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#15 ダイエットのお話 その4~カロリーを蓄える仕組み~

はじめに

私たちは、エネルギーを蓄えるのが好きです。私たちの性質や歴史、心理を理解するためには、狩猟採集民だった祖先の頭の中に入り込む必要があります。人類は過去200年間は、都市労働者やオフィスワーカーとして日々の糧を手に入れるようなりました。それ以前の1万年間は、農耕を行ったり、動物を飼育したりして暮らしていました。しかし、こうした年月は私たちが狩猟と採集をして過ごした膨大な時間と比べれば、ほんの一瞬に過ぎません。

狩猟採集民として

人類の狩猟採集民としての生活はおよそ数十万年前から存在していました。現代の人類であるホモ・サピエンス(人類の種)は、およそ20万年前にアフリカで誕生しました。

彼らの生活は、周囲の自然環境からの資源の収集、狩猟による動物の捕獲、そして季節に応じた移動といった活動に焦点を当てていました。彼らは野生の植物や果実を採取し、動物を追いかけて捕まえることで生計を立てていました。

このような狩猟採集の生活は、約1万年前に農耕の発展とともに、徐々に農耕社会へと移行していきました。農耕社会では、人々は定住し、植物を栽培し、家畜を飼育することで食料を生産するようになりました。

したがって、狩猟採集民としての生活は数十万年前から始まり、農耕社会への移行が起こる約1万年前まで続きました。これらの生活形態の変化は、人類の社会・文化の進化において重要な節目となっています。

人類と飢餓との歴史

日本においては江戸時代(1603年-1868年)に発生した天明の飢饉(1782年-1788年)が有名ですね。日本の歴史上最も深刻な飢饉のひとつです。この飢饉は、連続した天候不順や寒波、虫害などが原因で、全国的な食糧不足となり、推定で80万人以上が餓死しました。世界的にはアイルランドのジャガイモ飢饉(1845年-1852年)、中国の大飢饉(1959年-1961年)、ベンガル飢饉(1943年)、ウクライナのホロドモール(1932年-1933年)などがあげられます。

現在も世界人口を養うカロリーは生産されているものの、システムも問題で食料問題は依然として存在します。世界の穀物生産量は増加傾向にあり、特に米やトウモロコシ、小麦などの主要な穀物は、過去数十年間で生産が大幅に向上しています。また、肉や魚介類、野菜や果物などの生産も増加しています。ただし、食料の十分な供給があるにもかかわらず、世界の一部地域では食料不足や栄養不良が依然として問題となっています。アフリカやアジアの一部地域では、気候変動や自然災害、紛争、経済的困難などにより、食糧危機が発生しています。

世界全体で見ると、約10人に1人が栄養不良であり、飢餓に苦しんでいるとされています。食料の分配やアクセスの問題も重要な課題です。食料の生産地と消費地が離れていることや、インフラや物流が不十分な場合、食料が十分に届かないことがあります。また、経済的に貧困な家庭は、十分な食料を手に入れることが難しい場合があります。さらに、食品ロスや食品廃棄物の問題も大きく、世界の食料生産量の約30%が廃棄されると言われています。これは、食料供給が十分にあるにも関わらず、食糧が適切に分配されず、飢餓や栄養不良が続く一因となっています。

総じて、世界的には食料が十分にあるものの、食料不足や栄養不良が依然として問題となっている地域が存在し、食料の分配やアクセスの改善、食品ロスの削減などが重要な課題です。他者がお腹をすかしているのを見ながら、ご飯を食べても美味しくないでしょう。とても大切な問題です。話が脱線しましたが、大事な問題なので再度確認させていただきました。脂肪はそのような食料不足、エネルギー不足に悩んでいた人類を守ってくれた大事な存在なのです。それでは脂肪を構成する脂肪細胞について見ていきましょう。

