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アラスカおじさん

街に繰り出していると、すれ違う人の中に
「この人どっかで見たことあるなー」

って時ありますよね。

そして、ふと


そうだ!コンビニバイト時代に常連でいたアラスカおじさんだ!


と思ったのでバイト時代の話をしようと思います。

(ちなみにコンビニはファミマでした。)


補足ですが、僕は人から舐められやすい人生をずっと歩んでいて、何かと雑魚扱いされたり、いじられたり、必要以上に『ちゃんと出来る?』と念を押される事があります。


なので、色んなバイトをしてきましたが出来ないヤツのポジションにいる事が多かったです。

(まぁ実際に出来てないのかもしれないが。)


しかし、このコンビニバイト時代では

絶大なる信頼を得て初めてバイト上で『頼りになれる人』になった 

という前置きを丁寧に割れないよう置かせていただきます。


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遡ること約12年前、僕が大学2年生の時コンビニバイトを始めました。

できたてのコンビニだったので、ほぼオープニングスタッフとして働いていました。

(パンみたいに言うな。)

そのできたてアツアツのコンビニなもんで、まだバイトの流れや決まり事など全て手探りだし、店長も初めてコンビニの店長をやるという


全てが初めてで出来たコンビニでした。


なので指導内容は、ただマニュアルを口頭で説明した後すぐに現場に放たれ、ベテランが側で指導することなく、その場で対応して覚えるというライオンみたいな教育環境でした。


僕のシフトは
主に20時〜24時の準夜勤と、23時〜翌朝5時までの夜勤の時間帯でシフトに入っていた。


今はどうかわからないが、当時そのコンビニの夜勤はワンオペで基本的に1人で回す。

なので、わかんないことあったら店長に電話をするか従業員ノートを読むことを言われ、何とか1人”ライオン方式”で乗り切ってやっていた。

(ちなみに店長の電話出る確率は3割程度で、野球なら好成績だがコンビニでは頼りにならんかった模様。)



そして順調に仕事も覚え、ミスが減ってきて慣れてきた冬の話。


とんでもないお客が、午前3時過ぎに訪れ、初対面することに。


そのお客はファミマのあのメロディーが流れると共に開口1番、

「お兄ちゃん、アラスカくれ」

と言い放った。



納品をしていた僕は、

(え、何?州を売るってこと?)
なんて思っているとそのお客が畳み掛ける。


「アラスカっつってんだろ!早く出せ!」


(何言ってんだコイツ!怒)
と心の中で思いながら
「はい、すいません少々お待ち下さい」
と、マニュアルで返しながらレジへ。


そしてまた

「アラスカ出せ」とそのおじさん。
結構ピリピリしてる。

も「…アラスカ…?」

客「そうだ、アラスカくれ」

(お前それしか言えんのか)

も「少々お待ち下さい」

と、素直にそれは何ですか?と聞けばいいものの、知ったかぶりとテンパリの結果「アラスカ」という単語からホットスナックの冷凍庫に手を掛ける。

(おそらく寒さから連想された模様。)

すると
客「お前ぇ何やってんだ!?」

とすかさず檄が飛んでくる。

そしてテンパリが最高潮に達し、どうしようと考えた結果

従業員ノートに手を伸ばした自分がいた。



しかし、

”初対面のおじさんにアラスカと言われた時の対処法”

なんていうもんはあるはずない。

モタモタしていると、

「…はぁ、おめぇもわかんねぇのか!アラスカってのはタバコなんだよ!オレがいつも買ってるタバコだよ!最近のヤツはアラスカ言ったら、大抵そんな反応すんだ。昔は流行っててみんな吸ってたんだけどよ、最近はオレしか吸ってねぇ」

それを言われた瞬間、僕は頭にきて

(そんな事言われても、大抵そんな反応するってわかってるならそっちから歩み寄ってくれれば良いし、番号降ってあるからそれ言ってくれればいいじゃねぇーか!!)

という気持ちを込めて

「失礼しました。」としっかりマニュアル通りの言葉を言い放ったのだった。


そして怒られながらアラスカを渡し、お会計を済ませそのおじさんは帰っていった。

”何なんだ、アイツ…”

その事で頭一杯になりながら残りのバイト時間をこなしていく。

そして早朝バイトの人が来たので、引き継ぎをしてる時にその”アラスカおじさん”の事を話した。

すると、

早朝バイト「出た、”アラスカおじさん”だ」

(やっぱり”アラスカおじさん”とあだ名を付けられてた模様。)

その方はもうすでにアラスカおじさんの被害を受けていたので、理解が早く笑いながら聞いてくれたし、アラスカおじさんは絶対にアラスカしか買わない事を教えてくれた。

(”アラスカ”って書き過ぎてゲシュタルト崩壊ブッかま。)


ある日のこと、、

深夜2時過ぎ、客足が途切れ店内で1人雑誌の納品をせっせとやっていると、ガラス越しにアラスカおじさんが近づいてくるのが見えるではありませんか。

この前はボロクソ言われたので、ちょっとカマしてみようと考える望月従業員。

というのもすでに情報としてこの”アラスカおじさん”は名前の通り(僕らが勝手に付けましたが。)アラスカしか買わない。

なので、レジに来る前からもうアラスカを用意しておいて

「アラスカくれ」

の言葉の前にアラスカを出してやるという

超食い気味アラスカ提供作戦

を決行することにしたのである。


そんな事を知らず、ファミマのメロディと共にターゲット入場。

もうすでにレジ横にアラスカセット完了。

そして、、

アラスカおじさん「アラス…」

も「こちらですね」

ピッ!

