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大陸の「古装ラブコメディ」を見る前に知っておきたい「10のひな型」

中国の古装ラブコメディにはお決まりの「型」がある。

例えばフィギアスケートの構成のように、ジャンプ、ステップ、シークエンスを織り交ぜた型を楽しみながら、芸術点(オリジナリティ)を見出すのが醍醐味でもある。

使い古されたように見える「型」でも、しばしばウルトラCなミラクルが起きることがある。

ドラマを構成するのは、こんな型だ。

1:狭い場所

物語序盤、主人公の2人は体感99%の割合で荒野の落とし穴に落ちたり、野生の動物用のワナにかかったり、敵の仕掛けにハマったりして閉じ込められる。

狭い空間で密着せざるを得ない2人。男主が体を張って女主を守る風景を見ると、古装の舞台は堂々と「マッチョな価値観」を賛美できる領域なのだな、と思わされる。

2:身バレを防ぐ鉄壁アイテム「変装」「男装」「仮面」

仮面は変装のテッパンアイテムだ。

仮面をかぶっている限り、絶対に正体に気づかれることはない。でも、声とかしぐさで相手のことわかりませんかね?

…なんてやぼなことを思ってはいけない。つけヒゲや男装もしかりだ。

3:仰々しいワイヤーアクション

物語の前半は、今後も継続して見てもらえるよう、アイキャッチなシーンが必要だ。

ファンタジー要素が薄いドラマであっても、主人公が超人的なジャンプ力を見せつけてくることがままある。人ひとりを片手で持ち上げて、平屋の建物を軽々と飛び越えるくらいのジャンプ力が主人公には必要らしい。


4:時代考証は無視の「小道具・大道具」

ラブコメなら「萌え」を提供できれば、時代考証は二の次でよいらしい。

ジャラジャラピアスにプラスチック製品、使い捨ての紙エプロンに、夜店デートで見かける現代風の雑貨。

それらしく見えるコスチュームに身を包んでいるなら、何を使ったっていいのだ。

5:都合よく打ちあがる「大型花火」

2人の思いが通い合った瞬間に、打ち上げ花火(現代劇でもテンプレート)が空に打ちあがる。

特30号くらいの大型打ち上げ花火は、この頃あったろうか、いやない。

なんてことは考えたら負けである。時々、豪華な仕掛け花火まで登場したりするので参ってしまう。「キュン」を提供できさえすれば、時代考証は不要なのだ。少なくともラブコメディでは。

6:疲れたらどこでも秒で寝る女主

今日はいろいろあって疲れた、酒に酔ったなど、もろもろの理由で急激に眠くなる女主。

そんなとき、居眠りする場所は男主の肩に限る。きっと懐に特定の人物だけに効果を示すステルス睡眠薬でも練りこまれているのだろう。

7:転んで足首を痛めるとハァハァで治せる

中国のラブコメディでは、転んで足をひねると、必要以上に心配してもらえる。運よく高位の人物におんぶしてもらえることもある。

時々、素人なのにハァハァと手のひらに息を吹きかけてからマッサージするだけで治しちゃうゴッドハンドを持つ登場人物もいるのだが、あのハァハァってなんのためにやるんだか、よくわからない。

とにかく、ハァハァすると、痛みは軽減するのが大前提だ。

8:酔っぱらいは無条件でかわいい

悪酔いする人は面倒だ。

でも、華流ラブコメディの主人公は悪酔いの仕方がワンパターンだ。正直になるか、スキンシップしがちになるか、眠りたくなる……の3パターンに限る。

酔って意地悪をするとか、全裸になるとか、馬車の運転手に暴言を吐くなんてことは絶対にしない。

9:勇敢さがアダに…女主は「飛んで火にいる夏の虫」

女主は、元気・明るい・健気がテンプレート。

加えて、よく言えば勇敢、悪く言えば向こう見ずで視野狭窄の正義感に駆られた女主は、1度は敵の陰謀に引っかかる。行かなきゃいいのに……。という声は届かない。ゴタゴタに巻き込まれて何らかの犠牲を払うが、最終話にはきっと丸く収まる。

10:婚礼は赤い衣装で

ゴタゴタが収まり、終盤に近づくと登場するのが、婚礼用の赤い衣装。
オープニングかエンディングの歌の中で赤い衣装を着ている2人が出てきたらハッピーエンドの兆しだ。

ほとんどのドラマはハッピーエンドだ。しかし、時々「時代考証とか全無視でやってきたのはハッピーエンドのためじゃなかったのかよ」というバッドエンドもまれにある。

お決まり型を全て詰め込んで、バッドエンドで個性を出そうという目論見は、たいてい酷評される。

先が読めるから、型がわかるから、先行き不透明な時代にほっと一息つける時間でもある。

お決まりパターンを楽しみながら、それぞれのオリジナリティを楽しんで欲しい。

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