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読書の記録

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#石持浅海

フライ・バイ・ワイヤ。

フライ・バイ・ワイヤ。

これは近未来を舞台にしたSF青春本格ミステリ。宮野隆也のクラスに転入してきたのは病気で通学出来ない少女が遠隔操作する二足歩行ロボットだった。生身の人間と同じように振る舞うロボットの姿に戸惑いながらも心を通わせていくクラスメイト達。やがて定期考査の結果が発表されて…という話。

最初、誰の何を読んでいるのか…って気もしたけど、地味なディテールのリアルさが石持浅海らしくて良かった。デジタル化が進んでも

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カード・ウォッチャー。

カード・ウォッチャー。

サービス残業が常態化した株式会社塚原ゴムの研究所で深夜に起こった社員の転倒事故。サービス残業中の事故に労災は適用されるのか。労働基準監督局の臨検が通告され対応に大慌ての最中、倉庫から見つかったのは社員の死体?という話。

そうは言ってもサービス残業がなくならない世の中を知る者としては斬新なクローズドサークル設定にシビれずにはいられない。牽制し合い、擦り付け合い、かばい合い、社会人としての慣習がミス

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殺し屋、やってます。

殺し屋、やってます。

副業として殺し屋を続ける富澤が心掛けていることは、標的について調べすぎないこと。動機は疎か依頼人の素性さえ「余計な情報」として興味を示さない。そんなビジネスライクな殺し屋が遭遇した些細な謎について考察を始める。失敗の要因を少しでも減らすために。

殺し屋が日常の謎を解く短編小説。
小さな綻びから謎を紡ぎだしてロジカルに捌いていく爽快感は「アイルランドの薔薇」に通じるものがある。殺し屋の仕事の流儀が

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