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この世にたやすい仕事はない。

多忙な文章を扱う職場を辞め、「一日コラーゲンの抽出を見守る仕事」を求めて職安に相談した筈が、隠しカメラを使った家主の監視の仕事をする事になった私。平穏で重圧なく私生活にも影響を及ぼさずとにかく簡単な仕事…そんなものは存在するのだろうか。

脱力系なお仕事小説かと思いきや、ふざけつつも根が真面目で他人に流されやすくも正義感は持っている、そんな主人公が不思議な事件に巻き込まれそうになる話。サスペンスありミステリーありホラーありとどこで筆力発揮してんだよって程にバリエーション豊かな展開。そういえば転職って、知らないコミュニティにある日突然に放り込まれて雑に均される感じが、ある意味で非日常だと思う。変に儀式的というか。そういうもんで片付けられちゃう感じ。
てか動機よ(笑。確かに、これやって一生食っていけたらいいなとか、これやって一日いくら貰ってんのかなとか、そんなヘンテコな仕事は世の中には沢山あるけど、それぞれに実は闇が広がっていると考えるとゾッとする。

まさかこのテーマの小説でワクワクしてしまうとは思わなかった。相変わらずの津村記久子節で、ナナメな主人公には共感出来るし、妥協や迎合でもなくポジティブにやれることをやって成長していく感じは単純に尊敬出来るなぁと思った。説教も甘やかしも無いのでむしろ心がフラットな人は是非。


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