跳躍

きみが月へとジャンプした日、すこしだけ剥がれ落ちた月面が宙を舞い、ひかりのように降り注いだのかもしれない。覆い尽くされたそこは仄暗いのに、照らされているようなぬくもりがあった。陽光と言うよりは月光に近い、銀色の静けさを纏っていた。白夜がきたら、終わってしまう。だからいつも少しだけ、俯いているのだろうかなんて、わかりやしない真実を捏ねくりまわして愛でている。全く厄介な愛だ。愛だなんて呼びたくもなかったのに、私はまだ辞書の項を増やせずに。

好きとか嫌いとか愛とか憎とか、括ってしまうことすら惜しいのだ。象ってしまいたくなかった。だけれど好きは好きにしかなり得ない、私は空を飛べない。


高く飛んだきみの背中をずっと、一点に見詰めている。窮屈なんかじゃないよ、きみの背中は世界へ通じている。だからたまに案じてしまうこの愚かしさを、わからない距離にいつもいて。ずるいのはいつだって、この好意だね。


愛だなんて呼ばないから、ゆるさないでね、絶対。


(下書きより)

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