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新規クラフト蒸留所は生き残れるか

※この投稿は、旧アカウント「壱百粁走男」名義で投稿したものです。2024年にお酒に特化した新しいアカウントを作成しなおし、加筆修正を加えたものです。

所用でとある空港に行った。機材の遅れで出発が予定より遅れるとのことだったので、お土産屋をぶらぶらしていると、お酒売り場のコーナーにニューポットが何種類も並んでいた。しかも同じ県の蒸留所のもので、県内に蒸留所が複数個所あることに気づく。名前は聞いたことがあるが、売っているのを見たのは初めて。

まあ、応援する気持ちでいくつか購入するが、200mlで数千円する商品を購入する人は、どのくらいいるだろうか?

蒸留所が飽和状態

私がウイスキーの虜になったのは2010年代。今では信じられないだろうが、スーパーで竹鶴や山崎、白秋のノンエイジが買えた頃だった。

秩父のウイスキーがオークションで話題になり、三郎丸や静岡や厚岸の計画が始動し始めた頃なら、まだよかったと思う。小規模のクラフト蒸留所だから生産量が少ないのもわかっているから、多少高額でも応援する気持ちではいた。

しかし、こんなに増えたら関心がない限り全く分からない。そしてジャパニーズウイスキーを名乗るには3年の熟成期間を経なければならない。その3年間を維持するための収益としてニューポットを売ることは理解できる。しかし、ニューポッドは荒々しい酒であるため、よっぽどの好事家か、出来が良いことにはリピーターにはならない。せいぜい、お土産程度に購入するくらいだろう。

3年間を乗り切れるか

ジンを作って売るという蒸留所もあるが、クラフトジンも飽和状態。カクテルの材料で使うならわかるが割高。ウイスキーと異なり、ジンだけでストレートやロックを嗜む人はそう多くはない。

それに、3年間を経て売り出したとしても、市場が受け入れてくれる保証はない。

クラフト蒸留所は少量生産ゆえに価格を抑えられないだろうから、「おいしいけど、この価格ならコスパのいいスコッチ買えばおつりがくるのでは?」というのが本音。ウイスキーが高騰しているが、愛好家としては家飲みに常備するには高額過ぎる。当然、バーで楽しむお酒となると流通量が限られる。

エッジのきいた個性的なウイスキーを作るか、割り切ってバルクで売るかしか、これから生き残る道はなさそうに感じている。

生き残りをかけた戦い

各蒸留所が切磋琢磨しあい、ジャパニーズウイスキーの質を高めることは有意義なことだ。しかし、体力のない蒸留所は苦しい戦いを迫られるだろう。

先日、厚岸蒸留所の興味深い話を聞いた。

ドラマ「マッサン」を見た方はご存じかと思うが、創業当初は地元のリンゴをジュースとして売っていたので、地域密着で「おらが町のウイスキー」として受け入れられた。ところが厚岸では「東京から来た奴らが勝手にやっている。」「高くて飲んだことがない」「そもそも売っているのか?」と、地元民から「他所者扱い」され敬遠されていた。しかし「牡蠣の子守歌」を地元の飲食店限定で販売してから、次第に知名度が上がり少しずつではあるが、地元民に理解を得ることができた。ボトルキープする地元民が増えてきている。

厚岸出身の人とバーでの会話

新規蒸留所の中でも堅調な厚岸でも、見えない苦労があったのだ。
旨いウイスキーを作るだけではだめなのだ。地元民と良好な関係を深めていかないと、この先、生き残ることは出来ないだろう。ましてや、地元の方たちに愛され、理解を得られなければ、地元産にこだわったウイスキーなど作ることは出来ない。

愛好家としては楽しみではあるが、心配ではある。
新規蒸留所の方たちには、頑張っていただきたい。

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