他)


☆☆☆☆ジャネット・スケスリン・チャールズ著『あの図書館の彼女たち』東京創元社 2022.4
・図書館が大事なのはなぜか。図書館こそ侵略者がその国の文化を破壊し抹消するために向かう場所だから。
・1939年パリと、1983年米国モンタナ州フロイド。どちらにも同一人物オディールがいる。パリの女性が米国の田舎にたどり着いた謎。
  読了後、ポロネギのスープが食べたくなります。

千早茜著.『神様の暇つぶし』文藝春秋.2019
 ・誰かを知る前と知った後に見える世界は違った。桃を食べるシーンが印象的

アーシュラ・K.ル・グィン著 ; 小尾芙佐訳『闇の左手』早川書房, 1996.9 
【茨木大学西野先生読書会:課題本】
・シフグレソルというのは何かぐるぐる考えた。「恥?」
・エストラーベンはなぜあの行動をとったのか。

ガブリエル・ガルシア=マルケス著 ; 鼓直訳『百年の孤独』新潮社 2006.12 Obra de García Márquez, 1967

・家系図が複雑すぎて、下記池澤夏樹さんの読み解きキットを参考にした。

池澤夏樹著『世界文学を読みほどく : スタンダールからピンチョンまで』新潮社, 2005.1 付録『百年の孤独』読み解き支援キット: p[417]-440

・【読了感】誰とどう暮らしても、わたしたちはひとり。誰かにほんとうに理解されることも、あるいは理解することもできない。そんな存在として生き、死んでゆく。そのことを深く知るために、不可能であると知りつつ、誰かと生きていこうとする。そこをお互いに理解し合うこと。それが、愛あるいは形式としての結婚の意味なのかもしれない。

10.身の上相談


ヤマザキマリ著『ヤマザキマリの人生談義 悩みは一日にして成らず』毎日新聞出版, 2021.11
・著者は安易な共感をしない。充足感を得るため下記を推奨する。
  ◇好きなことに励め
  ◇あなたが楽しくなれることを探す方に意識をシフトして
  ◇方向転換はいくらでもあり
  ◇孤独感や失望感は役に立つ時が来る
 クールで肝が据わっている。


11.爆笑本

伊集院静著『悩むが花』文藝春秋, 2022.4 
 ・内容は爆笑痛快。忘れた頃に再読したい。著者へ黙とうを捧げる。


12.まとめ

 小説に偏りがちな読書傾向は相変わらず。一方で今年は、紹介型/課題本型読書会に参加することで、少しずつ新領域が拡がったように思う。
 とりわけ、『NHK100分de名著シリーズ』は、作品理解のために、事前に関連本を図書館で検索するようになった。主に著者/解説者の他の著作や論文。それらとテキストを行きつ戻りつして、気ままに読みながら、当日の論点を考える。芽がポンっとでる瞬間をひとり楽しむ。

 来年は、読書会ファシリテーターのユニークな進行の工夫に着目して記録をつけてみたい。
 そして、ここに載せていない物語もたくさん読んでいきたい。

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