見出し画像

5lack、適当に生きるということを示したラッパー

5lackという名前、聴いたことある人、ない人、見たことはあるという人、
様々な人たちがいると思う。
彼は日本のラッパーだ。
昨今のラッパーが乱立している日本において、決してメジャーには踊りでないが粛々と素晴らしい音源をリリースし続けている。
彼は「本物」のラッパーである。
その素晴らしさを私の拙文で恐縮だが紹介したいと思う。

1. 5lackとは

5lackと書いてスラック、あるいはゴラックと読む。
デビュー当初はS.L.A.C.K.という名義だったため、
スラックと読むことが多い。
1987年東京都板橋区生まれ、2009年に1stアルバムをリリース。
兄はもう少しメジャーな場所で活躍しているPUNPEE
最もメジャーに認知されたのはdocomoのCMソングか。
とにかく1stの衝撃で日本のHIP HOPシーンは揺らいだ。
かく言う私もリアルタイムで目の当たりにした一人だ。

2. 5lackの何が素晴らしいか

リリックの内容、独特なフロウ。この2点。
たったこれだけだが、これはHIP HOPの核心だ。
簡単に言えば他にはいない個性が素晴らしいということである。
「みんなと違うことをやりたい」とか
「ちょっと奇を衒ってみよう」とか
そんな浅はかなものではなく、HIP HOPと真摯に向き合い、
自らの思想と合わせて昇華させている「本物」なのである。

3. リアルな生活感

5lackの特徴としてギャングスタ系ではないことが言える。
しかしスチャダラパーのような感じでもない。
5lackは普通に葉っぱの話とか女性関係の話もする。
じゃあそれはギャングスタに近いのでは?と思う人もいるかもしれない。
大きな違いは現代の若者の生活・思想そのものということだ。
日本におけるギャングスタ系は共感できるフィールドにいないと本当に何も響かない。聴く者にとってそれはファンタジーにしか聴こえない場合もある。
しかし、5lackはファンタジーではない、ドキュメンタリーなのだ。

Good morning sunshine お日様
10 a.m. 起きたらShower Click PC 朝からMONJUでLowでも上がる
「Good More / My Space」
友達が連れてきた娘見て 動揺したり また今日も光
電波は形を消してさ 東京 旅 また早朝ぶらり
「I Know About Shit / My Space」
今日みたいに紫のフィルターかかってて オシャレして出掛けた日には
都会を抜けてゆく風はシカトして ゆっくりこんな風に頭揺らそ
「TAMURO / 5 sence」

とにかく情景が思い浮かびやすい。そして、情景に感情が付加されている。
「自分もこう思う時あるよな」というリリックばかりだ。

4. 葛藤と弱みをさらけ出す

自分の人生の選択は合っていたのだろうか。
このまま好きなことを続けてて良いのだろうか。
ほとんどの人間が一度はぶつかる壁。
多くのラッパーは弱みなど見せない。
自分は最強だ、金を持っている、成功者だ、と。
しかし5lackはどうだ。いつも不安を直視している。
それをリリックに乗っける。だからリアルなのだ。

枕濡らしちまった お前に話聞いてもらうつもりだぜ
明日もなイカれきった精神 癒やすのはお前しかない
マジで救われたlove my girl
「Girl if you / 5 sence」
いつも想う 死ぬ前にきっと もっと行けたなんて思うんじゃないか
毎晩泣くようなネガティブ辛い love 笑ってるのも悪くないはず
「いつも想う / 我時想う愛」
なぁ みんなベランダから空と雲
太陽とgood morning が 早朝 夜勤 music dilla
what you dilla聴いてごまかせる
「笑えれば / Whalabout?」

不安に取り巻かれ、自分のやっていることがこれでいいのか、と
いつも自問自答している。ここまで内面を出す人に親近感が湧かないことがあるだろうか。
同時に自分の経験や選択と照らし合わせてしまう。

5. 未来に続く現在、今を生きる

5lackはただ不安を露呈するだけのネガティブ人間ではない。
いつも今の最前の選択は何かと考えている。

これも未来じゃ小さな話 時間はslowでも止まんない
あれ以来は失態は無いなんてねぇ そう去ったろう
昨日もきっとそう
「Hot Cake / My Space」
AプランBプランいろいろあるけど
思いついたなら行動 怖がらず行けよ
明日の命はあるようで無いよ
いつ死んでも後悔はないと言えたなら
「いいんじゃない / DAVIDインスト」
人生 正解など無いと思っていいぜ
ひでぇ目にあったりするそれも まぁいいぜ
「Weekend」
弱い奴は固まり 強い奴は孤立して
弱い奴が噂して 君のことをひがんでる
それでも歩く一人 俺は旅人気取り
「Twilight Dive / KESHIKI」
人生は失敗の連続 世の中は低俗だけどめげずに継続
常識かわし普遍を狙い撃ちblah! くだらねぇ仕組みを抹消
「Grind the Brain / この景色も越へて」
君が僕にくれた それが俺の夢さ
君が俺の夢さ 繰り返そう
月明かり終われば 街が色に溢れた
待ちわびてた夜明けさ 繰り出そう
「きみのみらいのための 」

一貫して言えるのは自分の選んだ道に誇りを持とう
そして今を後悔なく生きようというメッセージだ。
その言葉たちも無理強いはしていない。
5lackのスタンスとして適当に行けよということがある。
これは手を抜いて生きろという意味ではない。
自分のペースで進んだ方がいいんじゃない?という意味だ。
こんなにも肯定的で、自己顕示欲が強くないラッパー。
自分自身と同じ悩みを持った人間がいるという心強さにも繋がる。

6. おわりに

フロウについては聴いてみてとしか言いようがない。
ただ言えるのは自身でも言っている「外国語みたいな日本語」ということだけだ。
非常に耳障りの良い音楽としてリリックを紡いでいる。

5lackはデビューして10年以上経つ。
ラップの歌唱法は時期によって変われど、彼の思想の本質は変化ない。
あまりにもリアルで、でも言葉選びが素晴らしく全くダサくない。
こんな最高なラッパーを聴かずに人生を終えるのは惜しい。

聴けとは言わない。
もし道に迷ったら5lackを聴いて自分自身と対話してほしいとだけ。

この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?