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L.V.ベートーベン:エリーゼのために

Für Elise (For Elise), Bagatelle No. 25 in A minor
バガテル第25番 イ短調「エリーゼのために」
ピアノ:フィリップ・アントルモン  &  アリシア・デ・ラローチャ
(お二人の演奏者で2回再生されます。どちらがお好きでしょう?)

ベートーベン40歳の時、1810年に書いた小曲です。
秘めた恋心を、そっと大切に抱き続けつつ、心の揺らめきを つい口に出してしまいそうな切なさが、密かに畳み込まれた「ラブレター」。

でも、何故かスコアは発表されず、楽譜は数人の手を渡り、1867年になってようやく出版。
(ベートーベン死後40年も封印されたラブレター!発見者はルートヴィヒ・ノールという音楽家。発見された楽譜原本も、うやむやに紛失しています。)

この 小さな曲にも、大きな難問が残っています。

① こういうケースの場合、多くは曲を再発見し蘇らせた音楽家がいるもの
  です。例えばバッハのマタイ受難曲を再発見し、命を吹き込んだのは
  メンデルスゾーン、みたいな。が、それも誰か判らない。

② ではどういう仕組みで、世界中の”駅ピアノ”で 多くの人が楽譜なしで
  弾く程に、世界中に浸透したのか、勿論さっぱり判りません。

③ エリーゼ(Elise)って誰ヨ!という問題。
  楽譜原本にドイツ語で "Für Elise"と書かれていた故の疑問なのですが、
  記録に残るベートーベンと交友があった女性達の中には ”Elise”さんは、
  いません。
  そもそも原本が行方不明で、きちんと筆跡解析もできていないのです。

Youtubeの批評のなかにこんな文があります。

「このメロディは彼の教えていた生徒さんの内の一人の為に書かれました。
 あまりピアノが上手とはいえない、ある生徒さんに恋心を持ってしまった
 彼は、さほど難しくない曲を書いてあげようとしていました。
 でも、その生徒さんが婚約されたと聞いて、彼女では弾けないように、
 書き上げていた曲の残りはメチャ高難度の曲にしてしまったのです。」

つまりは、誰にもこの曲は献呈されてはいない、というのです。
恋文は、隠され、封印されました。

ですが、世の中の研究者たちは飽きずに、いろんな推論の研究を続けているものです。

2010年ドイツの音楽学者クラウス·マルティン・コーピッツ氏は
「ベートーヴェンがドイツ出身のソプラノ歌手のために作曲したものだ」
という説を発表しました。

ウィーンの聖ステファン教会(St Stephen's Cathedral)に保管されていた
記録などから判断すると、この女性はドイツ南部レーゲンスブルク出身の
ソプラノ歌手 エリザベート・レッケルさん。

1806年にベートーベンがタクトを振った歌劇『フィデリオ(Fidelio)』に
出演したテノール歌手 ヨーゼフ・アウグスト・レッケルの妹さんとのこと。

エリザベートは1807年、兄を頼ってウィーンに移り住み、ベートーベンとも親しくなったが、ベートーベンの友人でライバルでもある 作曲家 ヨハン・ネポムク・フンメル氏(Johann Nepomuk Hummel)と 1811年に結婚。

コーピッツ氏は、彼女が住んだウィーンの教会の書庫で、1814年3月9日に
書かれた彼女の第1子の洗礼記録を発見。
母親の欄には「マリア・エバ・エリーゼ」とあり、当時、彼女がエリーゼと呼ばれていたことが判明したのです。

これが、初めてベートーヴェンの知り合いの中に、『エリーゼ』と呼ばれる女性を発見した瞬間。(やった!遂に発見か!?)

(以上、AFPBB国際ニュース https://www.afpbb.com/articles/-/2617064
 でした。)

これが、確定ニュースなのかどうかはともかく、彼がラブレター(作曲原本)をしまい込んだ説明がつきますね。

恋する人に捧げようとしていたベートーベンは、彼女が、音楽仲間で作曲家としてのライバルでもあったフンメル氏を選び、婚約したと聞いてガックリし、譜面台においていた”Fur Elise”の楽譜を誰かに見られちまった時、「いや~、それは単なるバガテルだよ、大したものじゃない」と汗を拭きつつ言い訳けをしている情景が浮かんできます。

ハハーン、わざわざ パガテル というメモ的種別を付けたのも、そういう訳だったのですね!

(標題についているバガテル(Bagatelle)とは、「ちょっとしたもの」という
 表現です。
 例えば、大曲の作曲過程でこぼれ落ちた楽想や、ふとした思いつきで
 暇なときに書かれたものという謙遜の意をこめた用語なのですが、作曲家
 自身が捨て去るには忍びず、スコアは完成され、残されたもの。)

週刊誌的になりましたが、お楽しみいただけました? (o^―^o)ニコ

ベートーベンを語る際、欠かせない、「エリーゼのために」なのでした(笑)

PS: 幣ノートの大切な読者様に「フンメルノート」さんがおられます。
   エリーゼが結婚した作曲家"ヨハン・ネポムク・フンメル"氏を研究
   されておられます。
  ブログURL   :https://profile.ameba.jp/ameba/hummelnote/
  クラシックサイト:http://hummelnote.doorblog.jp/
  研究ノートサイト:https://hummelnote.wixsite.com/hummelnote
  音楽ご愛好の皆様、どーぞ一度お訪ねになってみてくださいませ。

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