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店舗開発のお仕事1:出店戦略

ここでは、一貫型店舗開発の『店舗出店』業務内容について説明します。
業務内容は大きく3つのカテゴリーに分かれます。


1:業務カテゴリー

店舗開発職が担う業務は大きく以下の3つに分かれます。
店舗開発が役割分担型と一貫型に分かれるように、企業によって一部業務を経営企画室や運営部に分散させることもあります。

1-1:店舗出店ソフト面

①出店戦略策定
②市場調査・物件調査
③契約条件(経済条件含む)交渉
④事業計画書策定・予実管理(重回帰分析含む)

1-2:店舗出店ハード面

1)①設計監修・厨房計画監修
  ②内装工事監修(CM:コンストラクション・マネジメント)
  ③スケジュール管理 
  ④予算管理
2)”デベロッパー出店の場合は、ABC工事区分に基づく内装監理室との交渉 
  及びB工事金額調整・予算管理

1-3:既存店管理

1)既存店巡回・備品購買計画・立地別収益性分析・改装計画 など
*既存店管理には運営管理部を設ける企業も多くあり、新規店舗出店と既存
 店管理を分けている場合があります。
また、運営管理部と並行して、立地別収益性分析や改装計画を行う店舗開発もあり、企業規模や組織編制によって既存店管理方法に違いがあります。

 では、各項目の業務詳細を簡単に説明します。


ソフト面の①出店戦略から順番に説明していきます。
以下の説明内容は、多店舗化を前提にした内容で進みます。

2: 出店戦略:店舗出店ソフト面①


簡単に言えば『どこに出店するか』を決めることです。
自社の業態をどこに出店するかは、
1) どこのエリア・路線に出店するか
2) どんな物件状況に出店するか

の2つがあります。

2-1    どこのエリア・どの路線に出店するかを決める

東京に出店するのであれば、将来のドミナント出店(集中的に出店する戦略)に備えて、出店エリアを決めて展開する方法と私鉄沿線を決めて展開する、2つの展開方法があります。

東京での出店を例にあげると、エリア展開では以下のどのエリアを中心に展開するか決めます。以下の4地区分けは、江戸城を中心に東西南北の4つの地区に分ける呼び方です。(江戸城(皇居)のある千代田区除く)
城東地区:中央区・台東区・墨田区・江東区・葛飾区・江戸川区
城西地区:新宿区・世田谷区・渋谷区・中野区・杉並区・練馬区
城南地区:港区・品川区・目黒区・大田区
城北地区:文京区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・足立区
東京都下:23区外

次に路線展開とは、例えば、新宿起点の私鉄沿線(小田急線・京王線)や池袋起点の私鉄沿線(西武線・東武線)、品川を起点にした京急線や北千住を起点にした東武伊勢崎線など、沿線を決めて店舗展開する考え方です。

無論、エリアと路線を組み合わせて展開を行う企業様も多く、城西地区×小田急線沿線や城北地区×東武東上線、から店舗を展開する方法も出店戦略のひとつです。特に独立開業の1号店や店舗事業1号店の場合は、社長や責任者の負担が大きいため、自宅から通えるなどの前提条件により決定する場合もあります。

多店舗化を目指す際は、売上を上げない本部(管理部門)は人材が手薄であることが多く、ドミナント戦略(集中的に出店)で店舗展開を行うことで、管理し易くするメリットがあること、同じエリアや同じ沿線に店舗展開することで、認知度を上げやすい、というメリットがあります。

どのエリア、どの路線を選択するかによって、1F路面店の1坪あたり家賃単価違い、客層も違います。そのため、開業予定の業態をどのエリア・路線で展開して行くのかを決定することは、その後の展開を見据えて出店戦略の重要事項になります。
*次回説明する商圏調査を出店戦略と一緒に行うこともあります。

2-2:事例

事例1)串カツ田中
創業メンバーお父さんの秘伝のソースを元に初めた串カツ屋
1号店は世田谷線世田谷駅の住宅地に2008年に出店しました。その後、城西地区の住宅地エリアを中心に展開を進め、7年後2016年のマザーズに上場します。
創業3年目には直営店をFC化し、FC展開を開始。上場前2015年の決算書によると流動比率141%であり、業界平均(79.8%)を大きく上回ることからも、住宅地という一見集客しづらい立地で収益モデルを作ってきた、とみることができます。2022年6月にはアメリカポートランドに1号店を出店したことでも話題になりました。
このように、損益分岐点が低い業態を確立し、競争の少ない住宅地からドミナント的に展開し、土台を固めてから都心駅に出店して行く方法はリスクが少ない展開方法と言えます。

