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F・ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 E Minor, Op. 11

 Concerto For Piano And Orchestra No. 1 In E Minor, Op. 11
 1. Allegro Maestoso 00:00
 2. Romance. Larghetto 20:06
 3. Rondo. Vivace 30:46
 指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
 ピアノ:Krystian Zimerman
 伴奏: ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団


ショパンの全作品の下に共通して連綿と流れる、切々とした「望郷の想い」と、生きることの「哀感」を、さらに強く感じざるをえないのが、二つのピアノ協奏曲。

指揮者カルロ・マリア・ジュリーニの、ドラマ性を押さえた、然し、大変に陰影の深い伴奏と、作曲時のショパンの年代に近い若きピアニスト、ツィンマーマンの、青年剣士の名刀の煌きのような、研ぎ澄まされた、輝かしい
ピアノ演奏が見事。

間違いなく、ジュリーニが残してくれた「名演」と思うのです。

フレデリック・フランソワ・ショパン(Frederic Francois Chopin, 1810年 - 1849年 )は、ポーランド出身の作曲家であり、稀有のピアニストでした。

20歳で演奏旅行に出掛けた際に「11月蜂起」(ポーランドおよびリトアニアで発生したロシア帝国の支配に対する武装反乱)が起こり、以降、故郷の土を踏むことができませんでした。

ウィーン・ドレスデン・パリと転々とし、後半生の大部分をフランスで過ごしましたが、望郷の想いは終生止むことがなく、死後、遺言により「心臓」
のみが祖国に運ばれ、ワルシャワの聖十字架教会に埋葬されたそうです。

故郷を支配する列強への反発心は強く、ロベルト・シューマンは、「美しい花畑の中に大砲が隠されている音楽」と評しました。

故国ポーランドの伝統的なメロディとリズムは本曲以外にも「ポロネーズ集」や「マズルカ集」などにぎっしりと詰め込まれています。

ジュルジュ・サンドとの恋や、パリのサロンでの華やかな面が大きく取りざたされるけれども、貴族の子弟へのピアノ教師の仕事や、パリのサロンでの演奏は、生きてゆくために必要であったこと。
華やかな女性たちに取り囲まれ、リクエストに端正な笑顔で応えながら、
瞳の奥は涙に溢れている ・・・ そんな情景が広がるのです。

ここにも又、時代に翻弄されながらも 「生きた」 独りの人間が居ます。

余計なことを言うと非難されるかもしれませんが、音楽は、それを必要と
する人の心にしか響かないと思います。

「音楽を聴くという行為」は、その音楽の中に込められたものが「自分の心の中の何かと共鳴する行為」だと思うのです。
遠く故郷を離れ、長く愛するものたちと遇えないで居る人の心が、「ノクターン」の調べに共鳴するように。

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