痛みの記憶
セピア色の記憶。
銀色の包み紙。お菓子の包みみたい、と開ける。包まれていたカッターの替え刃。何故か惹かれてすっと中指で触れる。少しの違和感の後、指の腹から流れる血を見て、違和感が痛みであったことを知る。
反射的にいけないことをしてしまった、と思って必死に隠す。
重ねた絆創膏の下の小さな秘密。
まっすぐな傷。
白い鍵盤が赤で染まらないように。触れる度ぴりっとした痛み。なかなか塞がらず、一生このまま血を流し続けるのでは、なんていう幼い思考。
気づけば何事も無かったかのように、まっさらに、綺麗になっていた。
最後まで読んでいただけたこと、本当に嬉しいです。 ありがとうございます。