県知事は〝悪〟か?

巷では、神奈川のとある町に給水支援に来た自衛隊が県に追い返されたと大騒ぎしている。僕のFacebookでもお祭りだ。

アエラの記事によると、
台風による断水の被害を受けたその町の町長さんが、すでに情報交換をしていた町から一番近い駐屯地に給水をお願いした。駐屯地は「県の要請がなければ動けないから、県へ要請するように」と町長にお願いした。

しかし県は「自衛隊に要請する前に、まずは県や日本水道協会に支援を求めるべきだ」などとして、事実上断っていた。(←アエラ記事より抜粋)

自衛隊は派遣要請を見越し、夜を徹して準備をしてその日の早朝には町役場へ到着していたという。しかし県からの要請は出ていなかったために、朝8時に撤収を決めた。その際町長は部隊に対して謝罪をしたという。
それから6時間後、県の給水車が到着し、給水支援が始まった。

この件に関して町長は
「自衛隊とは日頃からおつきあいしており、すぐに支援に来てもらったのに、申し訳ないと謝りました。災害派遣要請の手順があることは分かるが、せっかく来てもらったので、住民に水を配ってもらえたら良かった。県には手順とかメンツがあったのかもしれませんが、もっと柔軟に対応して欲しかった」(←アエラ記事より抜粋)
と語っている。

以上が事の成り行きだ。

この件に対しネットでは、県や県知事に対して罵詈雑言の嵐だ。「知事は腹を切れ」とか「対応した職員の氏名を公表しろ」とか言いたい放題である。

しかし県側にも言い分がある。
「県にも給水車がある。日本水道協会にもお願いしたのかと町に確認し、まずは県や協会に要請しましょうと町には伝えた。それで足りなければ自衛隊に要請するのが手順。県としては自衛隊が町に到着していたことは知らなかった」(アエラ記事)

県側は、
・給水車を派遣できる用意があった
・県で派遣できるので自衛隊に給水支援を要請する必要性がなかった
・自衛隊が到着していたことは知らなかった

というわけだ。

自衛隊を要請できるのは県知事である。
いくら駐屯地司令と仲良くても町長が勝手に呼ぶことはできない。
これは記事にもあったが文民統制の観点からも、混乱を防ぐためにも必要なルールだろう。県内の災害の情報は県に上がって来ていて、町では他地域のどこに何が必要かなんて知る由もない。

仮に駐屯地側との情報交換で町長が他地域の状況を知った上で頼んだのかもしれないが、連絡が通じている段階ではまずは県と調整するのが筋だろう。今回のことが許されるなら災害が起きた時、自衛隊の支援を受けられるのは駐屯地と仲の良い自治体の長のところだけとなってしまう。それでは支援システムの崩壊だ。権力のバランスも崩れてしまう。

6時間後に到着した県の給水車に遅すぎるといった非難も見られたが、その日の昼頃には支援を開始できているのだから、遅すぎるとは言えないだろう。

以上のことから巷が騒いでいるように、対応した県職員が悪いとか、県知事が悪いとか、言えないのではないか。

むしろ派遣要請は知事しかできないということを自治体の長である町長が知らなかった事の方が驚いた。今回のことに関しては、町長が最初に県に対して普通の手続きを踏んでいれば起こらなかったのではないか。

柔軟に対応しろとの声も、県側が自衛隊が到着していたのは知らなかったと答えているのだから、柔軟な対応などそもそも期待できなかった。

何にしても、誰が言ったか「県が支援の水を捨てさせた」と印象だけが駆け巡るのは県の職員や知事に対して気の毒だ。

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写真)本文とは関係ありません。今日の散歩の様子。水が引いた道路を走り回ってドロドロになるハイジ。


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