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巻頭言 すべての歴史は検証されるべきである、されど

 最近、Twitterでちょっとした炎上があった。火種は、高須クリニックの高須克弥医院長の「南京もアウシュビッツも捏造だと思う」というツイートである。これに関してはいわずもがなの結果がまっていた。医院長のツイートには「歴史修正主義者め」「ナチ擁護者」、はてには、「狂ったのか」といったたぐいのリプライが殺到した。それらひとつひとつにまじめに応え、ひるむことなく自説を通す医院長の姿勢が印象に残った。
 字数制限280文字という Twitterの性格上、どうしても言葉足らずになるのは仕方がないが、前後のツイートを読む限り、医院長は、ナチスによるとされる「ガス室による大量殺害」を科学的見地から疑問視しているのであって、決してナチスのユダヤ人迫害それ自体を否定しているのではないのは確かである。
『すべての歴史は検証されるべきだと思います。』という医院長の主張は何も間違っていない。現に、長い間、ナチスの仕業と言われてきた「カティンの森虐殺事件」の真犯人が、ソ連共産党であることが近年「検証」の末に明らかにされ、「歴史」が「修正」されたではないか。
 ただ、ひとつ医院長のツイートに憂慮するとすれば、「南京事件」と「ナチス」を並列して語ったことである。両者はまったく別のイシューであり、「検証」に関してはそれぞれ別に行われなければいけない。ただでさえ、内外の反日勢力は、「旧日本軍」と「ナチス」を同一視する印象工作(「旭日旗」を「東洋のハーケンクロイツ」と言いつのるのは、その一例)に余念がないのである。高須医院長のツイートは「”ナチス擁護者”が否定する南京大虐殺」という形で彼らの工作に利用されかねないし、南京事件の虚構性について研究検証してきた人々の足元に小石を置くことにもなりかねない、ひいては「通州事件」の検証にも何らかの影響を与えかねないという憂慮である。
「通州事件」は歴史的な事実であり、「南京大虐殺」は虚構である。ナチスのガス室の存在の有無に関しては、今後の検証の結果を待ちたい。ただし、その検証は、ドイツ人、少なくともヨーロッパの人たちの手でなされるべきであって、われわれ日本人ではない。
 南京事件、慰安婦強制連行、集団自決軍命令、そして通州事件……われわれはそれらの検証と真実の発信だけで手一杯なのである。

初出・「通州事件アーカイブス基金」会報

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