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ゲームでお金を稼ぐ。ブロックチェーン技術がもたらしたP2Eブーム。

好きなことをして収入を得る。そんな夢のようなゲームが、今、グローバル市場で急速に拡大しています。今回は新しく登場したこのP2Eゲーム市場についてまとめてみました。


はじめに


こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発・運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報提供をしている調査会社です。

このnoteでは「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を配信しています。

ブロックチェーン技術とP2Eの関係


P2Eとは、お⾦を稼ぐためにゲームをプレイすることを意味します。
(Play to Earn)

プレイヤーはゲームをプレイすることでNFTを獲得でき、これを売ることで収益を得られます。

最近あちこちで騒がれ始めたNFTとはデジタル資産のようなもので、イーサリアムなどの仮想通貨市場で売買でき、その通貨を換金すれば⽇常⽣活でも使⽤できます。

このNFTを使ったP2Eゲームを可能にしているのが、いわゆるブロックチェーンの技術です。

ブロックチェーンとは情報を記録するデータベース技術のことで、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それを鎖(チェーン)のように連結して保管します。

この技術により、デジタル上のデータに所有者の情報が記録できるようになり、例えばデジタル上の絵や音楽、写真などが、クリエイターの財産として証明できるようになりました。

(出典)総務省(2020)「ブロックチェーン技術の活用状況の現状に関する調査研究」


データには所有者の記録があり、一元集中で管理するのでなく、皆で分散してデータを管理するので、改ざんや盗難の心配がありません。

そのため、デジタル上の所有物にも安心して投資できるようになったのです。

つまりゲームで獲得した報酬アイテムがプレイヤーの財産となり、実物資産へと交換可能になったわけです。



東南アジアでのP2E⼈気


P2Eブームは、特に新型コロナウイルス感染拡⼤により経済危機に陥った東南アジアで急速に広がりました。

ゲームをプレイすることで稼いだお⾦を、⽣活費に充てられるためです。

人気ゲーム「Axie Infinity アクシーインフィニティ」の運営者によると、「毎⽇35万⼈のユーザーがゲームをプレイしており、 特にフィリピンやベトナムのユーザーが多い」ということです。

新興国の⼈々にとっては、ゲームが厳しい経済状況を打破する手段の一つとなりました。

実際フィリピンでは「Axie Infinity」をプレイすることによって、平均賃⾦以上の額を稼いでいるユーザーも多くいるようです。

「Axie Infinity」プレイ画⾯


人気沸騰!「Axie Infinity」 

一例として、 P2Eゲームの中で最も人気を集めている「Axie Infinity」をみていきましょう。

同作は2018年にリリースされた、ベトナム発のバーチャルマスコットゲームです。

NFT情報サイトCryptoslamによると、2021年7⽉の時点で約15億USD(約1,700 億円)を売り上げており、数あるNFTゲームの中でも、イーサリアム取引数はNo.1となっています。

※イーサリアム:ビットコインに続き、時価総額上位に君臨している仮想通貨。


このゲームでは、始めるにあたって最低3体のAxieというキャラクターが必要になります。

Axieの価格は日々変動しており、1体1万円程度で購入できる時もあれば、3万円近くになる日もあります。

初期投資としては結構な額になりますが、これを設定したことにより、複数のアカウントを作ってのアビューズ⾏為などを防ぐことができているようです。

ゲームをプレイして報酬として得られるのは、以下のアイテムです。


●Axie
前述した本ゲームのキャラクターで、ゲームに参加するためには3体の所持が必須となっています。
Axieはこのゲームで最も重要なコンテンツですが、 2018年4⽉に3,888体のOrigin Axieが販売されたのみで、入手するためには、交配によって繁殖させるか、ユーザー間の取引で獲得することになります。 

●SLP (Smooth Love Potion) 
ゲームをプレイすることで入手できる仮想通貨です。Axieの繁殖に必須で、ゲーム内で販売はされておらず、PvEやPvPの報酬としてのみ得られます。SLPをイーサリアムに換金することで、日本円にしたり、他の仮想通貨への交換が可能となります。

●AXS(Axie Infinity Shard)
SLP同様、ゲームをプレイすることで入手できます。ただしアリーナ(対人戦)に勝利して上位ランクになると入手できるため、SLPと比べて入手は難しくなります。AXSの換金についてはSLPと同様です。


プレイすることで手したアイテムは、公式サイト内にあるNFTマーケットや外部マーケットで、イーサリアム建てで売ったり交換したりすることが可能です。

「Axie Infinity」 Marketplace


2021年11月後半、このゲームを開発したベトナムの企業Sky Mavisが、「プラットフォーム上のデジタル土地の一区画が550イーサリアム(約2億6千万円)で売買された」と発表しました。

