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HARIBO~チェコ野球界の夜明け③番外編

三度のメシよりグミキャンディーが好きだった少年は、やがてHARIBOの虜になり、グミ中毒者のオっさんになった。その試合のプレーボール直前に開封したお気に入りのHARIBOの袋には【MELOUN】と書かれているけれど、メロン味ではなく、ウォーターメロン(スイカ)味なんですな、これが。
これがまた濃くてぶっとくてぬちょぬちょ感に溢れ、ハマりますねん、乙ですねん。

せっかくなので今回は、野球チェコ代表の歴史的なレーゲンスブルクの決定戦はさて置き、HARIBOを語る余談の番外編でビッテ。HARIBOって会社は、HAns RIegelさんというドイツ人が故郷のBOnn(旧西ドイツの首都・ボン)で1920年に創立した世界初のグミキャンディー屋である。

インバウンド需要に合わせて、昨今、日本のドンキにもハリボーの種類が急増しているが、ドイツの隣国・チェコではもちろん、更にいろ〜〜んなハリボーをかなりリーズナブルに買えてしまう。巷の大型スーパーで常時見掛けるのは定番の数種類のみだが、どれも百円前後でお手頃に買えてしまう。もちろんHARIBOマニアとしては、そんな甘っちょるい品揃えでは満足出来ませんがな。「ぢゃ、どこに行けばもっとぎょーさんハリボーあるん?」という私みたいなグミ中毒者は、チェコ国内では街の至るところにひしめくベトナム人経営のヨロズ屋さん(通称Večerka:ベチェルカ)に引き寄せられる。大手スーパーより少し割高だが、夢のようなラインナップで数十種類のHARIBOがごちゃごちゃケバケバしく並んでいる。何故この様な小売店を至る所で経営するベトナム人社会がチェコ国内で幅を利かせているのか、と云えば、旧チェコスロバキアが共産主義国家だった影響で、イデオロギーの同胞だったよしみと、凄惨な戦禍をくぐった歴史を持つベトナム人に対する移民受け入れ策が極端に寛容なのだ。プラハの街外れにはSAPAという北ベトナムの山岳地域から命名された巨大マーケットが存在し、ベトナムからの移民たちがそのダダっ広い市場で、家族一族民族総出で毎日わいわいガヤガヤ、多種多様なベトナム及びアジアの産品を商っていて、チェコの中に於いて極めて異空間でエスニックなコミュニティを形成している。プラハに着いてチェコ語を習い始めた2020年の秋学期には、ベトナムの高校を卒業し、家族や親類を頼ってチェコにやって来たてほやほやのベトナム人たちと席を並べて、途中からはコロナ禍につきオンラインに移行したが、チェコ語のいろはを一緒に学んだ愉しい懐かしい日々を過ごした。彼らの多くが、ひとまずチェコ語の基本だけ覚えると直ぐに、そのベトナム人コミュニティ内で就労し、また余裕が出来た頃に、更なるチェコ語のレベルアップを求め学び舎に帰って来るようだ。先述のVečerkaとは、Vienam人が経営し、夜(večer)も開いているお店と云う意味を孕ませたチェコ語の造語である。ちなみにプラハ市内で一番多くのHARIBOを販売しているVečerkaは、おそらくKarlínské náměstíの電停前の広場の角に面したベチェルカではないか、と思うが、少し薄暗い店内にキラびやかなハリボーどもが、うじゃうじゃキラキラ輝きながら唸っていますぞ。きゃ~!!

そんなある日、元広島カープに在籍したリトアニア人投手のNeverauskasがハリボーのアウトレットからインスタを投稿していた。ぎょえ~!おまえも、ひょっとして同じハリボー中毒者だったのか!?よしよしよし、やはりカープをクビになってもかわいいワシらの元助っ人だな!考えてみれば、彼の暮らすリトアニアの首都・ビリニュスからよりも、ワシの暮らすプラハからの方が、HARIBOの本拠地BONNへは近いのだ。その週末、飛んで行きましたがな。

プラハからケルンまでLCCで、空港から電車で、ケルン中央駅で乗り換える。ついでに降りて、目の前の荘厳な大聖堂を眺めながら、恋人達の願いが籠った色とりどりの南京錠がぎっしり架かる愛らしいモスグリーンの橋を、残念ながら独りで散歩してからボンに向かった。麗しいチェ娘と来たかった。。

ボン中央駅は、そこがかつて大国・西ドイツの玄関口であったとは信じ難いほど控えめな駅舎で、市街地も流れるライン河沿いに小じんまりと纏まっている、なんだか広島市みたいじゃの〜。Neverauskasが投稿したアウトレットへは駅前からバスに揺られて15分ちょい。ホント小さなバス停での降車なので、Google Mapでバス停チェック必須ですぞ。数分歩くと、見えた~!赤い丸っこいHARIBOの文字を黄色いハリ坊がこちらですよビッテ、と誘っている。ぎょえ~!ここやねん、Neverauskasが写真撮っていたポイント!ぱしゃぱしゃ!
地元民は、もちろん愛車で乗り付け、カートいっぱいに箱買いしてクルマに積み込んで帰るから、パーキングも充分に広い。
そこはアウトレットなだけに、店内のハリボーは市価の半値ちょっとくらいかな。で、グミだけでなく、所狭しと並べられたハリボーのぬいぐるみやグッズがイイ歳こいたオっさんのハートを誘惑してくるんですな、、クマのくせにタイガース色のくせに、、かわいいーー買いてーー。。オイメイやチェコで世話になっている友人の子ども達へのお土産だ、と云う言い訳で、バックパックいっぱいにグミやぬいぐるみを詰め込んで、次なる目的地・HARIBO本社工場まで、市街地方面にバスで数分戻った。

あの毒々しくビビッドなグミを100年以上世に放ち続けるHARIBOの本社工場は、残念ながら一切の見学を遮断している。やはり、このオっさんが長年憑りつかれるグミの製造過程は、その見た目通りの毒々しさ故に見せられない、ってことかの~?
往生際悪く、閉ざされた鉄の扉の向こうから笑顔で迎えてくれた守衛さんに「ハリボーが好きでの〜広島から来たんよワシ。ちいと開けてもらえんかの〜」と、英語で言うてはみたが、その鉄のカーテンがマニアに開かれることは遂に無かった。閑静な住宅街に聳えるハリボー総本山をグルリと一周すると、中毒信者としてはスタンプラリーを通過した気分で気が済んだので、路面電車で旧市街のど真ん中へ向かった。

Bonnのど真ん中に、セレクトブティックのようにかわいい外観と内装も洒落たハリボーショップがお目見えする。HARIBOオタクにとっては、まさにメッカで、生涯で一度はこの店の暖簾を跨がにゃ死ねんじゃろ。そこに無いものは無かった。。イイ歳こいたオっさんがきゃぴきゃぴしてしまうけんど、キモい言うなかれ!

さて、そろそろ前話の続きで野球場の本題に戻さねば。矢継ぎ早やにスイカ味のハリボーを口に放り込んでいると、ようやくアンパイアが定刻から三分遅れのプレイボールを告げた。(続)



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