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国際大会へのパートナーシップから考える、企業から見たラグビーの魅力とは 

2023年はラグビー界にとって国際大会が多く開かれた1年となりました。これまでワールドラグビー(WR)という切り口からラグビーの世界観や代表資格制度についての記事を公開してきました。今回は、WRが主催する3つの大きな大会のパートナー企業を調査し、そこからラグビーの持つ魅力を分析していこうと思います。


3つの国際大会

WRが主催する大会のうち、ワールドカップ、WXV(女子15人制の大会)、SVNS(7人制の大会)が大きな国際大会といわれています。ワールドカップは前回、前々回の記事でもご紹介をしましたが、国際スポーツイベントの中でもトップクラスの大会規模と経済効果を生むと言われている大会です。男女の大会がそれぞれ4年おき交互に行われており、次回のワールドカップは2025年の女子の大会となっています。WXVは2023年10月から始まった女子15人制の新しい国際大会です。この大会は前述の2025年のワールドカップに向けて、女子ラグビー全体の競技力向上と各国の競争力を高めるために新設されました。

そして、最後のSVNSは7人制ラグビーの国際大会です。ラグビーといえば15人制という方も多いかもしれませんが、オリンピックのラグビーは7人制であり、ラグビーというスポーツの奥深さと新たな一面を見せてくれる7人制にも多くのファンがいます。また、7人という人数の制約から戦術などにも違いが見られ、選手に必要なスキルも変わってきます。

世界的企業が大会パートナーに


ラグビー3大大会のスポンサー一覧(筆者作成)

先ほど述べた3つの国際大会のトップカテゴリー*のパートナー企業を整理すると上記表のようになります。

*トップカテゴリー
RWC2023・・・ワールドワイドパートナー
WXV・・グローバルパートナー
SVNS・・パートナー HSBCは大会冠協賛 

この表からも見て分かる通り、欧米からアジアまで様々な業種の企業が大会パートナーとして名を連ねています。

特にワールドカップは大会規模や観客動員数といった点からも注目度が高く、大手コンサルティング会社のEYによると2019年に日本で開催された大会では6,464億円の経済効果があったと言われています。

ラグビーの魅力とは

各社のリリースでのコメントなどを見ていくと、ラグビーのコアバリューを読み解くことができるかもしれません。(以下、筆者和訳)

ラグビーはSOCIETE GENERALEのDNAに根差した価値観である「コミットメント」と「チームスピリット」を通じてコミュニティを結び付けることを体現したスポーツです。

SOCIETE GENERALE

ラグビーは多様性に満ちたスポーツであり、世界中でファンが増え続けています。このことは「ダイバーシティが、革新的なソリューション開発と価値創造に重要な役割を果たす」という当社の信念と完全に一致しています。

Capgemini

ラグビーとDEFENDERには深いつながりがあります。ともに共通するのは力強く頑丈で、多様なプレーに対応する力です。
高い持久力が求められるラグビー、それに匹敵する耐久性をDEFENDERは備えています。その冒険心と最上を目指す揺るぎない精神はまさしく、フィールド上とオフフィールドともに限界を追及する者にふさわしい資質です。
ともに不断、不屈の人間の魂を祝福し、不可能を可能にするのが私たちの想いです。

DEFENDER (LAND ROVER)

ラグビーは素晴らしい価値を持ち、また、多くの国々で誇り高い伝統を持つスポーツです。また、アラブ首長国連邦ではラグビーが全国の学校のカリキュラムに組み込まれるなど、年々コミュニティーの参加と関心を集めているスポーツでもあります。私たちにとってラグビーは、ラグビーというスポーツに対する情熱の下で人々が結束する素晴らしいプラットフォームであると考えています。

Emirates

ラグビーは、チームワーク、献身、忍耐といった三菱電機と強く共鳴する価値観を体現するスポーツです。

三菱電機


上記のように、チーム、多様性、忍耐、これらの言葉に近しい表現が多く見られることから、企業側もこれらの部分にラグビーのコアバリューを感じているのではないでしょうか。

