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リタゲの呪いと懺悔

様々なことが重なり「更新します~」と言ったのが口だけになってしまった。迂闊なことを口にした少し前の自分にヘッドロックをかけてやりたいと思うのだが、責めるとすれば、それよりさらに前の自分かもしれない。見込みが甘すぎるので卍固めをするべきだ。と言うわけで無料公開。

数ヶ月前、事業会社で働くようになり、広告制作の仕事を退いたつもりだった。それなのに、むしろ全然退けていない。WEB広告との相性の悪さに見切りをつけて外の世界に来てみたのだが……当地ではかなり重宝されている。制作会社時代「まぁ……やるけど付け焼き刃程度ですよ」と言いながらやっていたSEO対策にも、ピリッとした空気が流れる。

今さらリタゲ用の文言を考えるのに消耗することになろうとは、思いもよらなかった。なかなか足を洗えないスナイパーのようだが、さして天才的な腕を持っているわけでもないので、不審な動きを見せたら、きっとすぐに始末されるだろう。このテキストで懺悔をしたところで、なんの救いもないのは当然だし、呪いも解けないけれど、リタゲについて思うところを書いてみる。

体感として、それがきっかけでものを買う経験をしていないので、当地に来るまで、こんなに信用されているとは思っていなかった。たしかに、ずい分昔はECサイトをはじめとする「レコメンド機能すごい!」と思ったものだ。得体の知れない不気味さはあるものの、好奇心が勝っていた。それは認める。ただし、ここ数年は食傷気味で、購買意欲がそがれている。

ところが事業会社のレポートでは、本当に逆の数字が出ている。案外と、そうやってものは買われていくらしい。自分は常に、ターゲット外の線にいるのだろう。それは理解しつつも、「これでいいのか?」という疑問は残る。

ターゲティングされた人に来てほしいと言うのは、能動性を最初から無視すると宣言するのに似ているからだ。もちろん、それが良いか悪いかは、一概には言えない。ものによっては最適解になるだろう。けれども、能動性のある人を求める場合、このやり方を続けたら数年後に足もとが不安定になるのも目に見えている。……はずなのだけれど、エビデンスがないことには、訴えを上げるわけにもいかず。どうしようもない。

数字を出せるというのは、事業会社において本当に、何よりも大切なことだ。WEB広告がここまで伸びているのは、その効果はもちろんのこと、数字にできる特質による。数字を追えることは、会社の中で圧倒的な優位に立てる。会社内部での価値が爆上がりだ。一方で、その数字が真にどのような意味を持つのかは、あまり重要視されない。

リタゲを伴うWEB広告にとって、数字の力による変化より、呼び込む側の目の色が変わりすぎたことの方が大きな問題を生んでいる。もっとも、そこにエビデンスはないのだが。

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