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第9話:クロスメディア(メディアミックス)の新革命

「ウマ娘」はクロスメディア、あるいはメディアミックスと呼ばれるコンテンツである。それゆえ、アニメ、ゲーム、コミック、CD、ライブイベント等を縦横無尽に横断する。実際のところ、こうしたマルチタスクをこなすゲームタイトルは遥か昔の時代からあった。ドラゴンクエストはその典型例であろう。ドラクエの場合はライブイベントが演奏会にあたる。
 しかし、従来までのクロスメディアと「UMAMUSUME PROJECT」が異なる点は(あらかじめ)「ウマ娘」という名のキャラクターによる「個性」が著しく高い位置に設定されているということである。これは一人ひとりの「ウマ娘」が実馬と深く関係している為に起きる現象であり、このことは時としてまるで人間のアイドル集団さながらの単独出演(講演)や(企業による恣意的な)混成集団をも結成し、大規模なイベント実施を可能にさせる。この点に従来までのメディアミックスとの大きな違いが見られ、注目に値する。それは「クロスメディア分野の新革命」と言えた。

少し説明が分かりづらくなった。より深く理解を進めるために別の例を挙げよう。例えば、「ポケットモンスター」は「ポケットモンスター」としてメディアを横断する。その象徴として「ピカチュウ」が頂点に君臨している。また、「ドラゴンボール」は「ドラゴンボール」としてあらゆる媒体に登場し、その中心に「孫悟空」が存在する。さらに「名探偵コナン」はその名のとおり「コナン」が、「ワンピース」では「ルフィ」が作品のシンボルとなっている。ゲームコンテンツにおいてもおおよそ同様の傾向がある(見られる)。「ファミコンジャンプ」というゲームは今や古典である。
一方で「ウマ娘」のセンターは「スペシャルウィーク」である(となっている)が、ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」内において若干優遇されているものの(例:メインストーリー)全体として見れば一人のウマ娘に過ぎない。その証拠に育成ウマ娘たちとトレーナー(プレイヤー)による個別の交流=エピソードを描くシナリオがゲーム内にサイドストーリーとして存在し、「ウマ娘」の世界観に花を添えている。「ウマ娘」(担当声優含む)にはそれぞれ物語があるので、こちらもまるでアイドルグループの中からソロで活躍しているタレントのように「個」(人気ウマ娘、もともと人気声優)が動き、その力もまたゲームの存在価値を高め、サイゲブランドの基盤を支えている。

このように「UMAMUSUME PROJECT」は実によく作られている。アイドルホースと声優アイドルの合体。この視点は今まで見られなかった。この結束はキャラクターソングやグッズ販売において大きな成果をあげることができる。また、競馬ファンと声優アイドルファンを同時にプロジェクトに取り込めることも可能である。入り口(間口)がとても広い。運営側から見れば、もともと居た一頭のアイドルホース、一人のウマ娘、一人のアイドル(声優)にプレイヤーが熱意を示せばしめたもの。プレイヤーは手のひらの上で踊らされながら、それでいて熱を入れることができる。こうした熱気は何も一頭の馬や一人のウマ娘、人気声優に限らず複数にも跨り(内実はより複層的で)、やがて私たちは「UMAMUSUME PROJECT」というプレイヤー補完計画にいつの間にか染まる(沼にハマる)羽目になる。

今年流行った映画「トップガン マーヴェリック」は「ウマ娘」の人気キャラ「マヤ」(マヤノトップガン)とコラボした。その影響(効果)により映画の売上は大変好調だったという。このようなケースは今後もたびたび生じることが予想される。

追記)
古典的なクロスメディアは後付けといった装いが強いが、これも紛れもないメディアの横断である。

(2022.12.14)

参考資料:

宣伝担当に聞く「トップガン マーヴェリック」大ヒット要因…キーワードは“作品力、ウマ娘、胸熱”(「スポーツ報知」2022年9月18日)




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