見出し画像

乃木坂46 10thBirthdayLiveDay1レポート

幸せは途切れながらも 続くのです 

              (スピカ/スピッツ)
2022.05.14 Sat.
乃木坂46 10th YEAR BIRTHDAY LIVE Day1

とにかく幸せな空間で夢の国にいて歴史を刻んでいるような、そんなライブを1週間経ちようやく現実に帰ってこれた今、記します。

初期曲と現役メンバー

この祝祭の始まりを告げる1曲目、乃木坂46デビュー曲「ぐるぐるカーテン」。フレンチポップ風の明るいサウンドと空に向かって紫と白の風船が放たれる演出によって、素直に夢の国にいると思わされた。その感覚はライブが終わってもしばらく続くことになるとは知る由もない。

2011-2016と銘打って行われたこのライブは正確ではないがある程度時系列に沿って曲目が組まれ進んでいく。

5曲目に披露された「せっかちなかたつむり」。
乃木坂46に対してよく言及される“継承”の物語。
特にファンダムがそれをメンバーに対して背負わせすぎているという指摘は真っ当であり、“ストーリーを消費している”立場であるファンは常に頭の片隅に置かなければならない問題だと思っている。

と話が逸れた訳だが要はオリジナルメンバーがいなくなり後輩たちが歌い継いでいるこのユニット曲が披露されているのを見て、最早それすらファンの野暮な押し付けがましい思想なのではと感じた。メンバーが自分らしくパフォーマンスしている。それ以上でもそれ以下でもない。それこそがありのままの姿であり継承も歴史も所謂“乃木坂らしさ”も含んでいる今のメンバーによるパフォーマンスなんだと。 

この日感じた多幸感の要因の1つは、初期曲をオリジナルメンバーであるように堂々と、また晴れやかに披露する現役メンバーたちの姿だったのかもしれないと今振り返っている。

初代表裏センター 

ほんの僅かに予想はしていたけど、いざ本当に登場した時自分でも引くくらい泣いてて面白かったです。乃木坂46初代センターにして初期を象徴する人物、生駒里奈のゲスト出演。そして彼女をセンターに据えて披露された「制服のマネキン」。

しかしそこにあったのは歴史のアーカイブでもノスタルジーでもなく、生駒里奈という人物が「乃木坂46メンバーとして、卒業後に俳優として、積み上げてきたもの」と後ろで踊る現役メンバーの「乃木坂46メンバーとしてのプライドと、先輩への憧れの視線」が渦巻いて物凄い推進力を生んだパフォーマンスだった。

時系列が前後するが、伊藤万理華登場についても。
筆者は元まりっか推しなので最早泣くを通り越してしばらく動けなかったです。それは置いといて。
簡単にまとめると彼女は選抜3列目とアンダー1列目を行き来していたある意味で乃木坂46の中央にいた人物。そんな彼女が現役アンダーメンバーを率いる形で披露された「ここにいる理由」。この曲だけは伊藤万理華の生き様とそれを目の当たりにする現役メンバー、という構図だったと言わざるを得ない。

これ以上ここにいる理由はない
お互い分かっているのに

          (ここにいる理由/乃木坂46)

過去も付随させて未来へ突き飛ばすような、他の現役・卒業メンバーには絶対できない、伊藤万理華にしかできないものだった。きっとあの日のこのパフォーマンスに突き飛ばされた乃木坂46はどこまでもいけると確信している。

それぞれの椅子

時系列を戻して。
残り二人となってしまった二期生鈴木絢音、山崎怜奈Wセンターによる“バレッタ”。代表曲“君の名は希望”はエース齋藤飛鳥センター。山下美月、賀喜遥香という2021年に新センターを経験した2人によるサマーチューン“ガールズルール”“夏のFree&Easy”。生田絵梨花からの明確な継承が為されている久保史緒里による“何度目の青空か”。生駒里奈と活動期間が被っていない4期生筒井あやめセンターの“太陽ノック”。楽曲自体にもメンバーにもそれを聴くファンにもそれぞれストーリーがあって、これまでもこれからも皆がストーリーを生みながら生きていく!生きていくことの幸せみたいなものが垣間見える、2013-15年のシングル曲たちだった。

