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なぜ『名探偵コナン』は中国で人気なのか

クレヨンしんちゃんとドラえもんの人気考察に引き続き、今回は中国でのコナン人気について探ってみました。


はじめに

こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発や運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報提供をしている調査会社です。

このnoteでは、「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を、月に2〜3本配信しています。

今回は『中国のマンガ・アニメ配信サイトと長期ランクインしている日本作品を調べてみた!』の続きで、コナン人気についての考察です。



多数の配信サイトで長期ランクイン


今年4月に中国で公開となった『名探偵コナン 緋色の弾丸』が、5月末時点で興行収入2億元(約35億円)超え、という快進撃を見せています。

2019年に上映された『名探偵コナン 紺青の拳』も総興行収入が30億円を超えており、コナンが中国で絶大な人気を誇っていることがわかります。



参考までに中国でメジャーな配信サイトのランキングもご覧ください。

●Tencent Animation and Comics 日本作品ランキング(2021年5月)

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●Kuaikan Comic 日本作品ランキング(2021年5月)

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●Youku 日本作品ランキング(2021年5月)

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●iQIYI 日本作品ランキング(2021年5月)

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●Tencent Video 日本作品ランキング(2021年5月)

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中国で1990年代に始まったコナンは、現在に至るまで、映画界隈でも、ネット配信でも高い人気を維持し続けていることがわかります。

日本のアニメやマンガは世界中で愛されていますが、例えば最近のアメリカやフランスでは、『僕のヒーローアカデミア』や『鬼滅の刃』などが人気で、中国ほどコナン人気が継続しているわけではありません。




それでは、なぜ『名探偵コナン』はこれほどまでに中国の人々の心を掴んでいるのでしょうか。


人気の考察


・『智略』や『先見の明』を強烈に求める国民性

中国は皇帝が治めてきた国です。

皇帝が変わるたび、支配する民族も変わり、官僚も変わります。
粛清もたびたび行われており、三国志で繰り広げられるような残虐な世界が本当にありました。

中国の歴史をみると、満州族や北方民族に支配された時代や、三国志で有名な魏・呉・蜀などのように分裂した時代が長いことがわかります。

これは天皇制が二千年以上も続く日本とは比較にならないほど、戦乱が続き、虐殺に脅えるような不安定な日々が続いていたことを意味しています。


例えば、元はモンゴル人による王朝でした。

この時代、政治・軍事の要職はモンゴル人が占め、公用語はモンゴル語とされました。

日本に置き換えて考えれば、ある日突然中国やアメリカに支配されてしまい、政治の中枢からは日本人が抹殺され、日本語も使えず、反発すれば逮捕されてしまうといった状況でしょうか。

その後、元に変わって漢民族の支配する明が建国されましたが、今度は始祖である洪武帝が、建国に力を貸してくれた仲間や側近の粛清を始めてしまいます。

皇帝の力を強固にすることが目的だったようですが、この時、数万人規模での粛清が行われたと言われています。

また変わったところでは、最後の王朝である清の政策があります。

支配者側の満州族は、漢民族に対して自分たちの風習である辮髪(べんぱつ)を強制しました。

辮髪は儒教の教えに反するものであったため、漢民族からすると『髪を残すか、頭を残すか』という究極の選択を迫られたことになります。もちろん、拒否した者は辮髪令により首を刎ねられました。

皇帝がかわれば、自分たちの風習・文化さえも守れなくなったわけです。

剃髪


中国のような広大な土地で、かつ多民族を統一するためには、皇帝中心の中央集権や、ライバルの粛清などが不可欠であったのかもしれません。

ただそれに翻弄されたのは民衆です。

戦乱や政変が起きるたび、生き延びるための道を慎重に見極めなければならず、おそらく武力以上に、難関をくぐり抜ける智略や、先を見通す眼が必要だったはずです。

抜群の推理力で難事件を解決していく『名探偵コナン』には、探偵側の観察力や洞察力だけでなく、犯罪者の計略や先見性の欠如なども描かれています。

中国の人々が強烈に欲する『智』に関して、現代的に面白く表現されたアニメがコナンであり、それゆえ、長く愛されているのだと思えてなりません。


・飢餓を耐え抜く知識

中国は日本の25倍の面積をもつ大きな国です。黄河と長江がありますが、河川と丘陵の間には広大な大地が果てしなく続きます。

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出典:総務省統計局「世界の統計」2021


そのため、いったん飢饉となると、どこまでいっても食料が手に入りません。

日本のようにしばらく歩けば海や山にたどり着く国とは違います。

大規模な戦となれば、流民も発生し耕地が放棄されました。そうなると食料生産は追いつかず、歩いても歩いても荒野が続くだけで、待っているのは死のみ・・・30年で人口が四分の一に激減した時代もあるようです。

実際、近年でも大飢饉があったことが報道されています。


中国では飢饉に備えて、山野に自生する食用植物など身近な草木をわかりやすく紹介した書物や、それらの調理法、中毒した場合の解毒法などが書かれた本が古くから存在し、日本もそれらの本草書や医書を参考にしてきました。

シャーロックホームズ顔負けのコナンの知識は、例えば、海蛇の毒はお茶や紅茶のタンニンで洗い流すことができる、死体は石灰を使うことにより腐敗を早めたり、土に埋めることで遅らせたりができるなど、物理、生物、数学、地理などにまで及んでいます。

知識が多いということは、中国では生き延びることに繋がり、そういった面からも、コナンは中国の人々の本能を刺激する作品なのではないでしょうか。


小さな島国である日本においては、『和をもって尊しとなす』ことが大切とされてきました。

しかし広い国土と多民族を有する中国においては、コナンのような頭脳を持った人間は貴重で尊敬される対象であり、だからこそ、長きに渡って圧倒的な支持を得ているのだと考察しました。



以上です。

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