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彼らと一緒に、大人になったんだ〜Base Ball Bearと私の歩み〜

Base Ball Bearに出会ったのは、高校1年生の時だった。その頃はROCKIN ON JAPANをはじめ様々な音楽雑誌を買いあさっていた時期だったので、紙面上でバンド名とビジュアルだけは知っていた。

実際に曲を聴いたのはミュージックステーションでだった。当時存在していた「Young Guns」という若手アーティスト発掘コーナーにて出演していた(なっつかし!)。演奏していた曲は“changes”。「チェチェチェ changes」というサビの入り方にビビッときて、翌日、新星堂天王寺MIO店へ駆け込み、シングルCDを購入した。

そこから過去のアルバムをTSUTAYAで借りたり買ったりし、彼らの世界へどんどんはまっていった。

この出会いのあと、彼らは10年以上に渡り、私の人生にずっと寄り添い続けてくれている。


「青春とは病気だね」 -キラキラとドロドロの高校生活-

青春とは妙なものである。
キラキラやドキドキを感じる一方で、正体の見えない大きな不安や孤独の波に飲まれることも多かった。Base Ball Bearはそのどちらをも描いており、私の青春に彩りを添えてくれた。

時に、夢を見させるように。

CRAZY FOR  YOUの季節が 騒めく潮騒のようで
氷漬けの気持ちを溶かすから
海みたいに街中、光って
(CRAZY FOR YOUの季節)


17才 It's a seventeen 檸檬が弾けるような日々
生きている気がした気持ち それがすべてだ
17才 It's a seventeen 黒い髪の君がきらり
掴んだ腕残るBCG 

 傷ついて痛いかい?
気付いてほしいのかい?
(17才/『十七歳』より)
1秒で十分なんだ ディスティニー感覚
薄荷の味の午後に すれ違う君に
黒い髪をなびかせて 釘付けのmy eyes
君はそう女の子の 最高傑作
(BLEEEEZE GIRL/『(WHAT IS THE)LOVE&POP?』)

そして時に、痛みや孤独に寄り添うように。

● ヘヴンズドアー・ガールズ

屋上で試してる 飛び降り占いは
いつだって失敗で 涙流すロンリーガール
生きている気がしない なんて言うのやめなよ
その首を絞めているのは ありきたりなオンリーワン
(ヘヴンズドアー・ガールズ/『十七歳』より)

● 明日は明日の雨が降る
(CD音源のみに収録の隠しトラックです)

絶望に呑まれたとか そんなんじゃない
暗がりに気付いただけ ただそれだけなのに
悲しくも寂しくもないが 虚しい
満たされた明るい毎日なのに
煮え立つ暗い闇に響かない
(明日は明日の雨が降る/『(WHAT IS THE)LOVE&POP?』

● kamiawanai

かみあわない 僕の世界が
“受け入れられたら神様”
馬鹿にしてるのか?
気持ち悪過ぎて 気持ちいい位に沼だよ
(kamiawanai/『CYPRESS GIRL』)

負の感情を否定せず、寄り添ってもらえること。
誰にも言えない恥ずかしい気持ちを、ティーンエイジャーの頃にきちんとすくい上げてもらったこと。なんなら、一緒に叫んでもらったこと。当時の私は、それらにどれだけ救われただろうか。


「青春の当事者ではなくなった」 -青春を俯瞰する-

4th Album『新呼吸』のリリースの頃、私は大学生となっていた。そして、「私はもう、青春の当事者ではない」と気づきはじめていた。どんどん大人に近づいていた。あの頃にはもう戻れないし、これから自分で進んでいくしかないんだと感じた。でも、寂しさよりはうれしさの方が大きかった。ずっとずっと、自由になれそうだったから。

school zone

眠らずに明けた朝もやの中
すれ違いに駅へ急ぐ少女の群れ
失くした季節はいまや何処に
僕は良い具合に かなしいくらいに
醒め過ぎてしまった
(school zone)

新呼吸

あたらしい朝が来れば 僕は変われるかな
新品の現実に出会うために生きてく
あたらしい窓開けたら 僕は変われるかな
蒼い街をながめて そっと新呼吸
(新呼吸)


それから、青春の呪いとも決裂した。というか、許した。
どうしても中高生の頃の不安や孤独を引きずってしまうことがあった。成人しても、つらくて、痛いと思うこともたくさんあった。

でも、この曲と出会った。

魔王

見ないことにされてた 僕の世界が 君のことをずっと待ってる
聞かないことにされてた この声が
例え枯れてしまおうが 君のために歌うよ
笑い者いされてた 僕の世界で 君のことをずっと待ってる
いないことにされてた 僕の呪いが
君を癒すお呪いになりますように
(魔王)

これを初めて聴いたのが、2015年の日比谷ノンフィクションⅣだったと思うのだけれど、これが「許しの曲だ」と気づいた瞬間、涙が止まらなかった。ソングライターの小出祐介自身、青春期に深い傷を負っていたが、彼がその呪いを自分で解き、過去を許したことに気づいたのだ。

