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孕石狆兵
2020年3月30日 02:08
海を見ていた。夜の海だ。どーんどーんと波が打ち寄せる音以外は無音だった。その人と初めて待ち合わせて会った時、彼女の乗る電車は人身事故の影響を受けて大幅に遅れていた。知らない土地で知らない人の骨や肉が悲鳴と一緒に車輪に絡まって知らない駅員や知らない警察官たちが現場検証をしたりビニール袋に肉片を拾ったりしているファンタスティックな想像が僕を尻込みさせていく。知らない夜の出来事。彼女が僕の肉片をビニール