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一週遅れの映画評:『スクロール』明日の話をせい、未来の話を!

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『スクロール』です。

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 よく邦画のダメなところって揶揄されるじゃないですか。主演がアイドルばっかりだとか、とにかく何かを叫ばせてるだけだとか。でも実は私そういうの、そこまで嫌いじゃないんですよ
 理由としては2つあって、まずそういう作りの作品って「ここが見せたいんです」っていうのがすごくわかりやすい。こんな風に毎週映画の話をしてると、そういう「作品の中心はここですよ」って明確にしてくれるのは助かるっちゃあ助かるわけです。こう見ていて、さすがにこりゃ話せるとこねぇぞ……みたいな気分になっても、とりあえずその中心部を好意的に拾ったり、それも難しければ適切にdisったりはできるので。
 
 もうひとつは、そういう作品群って決して目の肥えた視聴者を相手にしてるものじゃあないわけですよ。もう、役者が目当てで見に来てたりとか、初めてのデートで映画どころじゃないとかw そういう観客だって少なくない、っていうか9割そう。文句言ってんのは残り1割の異常者なんですよ、私含め。で、さっきの話とも繋がるんですが、メインの層は”映画”とがぷり四つに組み合ってるわけじゃあないから、わかりやすいことって大きな利点なんです。
映画のあとにごはん食べながら、大して真面目に見ていなくても映画の感想で話が持つ。それが達成できれば良いわけです。でね、私は思うわけですよ、そうやって「映画を見ること」が楽しい思い出になれば、その中から数%が映画好きになるかもしれない。単館系のさシャレオツフランス映画を腕組みしながら見て、「監督の前作からして、あそこの演出意図はさぁ」みたいにTwitterへ書き込む人間に成長する可能性があるわけよ……それ成長か?w まぁまぁ、とにかくそういう入口としての役割というか有効性みたいなものがあると思うんですよね。

 逆に私が苦手な邦画って「サブカルっぽい”空気”しかない作品」で、なんかこう群像劇がやりたいのはわかるんだけどオシャレぶって明確な盛り上がりポイントを作らないから、なんとなくボンヤリしたまま終わったり。
無音or電車の音orなんらかのBGMが大き目に鳴っていて、主人公とかヒロインの口パクを映して「このセリフは視聴者の想像にゆだねました」とか言っちゃうのとか。
あとはあれね、こう良いんだか悪いんだか/正しいんだか間違ってるんだか/納得してるんだかしてないんだか、みたいな微妙オチをつけて、それを曖昧な表情をしてる主人公のアップで終わらすヤツね。「最後は俳優さんの力をお借りして、よい作品を一緒に完成させることができました」みたいなインタビューがあるヤツ。
 まぁ具体的に言えばおととし話した『DIVOC-12』って作品なんですけどw
 https://note.com/spank888/n/nb0b4eb04c146

 で、前置きが長くなったけど、この『スクロール』もまぁそんな感じ……男女4人がメインの登場人物なんだけどさ、まぁなんかボンヤリしてんの。
 たぶんそれって、この作品が未来を描こうとしてないからなんですよ。主人公たちの知人が自殺しているんだけど、ひとりはそいつのことを全然覚えてなくて、ただ学生時代一緒に撮った写真のデータだけは数枚残ってる。要はその画像を探すのに、スマホを指でついーってやって『スクロール』するじゃない?
その行為を過去の堆積に見立てて、これまで生きてきた痕跡と、忘れてしまっている過去みたいのを象徴させてるんです。まぁそうやって「いま生きてる自分の中には、もう忘れてしまった思い出も含めて過去から繋がるものがある」みてぇーな話をしたいのはわかる
 わかるんですけど、でもそれって「そしてそこから未来へは」みたいのとセットなわけじゃん! なんだもう死ぬ老人か? ちゃんと明日の話をしなさいよ、と思うわけですよ。
 
 主人公たちひとりは仕事辞めて「イラストレーターになる」つって、ひとりは自殺した知人のドキュメンタリーを作りかけてて、ひとりは結婚する予定が破局して相手を刺してw、ひとりはパワハラで仕事やめて「俺、文才ある気がするから小説書くわ」って言い出す……みたいなとこで終わるのよ。
 お前らの未来、ボンヤリしてんなぁ! 違うじゃん、その過去の堆積がどう未来に繋がって、それを成していくかを描かないとダメじゃない? 特に最後のお前! ブログとTwitterの中間みたいなSNSに文章投げて、「イイね」くれるのが自分に惚れてる女ひとりだけって状態で、行けると思えた根拠を説明せいよ!
 
 一応ね、作品冒頭に流れる映像。これがねその男が書いた小説を映像化したものだって最後にわかるんだけど、うーん……これがねぇちょっと面白いから、私のdisが若干ブレるんだけどw
 いやっ、でもね、かなりシュールな内容かつ、映像が「ワンカット長回し」で手品みたいな演出してるから、映像として面白かったけど……これ小説にしたらどうなんだ? まじでドチャクソ才能があればすげー面白い小説になるんだろうけど……そんなヤツが「上司 マジ死んでほしい」って書いたり、それにイイねがひとつ貰えて喜ぶかね?
 
 冒頭部分は良かったから、そこを見てて「え、これまさか作品全部ワンカット(風)でいくの!?」っていう変な期待をしてしまったから、余計だめだったのかもしれない。そういう意味では過去から上手く『スクロール』できなかった作品だった、みたいなオチでいいかしらね? 今日は。

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 次回は『エゴイスト』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの3分ぐらいからです。


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