ほしい言葉を、ほしい音楽を、私の人生の拠りどころを、いつでも彼らがつくってくれる。全幅の信頼を置いていた。


「大人の青春という第二期」 -死にかけていたあの頃-

2015年。『C2』というアルバムがリリースされた頃、私は社会人になっていた。配属希望が通らず、家族も友人もいない見知らぬ土地で、社会人生活のスタートを切った。その矢先、交通事故に遭って入院&手術。初っ端の初っ端からいろいろとつまずいた上、復帰後も思うように仕事がうまくいかず、結構まじで、心が折れていた。というか、適応障害で休職していた。生活に潤いもなにもなく、つかれて枯れ果てていた。

そのときに、私の心を取り戻してくれるような曲たちに出会った。

不思議な夜が僕らを包んでいくよ
子どもみたいな無邪気で無垢で無駄で永遠で
素敵な夜だ 左を見ればほら 君が「ん?」って顔してる
(不思議な夜)

カシカ

今日もどこかで第何十回目の何かの全国大会が開催されて
優勝校の生徒が喜び泣いているだろう
でも知らない
(カシカ)

何者にもなれない自分にもどかしさとつらさを感じていたけれど、そもそも「何者」なんかになんて、なれるわけがないんだと妙に勇気づけられた。

休職中は音楽を聴くことすらしんどくて布団の中に長時間潜っていることが多かったけれど、『C2』はたくさん聴いた。


「自分らしさをたのしめよ」 -基盤固めは終わった-

2016年。
メジャーデビュー10周年の記念碑的な年となる年にメンバー脱退。あまりにも突然のことで、彼ら自身、そしてファンである私たちもおどろきと動揺を隠せなかった。彼らは変わらざるを得なくなってしまった。でも、このバンドは試行錯誤をしながら、それでも音楽を鳴らしつづけるたのしさを忘れずに自分たちと向き合い、丁寧に再構築をはかっていた。その姿を、ライブでずっと見せてくれていた。

2017年、ついに3人体制後初のフルアルバムが完成。これまでかたくなに「メンバー4人で出す音」にこだわり続けてきた彼ら。しかし、メンバーの脱退を期にピアノやホーンなど、これまでない音色を取り入れはじめ、新しい1歩を踏み出した。
この年に私は転勤となり、ついに地元・大阪に戻ることができた。新しいスタートを同時に切った。切ることができた。ひとつ、しがらみから解放されたのだ。

リアリティーズ

傷つくのも傷つけるのも 部屋が狭いからさ
どうでもいいことばかり大切にしても

 本当に変わりたいなら 認めることさ
カエルやエキストラじゃいられない自分を

天秤が違う 錘だって違う 量られてるのにさ
どうでもいい このピラミッド 無視したっていいよ
絆ごと ほどいてゆけよ
(リアリティーズ)


2019年。
彼らは自らのレーベルを立ち上げた。その名もDGP records(ちなみに「DGP」とは、「ドラムゴリラパーク」の略だ。お察しください)。そして、EP『ポラリス』をリリース。

表題曲の“ポラリス”には、彼らの好きなもの、これまでの歩みがふんだんに盛り込まれている。過去を否定するのではない、過去を無視するのでもない。アップデートを重ね、試行錯誤を繰り返した長い旅に、やっとひとつの決着をつけることができたのだろう。3人でバンドをやること、音楽を追求していくこと。これが、彼らの出したアンサーだ。

『ポラリス』で提示したシンプルながらも強度の高いサウンド、自分たちらしさをさらに追求し、「強み」にまで昇華させたのが新EP『Grape』だ。“いまは僕の目を見て”に漂う大人の色気と落ち着き、そして円熟味は、Base Ball Bearに中堅バンドとしての風格を与えている。

彼らは包み隠さない。すべてを、とまではさすがに言えないかもしれないけれど、バンドの大事な局面、自分たちのテンションやモードは、常にファンの前に晒してくれる。バンドのアップデートの過程も、試行錯誤も。しかも、実にたのしそうにだ。

彼らとともに生きてきたら、気づいたらもう30歳目前だ。私もそろそろ社会人4年目を終え、人生の節目がやってくる。基盤固めはもう終わった。「自分らしくたのしむ」ために、彼らのスタイルに近づこうとしてみてもいい頃かもしれない。


「ひとつの地点の提示」

今年の2枚のEPリリースで、ようやく「3人のBase Ball Bearらしさ」の地盤が固まったのではないかと思う。ついに昨日、よい知らせが舞い込んできた!

ニューアルバムのリリース、きた〜〜〜! その名も『C3』!
待ちに、待ってました〜〜〜!!! うれC〜〜〜!!!

『C2』までの第1章、サポートメンバーを迎え武者修行をした第2章が終わり、第3章へと歩みを進めた彼らの「現在地の提示」になるのだと思っている。

「最新アルバム「C3」のコンセプトは、一言で言えば「自分たちそのもの」です。それぞれがいて、それぞれの楽器があって、音楽がある。そんな、バンドにとって当たり前のことを、純度の高い当たり前として表現することが、今ならできると思いました。でっかい音で、ぜひ聴いていただきたいです。」 
-----Base Ball Bear 小出祐介-----

公式サイトに記された小出氏のメッセージ。わくわくしながら読んだ。新しい音源がリリースされること。その曲たちと一緒に、私もまた日常を過ごし、人生の駒を進められるであろうこと。

長年バンドを追いかけつづけることの醍醐味がここにある。

これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。


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