大会パートナーとしての取り組み

各社、各大会でのパートナー契約を通じて自社製品のプロモーションやラグビー普及の取り組みを行なっています。ここではその一部をご紹介します。

<アサヒビールの事例>
ラグビーの試合観戦スタイルで真っ先に浮かぶのがビールと言われるほど、ラグビーとビールには親和性があります。先日、フランスで行われたワールドカップ2023では、約250万リットルのビールが消費されました。フランスでは酒類の販売や広告の規制が厳しく、試合会場において「Asahi」の社名は「Aaah!」と表現を変え、「SUPER DRY」の商品名は「SUPER TRY」という広告表示となっていました。

また、WRと共に、大会公式ポッドキャストの取り組みを初めて行いました。ワールドカップ開幕に先駆けて放送され、ラグビー界の著名人がAsahiのビールを片手にラグビーの魅力や、大会の見どころをお伝えするという人気コンテンツとなりました。ラグビーの魅力を伝えると共に、Asahiのビールが飲みたくなるような仕掛けが散りばめられた事例と言えるでしょう。


<Emiratesの事例>
Emiratesはワールドカップ2023のワールドワイドパートナーであると共に「エミレーツ・ワールドラグビーマッチオフィシャルズ」の公式スポンサーにもなっています。
レフリーへのスポンサーを行うという関係性からEmiratesはWRと共に「Whistle Watch」という映像コンテンツを制作しています。普段はなかなか注目を浴びることが少ないレフリーに着目し、ファンの方がレフリーの世界に親しみを持って触れることができる映像コンテンツになっています。

<Mastercardの事例>
ワールドカップ2023の開催にあわせ、ラグビーのトライシーンとクレジットカード決済のタッチ決済を掛け合わせたイベントを実施しました。

<Gallagherの事例>
リスクコンサルティング、保険仲介を本業とするGallagher(ギャラガー)はWOMEN IN RUGBY(WR内の組織)、WXV、そして2025年のワールドカップのオフィシャルパートナーになっています。女子ラグビーへのパートナーシップを強める一方で、WRと共に、女性コーチ向けの育成メソッドとリーダーシップの醸成を目的とした「GALLAGHER HIGH PERFORMANCE ACADEMY」を提供しています。

ラグビーを通じたパートナーシップの可能性

試合に出ている15人のメンバーがそれぞれの役割を持ち、ボールを繋いでいくラグビー。国籍、人種にとらわれずチームのために戦う、その姿勢に見ている人は心を奪われます。One For All,All For Oneという言葉に象徴されるラグビーの世界観に企業も共感を示し多くのパートナーが集まっています。また、女子ラグビーの発展と拡大も見逃すことはできません。今やラグビーの競技人口の4分の1は女性とも言われています。2023年から新たに始まった女子15人制の国際大会WXV、2025年開催のワールドカップと女子ラグビーの目玉となる大会が続いていきます。WRとしても2017年から続いている8ヵ年計画の最中であり、女子ラグビーへの投資をより一層図っていく中で競技力の向上と共に商業的発展が期待されています。
そして、2016年にはオリンピック競技への復活を果たした7人制のラグビー。WRのアラン・ギルピンCEOはSVNSの大会を、「健康やウェルビーイング、食べ物や飲み物、旅行などもSVNSシリーズの大きな要素です」と表現しており、ワールドカップとは別物のエンターテイメントであることがこの言葉からも伝わってきます。15人制ラグビーのファン層とは異なり、若年層の心を惹きつけつつあるSVNS。これから、若年層へのリーチを目論む企業とのパートナーシップの可能性も膨らんでいます。
WRが仕掛ける新しい取り組みや企業との新しいパートナーシップのニュースに今後もより注目していこうと思います。


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