見出し画像

60代の店じまいは早すぎる!閉店セールを喜ぶ人!悲しむ人!

閉店セールに集まる人だかり、そこに集まる人たちの目的はだいたい2つに分けられる。

一つは在庫処分の投げうり価格を期待してのものだ。いつもよりも安く品物が購入できる。物理的な欲求を満たすことが目的となる。
 
そしてもう一つは惜別の思いによるもの。過去の体験や、いつかは体験しようとしていたことが、このさき再びはないと感じた時、人はその店を訪問する。この場合は心情的な欲求と満たすためである。
 
閉店が決まって、惜別の思いでお客様が集まる後者の店というのは、まだまだポテンシャルを持っているということになる。1杯800円のラーメンを半額にしなくても、その味を美味しいと感じていた人は閉店を決めたラーメン店に集まる。

宿泊料金を割り引かなくても、その旅館に思い出のある人は、閉店を決めた旅館に泊まりに来るだろう。

過去の体験がなくても、いつかは体験したいと思っていた人も然りである。
 
閉店する理由は様々であろうが、惜別のために集客できる店の閉店は実に惜しい。これが、もし
売上不振が理由であったなら、その店は本来の力を発揮することができていなかったということになる。これは非常に勿体無いし残念なことだ。


スーバー銭湯の閉店セール


前職で僕は、温浴事業の責任者として勤めていた。 スーパー銭湯を3施設運営していたが、そのうち1号店を閉店することになった。立ち上げから関わり、愛着のある施設ではあったが、築20年を境に継続か否か悩んだ末の決断だった。

オープン当初は珍しさもあり大繁盛であったが、次第に競合店も多くなり、集客は往年の半分以下にまで落ち込んでいた。施設、設備の老畜化と、そのためのメンテナンスコストも次第にかさむようになっていたのだ。
 
閉店を発表すると、かつてのお客さまが多く訪れてくれた。

今は近くにできた施設によく行く人や、趣向が変わってサウナ付きのスポーツジムに通い出した人、子供が成長し日曜日の過ごし方が変わった人、久しぶりに現場に立つと、懐かしい顔のお客さまがまるで同窓会で旧友を見つけたかのように声をかけてくださった。
 
この時ばかりは、閉店の判断をしたことを激しく悔やんだ。確かに老築化は厳しくコストもかかるようになった。収支も厳しい状態だったが、30年、40年続けている施設だって多く存在している。もっとやりようがあったのではないだろうか?過去の良い時ばかりに目が行き過ぎていて、根本的に見直しを行うべきだったのではないのだろうか・・・
 
惜別の思いで来店したお客さんたちは、最後の体験をどのように感じながら入浴されたのであろうか。懐かしい思いよりも、古くなって閉店も仕方ないよね、と思われたのであれば、それは運営の責任者として失格だったと言ってもよい。
 
そんな風に感じたのを思い出す

60代店じまいには早すぎる

さて、このブログのテーマは60代を面白く生きることなのだが、先の閉店をするお店と人生を重ねて考えてみたい。 20年前に最新の設備で建てられた施設は、開店後最盛期を迎え、やがて成熟期を迎えた、ここから先は、メンテナンス費用もかかるし、騙し騙しの運営になる。

 間も無く還暦を迎える自分は、ロービジョンになり、高血圧や尿酸値異常など御多分にもれずに健康診断のたびに、何らかのアラートが表示される。

20年前とは明らかに違うのである。
 
僕は、施設を運営をこの段階で諦めた。諦めてもっと効率の良いもの、あるいは20年前に手にしたものと同等、もしくはそれ以上のものを求めたからだ。

自ら一つの施設の運命に終止符を打ったわけである。
 
その後に、運営側からコンサルタントに転身して、業界を見てみると、多くの施設は確かに20年、30年と経つうちに輝きが褪せてゆくのだが、どっこい時代と共にハードを守り、ソフトを磨き、地域に愛され続けてきている施設も多くある。
 
ハード面のメンテナンスには3つの考え方がある。

ビジネス用語では、定期保全・予防保全・修理と呼ばれる。
 
定期保全は定期的期的に行うメンテナナンスのことで、人間でいえば定期検診や人間ドックのことである。
 
予防保全は、故障を未然に防ぐメンテナンスのことで人間で言えば、ジムに通っての運動や食事の管理、サプリメントの摂取などにあたる
 
修理は、文字通り、故障をして行うことで、人間に例えると入院や手術になる。
 
ビジネスでは、当然のこととされ、しっかりした企業であればあるほど定期保全や予防保全は計画的に行われる。その分、そこにかかる経費は大きくなる。
 
事業規模が小さく、閉鎖的な温浴業業界ではこの考え方がしっかりしている施設は少ない。どうしても目先の出費を抑え、故障をしてから行う修理が多い。従って、施設の耐用年数は短くなるのだ。
 
ここの考え方がしっかりしている施設は30年目、40年目でも運営を続けることができる。
 
仕事や、事業は、継続することを諦めて別の道に進むこともできるだろう、しかし人間の体はそうはいかない。健康でなければ生きるのは辛くなるし、生きるのをやめればそれは死を意味する。
 
違った挑戦をするにも、やはり健康であることは重要だ、40代と同じ体力は残念ながら持ち合わせていない。
 
次にソフト面だが、設備にだけ頼っている施設は、新しい設備や規模の大きな施設が近くにできる度に自店の客数は減少を続けることになる。
 
温浴施設はレジャー機能、地域コミュニテー機能、健康そくしん機能の側面がある。

設備面では新しい施設に敵わなくても、通いやすいアットホーム感や、健康のための日常の温活活動拠点、地域の商店や公共事業との連携などに力を入れて、派手さはなくとも常連比率を高めて安定している施設も多くある。

60歳からは、地域貢献や新たな取り組みによる人脈を広げたり、人間関係を構築してゆく新しいフェーズと捉えても良いでしょう。
 
60代という年齢は店じまいするには早すぎます。これからの20年は閉店セールで人を集める生き方、つまり損得勘定だけで生きてゆくよりも、この先20年、人によっては40年後に、良い人生だったと思って人生を終えたいものですね。

僕らのポテンシャルはまだまだ枯れてはいない、一緒に楽しんでいきましょう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?