〔民法コラム5〕債権の二重譲渡の優劣関係


1 総説

⑴ 債権譲渡

 債権譲渡とは、債権の同一性を保ちつつ債権を移転することを目的とする契約である。これは債権者と譲受人との間の合意により行うことができ、債務者は債権譲渡の主体ではない。また、契約上の地位が移転するわけではないことから、譲渡人が契約当事者として有していた取消権や解除権は移転しない。

⑵ 対抗要件

 債権譲渡の対抗要件には、債務者に対する対抗要件(467条1項)と、第三者に対する対抗要件(467条2項)の2種類が存在する。
 いずれも、「通知」か「承諾」によりなされるものであり、第三者に対する対抗要件では、それらの行為が「確定日付のある証書によって」なされることが要求されている。

2 債権の二重譲渡

 債権の譲渡においても、不動産・動産の譲渡と同様に、二重譲渡がなされる場合がある。二重譲渡がなされた場合には、不動産では「登記」(177条)を、動産では「引渡し」(178条)を先に具備したほうが優先することになるが、債権の二重譲渡において、いずれの譲受人も第三者対抗要件を具備した場合には、その優劣関係をいかに考えるかが問題となる。

〈論点1〉債権が二重に譲渡され、2人の譲受人が共に確定日付のある証書による通知又は承諾を得ているとき、譲受人相互間の優劣は何を基準として決定するべきか。明文規定がないことから問題となる。
 A説(確定日付説)

  結論:確定日付証書の日付の先後による。→画一性重視
  理由:確定日付証書の日付は、後から作為を施すことができない点で、対抗要件として優れている。
  批判:2つの譲渡通知が確定日付とは逆の順で到達した場合、順序が覆されて債務者の地位の安定性が害される。
 B説(到達時説 最判昭49.3.7百選Ⅱ(第8版)[29]・通説)
  結論:通知が債務者に到達した日時、又は債務者の承諾の日時の前後により決まる。→公示性重視
  理由:①467条1項が通知・承諾を債権譲渡の対抗要件とした趣旨は、債権譲渡に関する債務者の認識を通じて、債務者をして公示機能を営ませようとした点にあるが、債務者がかかる公示機能を営むためには、債務者が債権譲渡の事実を知る必要がある。
     ②467条2項が確定日付を要求したのは、譲受人・譲渡人が債務者と共謀して譲渡通知到達の日付を遡らせる等の作為を可及的に防止しようとするところにあり、上記の趣旨(①参照)とは無関係である。

[重要判例]
・債権譲渡の対抗要件の構造(最判昭49.3.7百選Ⅱ(第8版)[29])

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