も「440円になります」

作戦は見事成功し、アラスカおじさんは100%キョトン顔ブッかま。

さぁなんて言うのかな?なんて身構えていると、、

アラおじ「おぉ、わかってんじゃねぇか兄ちゃん。そうなんだよオレはいつもこのアラス…」以下省略。

結果的にこの行動が嬉しかったみたいで、ご満悦でファミマを去っていったアラスカおじさん。

その日以降、僕はアラスカおじさんが来る度にアラスカを用意し、お会計を済ます。それがきっかけでたわいもない会話もしたりしてすっかり仲良くなった。

(案外話すといい人だった模様。)


そして1年経った頃。

夜勤の仕事にも慣れ、必要最低限の仕事は深夜3時前に終わるようになり、退勤の5時まで暇を持て余すという状況になった。

最初はバックヤードに篭り、スマホゲームやYouTubeなどを観て時間を潰していたが、深夜でお客さんがあまり来ないとはいえ、警戒しながらで集中できなかったのと、少しばかりの罪悪感でソワソワしてしまいこの方法で時間を潰すことは性に合わなかった。

時間が経つのが遅いので

”何かしよう”と思い、店内の掃除と窓拭きを始めることに。

(根は真面目なんです。)

ある日、そんな感じで暇つぶしに窓拭きをしていると

?「何だ、若けぇのに窓拭きなんかしてんのか!?」

そう声がするので、振り向くとそこにはアラスカおじさんが。

も「あ、はい。暇なもんで。笑」

アラおじ「オラァ、このコンビニ結構来るけど、ちゃんと窓拭きしてんのお前ぇが初めてだ。中にはマシなヤツがいるもんだな!」

そういっておじさんなりのお褒めの言葉を一方的にいただき、いい気分になっていると、、



アラおじ「そんな事よりアラスカくれ」

(そうですよね、その為に来たんすもんね。)


そしてアラスカを売り、窓拭きの続きをし、この日の勤務時間をこなした。



そしてある日の準夜勤。

準夜勤の日は店長と会うことが多い。

なぜなら店長は準夜勤に業務連絡や他愛もない会話などをした後、24時前に退勤するのがお決まりだからだ。

この日もそのルーティーンに付き合うのかと思ったが、この日は少し違った。

僕がコンビニに着くやいなや

店長「望月くんちょっといい?」


え、何この感じ、、オレ何も悪いことしてないよな、、

必死に何をしたのか過去の自分に問いただし、”こう言われたらこう言おう”と言い訳を考えながらバックヤードへ。

(気が弱いのでこういうとこあるんですよね。)


店長「望月くんコレあげる。」

バックヤードに着くと、急に店長から白い小さなポチ袋を渡される。


中には500円分のQUOカード。

店長「いや、いつもアラスカ買ってくれる”アラスカおじさん”がさ」

(あ、店長もそう呼んでるんすね。)

店長「若いのにちゃんとサボらず窓拭きやってるヤツがいるって言ってきて、詳しく聞いてったら望月くんだったからボーナスとしてあげるよ」



アラスカおじさぁぁぁぁぁん!!!!


まさかあのおじさんが良い方の告げ口をしてくれてたなんて。。

その後、店長から望月くんの後は床がちゃんと綺麗だの、パンコーナーの並び方が綺麗だの、レジ周りが綺麗だのここぞとばかりに溜まっていたお褒めの言葉が溢れ出てきて溺れかけました。

(その都度、褒めてくれてもいいですよ店長。)

という事で、僕はこのコンビニバイトで店長からの信頼を得て、初めて頼りになる存在になり、僕のバイト人生初の”出来る人”のポジションになったのです。

(まさかアラスカおじさんにアシストされるとは。)


この出来事があった後、アラスカおじさんが御来店した時に

も:そういえば、僕が窓拭きしてること店長に言ってくれたんすね

と言うと

アラおじ:あぁ、そんなことあったか?

なんてとぼけるアラスカおじさん。

も:そのおかげで500円分のQUOカードもらったんすよ!


アラおじ:お、じゃあそれでアラスカ奢ってくれや!笑


”ちゃっかりしてんなアラスカおじさん”なんて思いながらキョトンとしていると

アラおじ:冗談だよ!良かったな!

そう言っていつも通り現金でお会計を済ませ、帰っていきましたとさ。

(ありがとうアラスカおじさん、あなたのおかげで頼れる人になれたよ。)


ってな感じでふと、僕のバイト時代の話をしてしまいました。

他にも書いて欲しいのがあれば、コメントでリクエストくださーい!


最後まで読んでいただきありがとうございました🙇‍♂️









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