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豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件。

戦争末期、雪深い謎の実験施設で日夜ペダルを漕がされる二等兵達は、博士に「お前なんぞ、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえっ、この役立たずが」と叱責されてしまう。翌朝、密室で見つかったのは頭部から血を流した屍体、傍らには豆腐の欠片が散らばっていた。など、ユーモアと本格ミステリが交差した短編集。

しかし凄いタイトル。紛うことなくイロモノである。表題作の他にも、ケーキとネギと一緒に発見された変死体やら、特定の人物に偏った感情を抱く人工知能やら、猫やら、本格ミステリの範疇を越えてバラエティに富んだ作品集だった。ガチガチのロジカルを求める人には物足りないかもだけど、倉知淳の色々な作風を一冊で楽しみたい人にはうってつけだと思う。

横行する「ぶん投げたくなるヘンテコなミステリ」と一線を画すのは、著者らしさがしっかりと練り込まれている安心感にあると思う。時代や題材は変われど、ある種お約束なベタで丁寧に前フリしてから気持ちよく転がされる感じが心地好い読了感につながっている。


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