戯言_230413


痛みはない。
しかし、痒みはある。

辛くはない。
しかし、苦みはある。

取り立て後悔があるわけでも、不安があるわけでもない。
ただ、現在にいることに関する違和感だけ、ある。

もちろん私とて、何もせず二十余年生きてきた訳ではない。色々の違和感を知っている。

Tシャツを前後逆に着ていたときの違和感とか。
部屋に忘れ物をして妙に荷物が軽かったときの違和感とか。
普段より早く学校から帰ったときの違和感とか。
親がテレワークで家にいたことの違和感とか。


違和感というものは、なにかに気づくのに先行して感ぜられることが多い。

だから、今ここにある違和感のあとにもきっと、何らかの気づきがあることだろう。

私はこれから、一体何に気づくのだろう。
それとも何も気づかないのだろうか。
この違和感を忘れるまで。

慣れてしまうまで。


原因に気づいた瞬間に、その違和感は質感を失う。気づきに吸収されてしまう。

違和感を持ったままでいることは、逆に言えば贅沢だ。

何かが違う。けれども何なのかわからない。
わからないと大変になるのかもしれないし、一生わからなくてもいいのかもしれない。


今夜はこの、シュレーディンガーの猫みたいな感覚を保持したまま、一人で痒がっていたい。

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