事例2)魚真
世田谷を拠点とする魚屋さんが始めた魚居酒屋
経堂の魚屋さんが始めた魚真1号店は下北沢でした。そこから城西地区を中心に展開を始めます。昭和24年に創業した魚真(魚屋)は、魚しかない居酒屋をコンセプトに確実に店舗を増やしてきました。店舗数が10店舗と小規模チェーン店ながら魚が美味しい居酒屋として認知度は高い印象です。

事例3)魚金グループ
新橋を拠点とする魚屋さんが始めた魚料理を主軸にした飲食グループ
1995年に1号店を新橋に出店。その後、ドミナント戦略で新橋を中心に城南地区から店舗展開を行い、2022年現在50店舗以上を展開する。魚真と同じく魚を主軸に和業態・イタリアン業態で展開をしているが、以前社長自ら築地で仕入れを行っているとインタビューで答えていましたが、現在、毎朝仕入部が築地で直接買い付けをしている、とHPに記載されています。

 このようにどこのエリア・沿線に出店するかは、首都圏から地方へ出店する場合も重要です。例えば大阪への出店を検討する場合、梅田(大坂)から難波までは御堂筋線でわずか8分ですが、客層は随分違います。また、東京と違い大阪エリアでは、JR駅と私鉄駅や地下鉄駅が離れており、その移動区間が商業施設として機能し大きな集客をしています。(例:Whity うめだ➡地下鉄谷町線/御堂筋線・阪神電鉄・阪急電鉄・JRを繋ぐ)
東京の新宿駅や池袋駅のように駅自体が巨大で、地下街に小規模のショッピングセンターができている状況とは違い、最近の東京駅の地下商業施設開発に近い商業施設が大阪エリアの地下街です。(寧ろ東京駅が真似ている?)

2-3: どんな物件状況に出店するか

出店先物件は大きく分けて、
① 一般路面ビル物件
② ロードサイド物件
③ 商業施設(デベロッパー物件)
の3つがあります。

①一般路面ビル
飲食ビル・雑居ビル(ソシアルビル)・オフィスビルなどです。最寄り駅や立地・商圏環境によって交通量・家賃等が変動します。
②ロードサイド物件
幹線道路、国道、県道による交通量の違いや、近くに大型SCや病院・公共施設などのトラフィック・ジェネレーター(TG)の有無で交通量が変わりますそのため、周辺環境は特に重要視され、物件への侵入のし易さや視認性(看板位置・道路の中央分離帯)などチェックが必要です。
③ 商業施設
駅ビル・百貨店・駅近SC・郊外型SC/郊外型商業集積タイプ があり、施設(館:やかた)自体が大きな集客力を持ちます。集客へのメリットがありますが、大手デベロッパー物件は工事区分や契約内解約の違約金発生があります。

商業施設への出店についてご相談を頂きますが、スタートアップ企業や小規模事業者にはお勧めできません。デベロッパーは常に新しい業態を探しているため、小規模事業者にも出店のお声がけをしますが注意が必要です。
理由は2つあります。
① 出店費用が一般路面店の数倍掛かること。
② 殆どの商業施設の場合、売上上納制である / 一部施設に例外あり
売上上納制とは、日々の売上をSCの管理部に入金し、月に2回家賃や水光熱費・販管費(広告費・駐車場負担金)が引かれた上でデベロッパーからテナントへの入金されます。そのため、売上金の回収に45日掛かります。
そのため、毎日の売上で仕入れを回しているような小規模事業者はキャッシュフローが回らなくなる可能性があります。経営母体が出来上がり、キャッシュフローに余裕が出来た段階で出店を検討する戦略が賢明です。
経営土台が確立し、地方展開を行う段階なら、駐車場台数の多いショッピングセンター(リジョーナル型)への出店を検討などをお勧めします。

*コロナ前に持ち込まれたM&A案件の多くが、4店舗目程度で商業施設に出店しキャッシュフローが回らなくなり困窮した案件でした。商業施設の途中撤退は、違約金の発生や撤退費用が高額なことで金銭的負担が大きい特徴があります。そのため、自力での契約期間半ばでの撤退ができず、売却先を探す選択が見られます。

多店舗化を目指すならば、このように、自社の業態の客層を意識した上で、エリアや沿線を選定し、どの様な物件状況に出店するか、を検討し戦略的に出店を進めることをお勧めします。

次回は商圏調査・物件調査について書きます。

店舗開発のお仕事について、会社員時代の3つのチェーンストア勤務時代から独立後のスパイカ(株)の業務内容までをマガジンに纏めています。

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