ディス・イズ・ザ・ディ。
国内サッカーの2部リーグの最終節を舞台にそれぞれのサポーター達の日常をオムニバスに描いた短編集。ピッチの中にも外にも物語は転がっている。ありそうなチーム名とありそうなロゴマークを眺めながら架空の最終節を妄想するだけで楽しいが、22チームそれぞれに事情がある、という話。
今風に言うのならば「推し」がいるだけで生活が豊かになるという事だろうか。勝っても負けても最終的にポジティブになれるのが「推し」の強みかもしれない。これは「推す」しかないのではないか。
にわかだったりガチ勢だったり、純粋だったり邪(よこしま)だったり、腐れ縁だったりマスコットファンだったり地元愛だったり親の代からだったり、これでもかという位にサポーターの愛のカタチが描かれている。また2部リーグという卑屈さとなりふり構わずっぷりが絶妙だと思う。「とにかくうちに帰ります」のよく知らないロシア人のフィギアスケート選手にはまってく感じに似ている。
ドタバタ群像劇ではなく各話で描かれる主人公の成長と仄かな余韻は一読の価値あり。どの物語も素晴らしくてゆっくり噛み締めるように読みたいんだけど、何せ22チームが同時間軸で描かれているので、架空に次ぐ架空で一気に読まないと忘れてしまう。サポーターを応援したくなる不思議な読書体験だった。
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