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年上の後輩Ⅵ

「お付き合いしていた男性と別れました。」
そう連絡が来たのは平日の午後だった。
その日は仕事で、丁度休憩をしていた時だった。
急に別れましたと言われても、どう返したらいいのか…

前々から彼氏の相談には乗っていた。
価値観は合うのに、金銭感覚が全く合わない。
一緒に住みたいのか、居候したいだけなのかよくわからない。
その都度解決策を提案しつつ、後輩が今の彼氏と軌道修正して本当に結婚した時、自分は心の底から喜べるのだろうかと少し葛藤した時もあった。
そんな彼氏と付き合ってるくらいだったら、自分と…って考えなかった訳ではない。
そう簡単にうまくいかないのが人生なんだけど。わかってはいるんだけど。

「別れました」と聞いた時。
単純に「ダメだったか…」と言う悔しさと言うか、悲しみがこみ上げてきたと同時に「いや、これはもしかしてチャンス…?」と考えている自分がいた。
人間と言うのは非情で残念な生き物だと思う。相手には「あぁ…悲しいよね…」と寄り添う姿勢を見せつつ、心の中では全く別のことを考えているのだから。
裏表が本当に違う時があって、現実には全く相手のことを思っていなかったりするのだから。
これだから人間は信じることができない。こんな生き方をしていると、自分で自分のことを信じられなくなってしまいそう。現にちょっと「本当の自分」を見失ってる感はあるけど。

それから数日して、後輩に話を聞きに会いに行った。
がっくり落ち込んでいるわけではなく、次を見据えていた感じだった。
話を聞くと、自分が仕事でうまくいかない時に寄り添ってくれなかったのが一番辛かったという。いやそうだよね、わかる。わかる気がする。
誰だって辛い時に一人なのは辛いよね、と寄り添いつつ、心の中は「狙うべきが、否か」という事も同時に考えていた。酷い奴…

帰りの道中どうしようかと悩んだが、諦めることにした。
チャンスはあったと思う。自分の頑張り次第でどうにでもなった気がする。
けど結果諦めた理由は、相手と釣り合いそうになかったからだった。
自分では支えきれない気がしたからだった。
ここまで書いておいて、最後は自分の自信の無さが露呈した感じで本当に情けない所ではある。
結局自分に自信が無かった。失敗もしたくなかった。
社内恋愛になるし、失敗したら今までの関係はボロボロに、仕事のやりにくさだけが残ってしまう。
決め手はこれだった。
結局「安定」を求めてしまった。

その後も後輩とは程よい距離感を保てている(つもり)。
これくらいがいいんじゃないかなと自分に言い聞かせている。
自分と言えば、趣味の車に金をつぎ込んでつぎ込んで毎月の収支が赤字だ。
付き合っていたら交際費に金を割くことができず大変だったかもしれない。これはこれで良かったと思う(?)
周りの同級生はどんどん結婚していく。自分だけ置いてけぼり感が半端ないくらいあるけど、これでいいんじゃないかな…


-完-

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