脂肪細胞について

体の中で脂肪をためる貯蔵庫の役割を果たしているのが「白色脂肪細胞」です。白色脂肪細胞は、腸のまわりなどの内蔵、皮膚の下、筋肉の繊維のまわりなど、体の中にさまざまな場所に存在します。脂肪細胞は直径が70μmから140μmの球形をしたかなり大型の細胞で、大人の体には数百億個の脂肪細胞が存在します。体積の大部分は「脂肪滴」が占め、太る際には、脂肪滴がさらに大きくなり、白色脂肪細胞が限界までパンパンに膨れ上がります。体積は3倍くらいまで大きくなります。肥満研究が進むにつれて、健康を維持する上で脂肪が重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。以前は、脂肪は単なるエネルギーの貯蔵庫と考えられていたが、研究の進展により、脂肪が体の様々な細胞に働きかけることによって、体のエネルギーバランスを一定に保つ役割を果たしていることが分かってきてます。この脂肪機能に異常が生じることが、肥満によって引き起こされる病気の原因になっていることがわかってきました。 肥満は、糖尿病、高血圧、心臓病、脂質異常症、関節痛、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな健康問題のリスクを高める要因となります。また肥満は、がんや認知症といった病気の発症リスクも高めることが研究で示されています。肥満は生活習慣病の発症だけでなく、全体的な寿命や健康寿命の短縮にも影響を与える可能性があります。ぜひ肥満の方は改善していきたいですよね。

白色脂肪細胞の主な機能は、エネルギーの貯蔵と放出です。食事から摂取したエネルギーが過剰な場合、白色脂肪細胞は脂肪酸を取り込み、トリグリセリドとして脂肪滴に貯蔵します。トリグリセリドは中性脂肪としてよく血液検査で測定します。健康診断や医師の定期のチェックで説明を受けた方も多いと思います。エネルギーが必要な場合には、白色脂肪細胞はトリグリセリドを分解し、脂肪酸とグリセロールに分けて体内に放出します。これらの物質は、他の細胞や組織でエネルギー源として利用されます。ちなみに中性脂肪の正常範囲は150 mg/dL以下です。そしてそれ以上が高値とされ、生活習慣の見直しや医師との相談が推奨されます。中性脂肪の値が高いと、動脈硬化や心臓病、脳血管疾患などのリスクが高まることが知られています。そのため、定期的な健康診断で血中中性脂肪値をチェックし、適切な範囲に保つことが重要です。アルコールは中性脂肪を上昇させる因子であり、私がお酒をよく飲んでいた時には中性脂肪が700mg/dL以上ありました。500mg/dL以上は膵炎というとっても怖い病気になるリスクがあり、なったら仕方ないわなとあきらめていたことを覚えています。ほぼ依存症のようにアルコールを飲んでいました。今はやめています。この前、もう飲まなりからとウイスキーを処分していた時に、もうれつに飲みたくなりました。その欲求と付き合い方についても、ダイエットと同じなので、また説明いたします。中性脂肪を測定する時は採血をタイミングに気をつけてください。食事の影響を受けやすいので、食後10時間以上、私は患者さんに朝ごはんを食べずにきてもらい採血をとっています。血糖も同じですよね。食事をした人はしていることを医師に伝えてください。

白色脂肪細胞の話に戻ります。白色脂肪細胞は、さまざまなホルモンやシグナル分子を分泌する内分泌機能も持っています。例えば、レプチンというホルモンは、エネルギー摂取量とエネルギー消費量を調節するために脳にシグナルを送ります。白色脂肪細胞が分泌する他の物質には、アディポネクチンやインターロイキン6などがあり、これらは代謝や炎症反応に関与します。そして皆さんご存知のように白色脂肪細胞は、肥満と密接に関連しています。肥満の状態では、白色脂肪細胞が過剰なエネルギーを脂肪として蓄えるため、細胞サイズが増大し、脂肪組織が拡大します。また、肥満の過程で、白色脂肪細胞が炎症やインスリン抵抗性を引き起こすシグナル分子を分泌することが報告されており、これが肥満に関連する様々な健康問題の原因となります。

終わりに

このように敵視されやすい脂肪細胞ですが、私たちを助けてくれた存在でした。しかし、十分にエネルギー供給がされている地域に住んでいる人々にとっては、さまざまな問題を引き起こす存在となってしまいました。さあ、どうお付き合いしていたったら良いのでしょうか?また一緒に勉強していきましょう。よろしればお付き合いください。

ストレスからくる生活習慣病、不眠、生きづらさに対して、薬を処方するのと同じように、日常生活でできるアイデアを処方します。読んでいただきありがとうございました。みなさんの幸せな生活を心より祈っています。

Reference

科学雑誌Newton(著) (2018). 肥満と病気のかがく
ユヴァル・ノア・ハラリ(著). サピエンス全史


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