1つのデジタル不動産に支払われた金額としては過去最大とのことですが、ゲームという仮想空間の中で、これほどの額の取引が行われているとは驚くばかりです。



その他、世界で人気のあるP2Eゲーム


ゲームで稼ごうと考えている人はやはり多いようで、P2Eゲームやプラットフォームが次々と登場し人気を集めています。今回はその中から4つをご紹介します。


「MIR4」 

韓国のWEMADE社が2021年8⽉にリリースしたMMORPGゲームで、2021年10⽉14⽇には同時接続者数80万⼈を突破しました。

接続者数の増加に伴ってサーバー数も増加しており、 グローバル版リリース当時にはアジア8台・ヨーロッパ2台・北⽶1台の計11台でしたが、正式サービス開始から36⽇後には総サーバー数が100台に増え、現在は136台が稼働中とのことです。


「Splinterlands」

アメリカのSplinterlands社が開発したゲームで、 2021年9⽉にはDAUが326,000⼈を突破するなど、急成⻑しているブロックチェーンデジタルカードゲームです。

プレイヤーはゲーム内と公開マーケットプレイスの両⽅でカードを売買したり、交換して収⼊を 得ることができます。
日本語バージョンはありませんが、空いた時間に気楽に楽しめるゲームとなっています。


「GamyFi Platform」

シンガポール発のe-Sportsファンタジースポーツのプラットフォームで、ゲーマーやスポーツマニアにNFTなどの報酬を提供する場となっています。

スポーツの種類はサッカー、クリケット、ラグビー、野球など多岐にわたり、ユーザーは⾃分だけのドリームチームを作って、その活躍に応じてポイントを獲得することができます。


「CryptoBlades」

イギリス・スコットランドのゲーム会社Riveted GamesがリリースしたRPGゲームです。
収益率が他ゲームと⽐べて圧倒的に⾼く、それがゲーム以上の魅⼒となっています。市場の急成⻑と相まって、⼀週間ごとにユーザー数が96.3%ずつ増加しているそうです。

⾼額な投資を必要とせず、プレイヤーが⾃⾝の得た収益部分から次の投資に回せるようになっているのが特徴です。


Steam vs Epic Games

圧倒的なシェアを持つ老舗のSteamか、それとも中国資本が入り無料配布などを積極的に行うようになったEpic Games Storeか?」といった具合に、PCゲームのダウンロードプラットフォームで悩まれている方は日本にも多いことでしょう。

ライバルともいっていい2社ですが、P2Eゲームについての見解は分かれました。

2021年10⽉18⽇(現地時間)、The Vergeはじめとする多数のニュースサイトが、SteamがNFTや ブロックチェーンベースのゲームの販売を禁止したと報じました。

Steamのサイトをみてみると、確かに禁止アプリとして追加されています。

【Steamで公開すべきではないもの】
13.暗号通貨またはNFTの発行や交換を許可するブロックチェーン技術に基づいて構築されたアプリケーション

Steam ルールとガイドライン

Steamがこの措置を選択した背景を明らかにしたメディアはありませんが、ギャンブルとしての懸念から消費者保護に踏み切ったのではと見られています。


反対に、Epic Gamesはこれらのゲームを歓迎する意向を⽰しました。

同社から出されたコメントをみると、
「制限事項はいくつかあるが、この新しい分野の初期開発者たちとともに歩んでいきたい。 ただし、ブロックチェーン技術がどのように使われるかが明確でなければならず、⾦融法の遵守と適切なレー ティングの適⽤が必要だ」とかなり前向きです。

今後は、Epic Games Storeに必然的にブロックチェーンゲームが集まることになりますので、それに伴い、新規ユーザー数もSteamを上回るようになるかもしれません。


P2Eゲームの特徴と課題


最大の特徴は何と言っても、ゲームプレイによって得られた報酬の⼤部分がユー ザーに還元されるという点です。

「Axie Infinity」の場合は、約95%が還元されているようです。

ゲーム上の主要アイテムのほとんどはプレイして獲得する仕組みなので、プラットフォームやゲーム開発会社の主な収益源は、アイテムの販売・交換時に発⽣する取引⼿数料となっています。

さらにNFTマーケットやイーサリアム取引所などのおかげで、従来のRMT(ユーザー間の現⾦取引)より簡単に、アイテムの売買や換金も可能になりました。

人気沸騰により、世界ではすでにゲーム企業間で熾烈な競争が繰り広げられています。

一方、SteamのようにP2E発展の道を閉ざす力が動き始めてるのも事実です。

このゲームの課題として挙げられるのは、やはりNFTやイーサリアム市場に投機的な側面があるということでしょう。

変動リスクを伴うためリスクを負えない、またはリスク自体をきちんと把握できない若者が参加することを危ぶむのは、当然です。

また仮想通貨もP2Eも新しい市場であるため、信頼できるマーケット以外では詐欺商品が横行しているとも言われています。

あるいは【ゲームは面白くなければならない】より【ゲームは稼げなけなければならない】というユーザーが市場に増え、その通りに開発が進んでしまったらどうでしょうか。

仕事終わりにするゲームが楽しくてしょうがなかったのに、稼ぐ手段となった途端につまらないものになってしまった、というユーザーも今後はでてくるはずです。

学費や旅費をゲームで稼ぐ少年少女が次々登場・・・などという時代の到来は興味深いものがありますが、果たしてP2E市場はeSportのような確固たる市場に成長していくのでしょうか。

コロナ後の各国の経済状況も含め、引き続き調査を続けていきたいと思います。

以上です。
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