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【エッセイ】小説の中で、自分でもドン引きするような言葉を書いてしまったときの対処法

 こんにちは、山本清流です。


 小説を書いていると、自分でもドン引きすることがあります。

 それを避けるためにはどうすればいいのか。考えました。


 いまの心の声は以下のとおり。

 人間の人格は無数にあり、相対的なものである。しかし、小説は多くの人が読むもの。そのため、誰に向けて書けばいいのか混乱し、さまざまな人格が入り乱れながら仕上がるかもしれない。この結果、自分でもドン引きしてしまう。小説を書くときは、ターゲットを適切にイメージすべし。

 以下、詳しく解説していきます。

 前半では、「人格とはなにか」についてお話しし(人格心理学を勉強したことがあります)、

 後半では、小説という媒体の限界をお話ししたいと思います。


 【人格とはなにか】

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 人格とは、「仮面」です。

 突然、そう言われてもピンと来ないかもですが、僕はそう考えます。


 【人間は仮面をつけて生活している】

 人間は仮面を被り、生活しています。

 本心を隠すという意味というより、その場に適した自分を演じる、という意味です。


 人間は、その状況ごとに「どんな自分が最適か」を考え、

 その自分を演じることで、その場に馴染もうとします。


 【たとえば】

 学校では、生徒と先生という主に二種類の仮面があります。

 生徒は、教えてもらうという役割を演じ、先生は、教えてあげるという役割を演じます。


 これって、よく考えたら、当たり前のことじゃありません。

 先生より勉強ができる生徒がいるかもしれないからです。


 その場合、合理的に考えるなら、いちばん勉強ができて教えるのがうまい生徒が先生の役割を演じたほうが、みんなの成績が伸びそうです。


 でも、そんなことはしません。

 どんなに合理的だとしても、生徒という役割を与えられた人は卒業するまでずっと生徒を演じ続けます。

 

 中学校というシステムなら、義務教育として規定されているからです。

 法律によって、誰がなにの役割を演じるかが決められているのです。


 この例のように、生活の中にはいろいろな役割があり、それらの役割を人々は演じています。

 必ずしも、本人=役割ではないですよね。


 【役割は無数に存在する】

 さきほどは学校の例を見ましたが、こういった役割はたくさんあります。

 法律や年齢、性によって規定されたものだけではなく、本人の信念によって規定された役割もあるでしょう。


 人間は、生活の中でいろいろな役割を演じ、そのひとつひとつがその人の人格ではないでしょうか。


 【つまり、人格は無数に存在する】

 その役割を演じている仮面を人格としてカウントするなら、

 人格というのは、個人の中にも無数に存在することになります。


 家族用の人格、学校用の人格、恋人用の人格、ツイッター用の人格、note用の人格など、さまざまです。

 いまの僕も、これはnoteを書いている人格であって、この僕が僕の人格のすべての集合体ということはありません。


 誰の中にも人格は無数に存在しているのです。

 

 【人格は、相対的なもの】

 以上で見てきたように、人格はその状況ごとに変わります。

 つまり、誰か、あるいは、その環境に対する仮面なのであり、


 人格は相対的なものです。

 誰を前にするかで人格は変わります。

(「人格が変わる」は言い過ぎかもです。「世界に対する反応の仕方が変わる」という認識でOK)


 以上のことを念頭に置いて、小説について考えてみましょう。


 【小説を書くときの人格は?】

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 では、小説を書くときの人格はなんでしょうか。

 小説を公開しているなら、誰かに向かって書いていることはたしかです。


 その「誰か」に対する人格を被り、小説を書いていることになります。


 それが誰なのかは人それぞれかもしれません。

 自分の嫌いな人へ書いているのかもしれないし、自分を無条件に称賛してくれる人に書いているのかもしれないし、批評家に向けて書いているのかもしれないし、あるいは、自分自身に書いているのかもです。



 【しかし、現実はどうか?】

 現実的な話に戻りましょう。

 小説を読むのは、本当に、その小説が目的としている相手だけでしょうか?


 そんなことはない、はずです。

 その小説を読む人がどんな人か、わかりません。どんな人であれ、読む人は読むのです。


 小説を書くときに目的としていた相手ではない人にも届きます。

 そのため、書いているうちに、誰に向けて書いているのかを見失いがちです。


 いろいろな人に向けて書いてしまうと、人格がごちゃごちゃになったままの作品になります。


 【どういうことか?】

 これはつまり、間違った仮面を被ってしまった状態です。


 学校の先生に対して、「よ! 先生!」と声をかけてしまったわけです。

 家族に対して、「あの子、ちょーかわいいよな」と言ってしまった状態です。

 仲のいい友達に対して、「あの、たいへん申し訳ないのですが」と丁重になってしまった状態です。


 相手に対して適切な仮面を被ることができず、間違った仮面のまま情報が伝達されてしまうのです。


 これが、いわゆる、「自分の小説にドン引きした状態」だと思います。


 【小説を誰に向けて書いているのか、自問自答】

 これが、対処法だと思います。

 適切な相手――すくなくとも、その小説のいちばんのターゲット層を自覚しておく必要があります。


 具体的にイメージすると、いいのではと思います。

 相手のイメージが一貫していれば、間違った仮面を被ることも少なくなります。


 ということで、わざわざ小説を書いて不快になりたくもないですから、僕も、具体的な読者のイメージを持つように心がけます。

 そんなところです。読んでいただき、ありがとうございました。