悲しみの忘れ方

Day1 2011-2016 Day2 2017-2022 

と区切られた今回のライブ。明確に2016年は乃木坂46にとって区切りでありファンである自分にとってもそう。橋本奈々未推しであり、彼女の卒業引退と同時に乃木坂46からしばらく離れていた筆者がサヨナラの意味で大号泣していたことは言わなくても分かるでしょう。
しかしサヨナラの意味の次に披露されたのは現エース齋藤飛鳥初センター、“裸足でSummer”。サヨナラの意味でノスタルジーに異常なほど毒されてしまっていたあの瞬間の筆者を、限りなく現在に引き戻してくれた。齋藤飛鳥推しでもあるので当時のことも思い出しそうだがそうじゃなかった。そこは2022年でしかなかった。2016年の乃木坂46は自分にとってとても大切なものだけど、ちゃんと現在まで一本の線で繋がっていることが確かめられた時間だった。

今が思い出になるまで

ここからライブはノスタルジーではなく未来へ視点を完全に切り替えたモードに移っていく。
まずは新メンバー5期生の楽曲“絶望の一秒前”。

Looking at yourself, what do you see there
現実から目を背けるな

           (絶望の一秒前/乃木坂46)

前述の通り、裸足でSummerでハッと現在(現実)に引き戻されたかと思えば新メンバーたちが凛々しくフレッシュに踊り、こう歌っていた。ネイチャー感のある爽やかなEDMのサウンドに揺られながら、現実を生きることの残酷さと未来に向かう喜びのようなものを感じた気がする、不思議な感覚だった。

今だってもちろん好きだけど
なぜだろうあの頃に戻れない

      (ごめんねFingersCrossed/乃木坂46)

正に歌詞の通りで、ノスタルジーを凌駕する圧倒的かつ幸せで、何よりシンプルに楽しい!そんな時間がやってきたのです。

コロナ禍の始まりにリリースされここまで育ってきたファンクナンバー、“I see...”。コールがなくともここまで盛り上がれる楽曲自体の強さとそれをパフォーマンスするメンバーのアイドルとしての魅力に楽しまされながら、続いて爽やかなギターイントロが鳴らされ始まった“スカイダイビング”。(夏だ!)
天才的にキャッチーなメロディと譜割りの“君に叱られた”。会場のボルテージは最高潮へ。このパートを締めくくるのはやはり齋藤飛鳥センターの
“ジコチューで行こう!”。ひたすらに明るいサウンドに心の底から盛り上がりながらペンライトを振っていた。オタク楽しい!でもそれと同時に、

この瞬間を無駄にはしない
人生あっという間だ

       (ジコチューで行こう!/乃木坂46)

まだ5月なのに夏の終わりのセンチメンタルのようなものに襲われて、心の底からの楽しさと交わって何とも言い難い気持ちにされられた。今振り返ると、このライブでずっと感じていた幸せの正体は、終わりゆくことの切なさと、だけどまた夏はやってくることの必然を知っていることによるものだったのかもしれない。 

風に乗って飛んで行け愛の歌

本編最後のブロックは、フルオーケストラの演奏をバックに披露された。
まずは繊細なヴァイオリンのビブラートから始まる。“夜明けまで強がらなくていい”。
センターの遠藤さくらはこの曲に限らずそうだったが、昨年までの触れたら壊れてしまいそうな儚さではなく、何かを捉えたような強い視線をしていた。
彼女の視線と壮大なオーケストラのサウンドに心も体も震わされていた。

続いて、“僕は僕を好きになる”。
晴れやかな笑顔で踊る山下美月の姿には、ありのままの自分で生きることの美しさや喜びを感じさせられた。あの景色は美しい世界だった。

ドラムのリズムに合わせて70,000人の観客が一斉にクラップを鳴らし始める。個人的にこの表現は好きじゃないんだけど、あのSingOut!に対してはこう言わざるを得ない。確実に70,000人が1つになっていた。いや、メンバーはもちろんスタッフさんも、会場には来れなかったファンも含めた乃木坂46に関わる全ての人たちが1つになっていたと本気で思った。仲間の声が聴こえた。
この世にはまだこんなに幸せな空間があったんだ。

さいごに

彼女自身もかつてファンであった賀喜遥香はMCで
「今この瞬間が幸せすぎて、終わったら夢が醒めてしまうんじゃないかって….」と涙ながらに語った。

だけどもかっきーも含めたメンバーたちはブログなどから見て取れるように、あの幸せを抱えてすでに前へと進んでいるし、筆者も1週間経った今でもあの幸せと余韻を抱えたまま生きている。

乃木坂46は“夢から醒めない翼”。

幸せは途切れながらも続くのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?