〔憲法コラム1〕外国人の人権享有主体性

 ここでの外国人とは、日本国に居住する日本国籍を有しない者をいう。かかる外国人に、憲法の人権保障が及ぶか。第3章の表題が「国民の」となっていることから問題となる。

〈論点1〉外国人に人権の保障が及ぶか。
 A説(判例・通説)
  結論:外国人にも、人権の保障が及ぶ。
  理由:①人権の前国家的性格(11条)に合致する。
     ②憲法の国際協調主義(前文3項、98条2項)の精神に合致する。

〈論点2〉外国人にも人権の保障が及ぶとして、全ての人権規定の適用があるのか。
A説(性質説)
 結論:権利の性質上日本国民をその対象としていると解されるものを除き、人権規定の適用がある。
 理由:人権の性質は様々であるから、その性質に応じて個別具体的に検討を加えるべきである。
B説(文言説)
 結論:「何人も」と規定されている人権規定は外国人にも適用される。
 理由:憲法の規定が「何人も」と「国民は」とに表現を区別している。
 批判:22条2項は「何人も」と規定しているが、国籍離脱の自由は元々日本国民のみを対象としているはずである。

[重要判例]
 マクリーン事件(最大判昭53.10.4)百選Ⅰ(第7版)[1]
 アメリカ国籍のXが、在留期間を1年として我が国に入国し、1年後にその延長を求めて在留期間更新の申請をしたところ、法務大臣が、Xが在留中に政治活動を行ったことを理由に更新を拒否した事件。
 最高裁は、「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」であると判示した。

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